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情シスの心の闇を祓う◯◯療法

2023/12/20に公開

少し長い自己紹介

最初にまず、自分の話をさせてください。

自分は学生時代に心理学を学びました。臨床心理学に興味を持ったからです。
自分自身、鬱々といろんなことを考える性格で、この渾然とした自分の感情を取り出してきれいに分類してそれぞれの名前をつけた箱にしまっておきたい、と考えていた学生時代でした。
病前気質という言葉も知り、自分はきっとこれであろうと考えました。
自分はいつかメンタルを病むかもしれない、という危機感を持ったのもこの頃です。

就職の時期を迎え、自分は開発者(ソフトウェアエンジニア)の道を選びました。
メンタルを病む人が多いと言われる業界に行って、なぜ病むのか知りたいと考えたことと、
普通にパソコンやコーディングが好きだったことが理由です。

開発者としての仕事は、わりといつもハードでした。
今ほど36協定がやかましくない時代柄もあり、SESの会社だったこともあり
その界隈にいた人なら分かるような黒めな勤務歴であったと思います。

毎日終電近くまで残業して、土日もどちらかまたは両方出て、たまに夜20時に帰れると「まだ店が開いている!」とテンションが上がるような日々。
身の回りには心身を壊して休む人、辞める人がちらほらいましたが、自身は社内の人間に恵まれていたし若かったので、心身を壊さずに働いていられました。
なんせ1社目からの転職を決めた理由は「もっと働きたいから」です。

SESの開発者はなぜメンタルを壊しやすいのか

言われ尽くしていることですが、自分が開発者として過ごす中で思ったことは

  • もともとコミュニケーションが得意ではない人も多く、対人関係でストレスを抱えやすい
  • SESでは営業が強く、開発者は不遇になりやすい
  • 激務が前提で、生活が不規則になる。激務が続くと友人や家族とも疎遠になってしまう

でした。
もちろんノットオール開発者ですし、自分が見てきた狭い範囲の世界での、主観の話です。
間違っていてもスルーしていただいて。

そして情シスへ

転職し、いろんなことが起きて情シスになりました。

自分はそれまで開発しかしていない人間です。
一般の人よりPCの使い方には詳しいかもしれませんが、ただそれだけ。
趣味でPCを組み立ててますとか、家にサーバラックがありますとか、個人でグループウェア契約してますとか、そういう人ではありません。
セキュリティ方面に明るいわけでも、法務に強いわけでもありません。
どうすんの。

社内の詳しい人から教わりながら一人前を目指そう、ということで始まった情シス業務。
業務知識もなければ自社知識もないので、一つずつ確かめながらやっていました。公式ドキュメントはお友達だよ。

自分が未熟であるという以外にも課題がありました。
このころの弊社情シスは管理部門や営業部門とうまく連携できておらず、突然の入退社は珍しくありませんでした。ひどいときには「今日入った業務委託の人のパソコンがないんだけど?」と言われたこともあります。
うん、今日から人が入るっていま知ったわ。
(その後めちゃくちゃ頑張って他部署を巻き込みフローを整え、今は快適です!)

さらに一人情シスへ

なんやかんやあって一人になりました。
仕事を覚えてめでたく一人立ちした、わけではありません。
一人になった行きがけの駄賃、情シス業務以外のインフラ・セキュリティ周りも引き取ることになりました。
やれることが増えた以上に、やることが増えている!

この頃は本当に激動でした。
いま思えば面白い話でしかないんですが、当時はつらかったんだと思います。
意味不明の激務に前向きになれず、「なぜ自分が」「でもやるしかない」の間を振り子のように高速移動しながら働いていました。
日中はヘルプデスク対応をしながら調査し、質問が減る遅い時間にキッティングしました。
通勤電車では情シス関連書籍やネット記事を読み漁る。家ではスマホから手が離せず、休みでも夜中でも社内からの質問に答えていました。
「自分のせいで会社の仕事が止まる」という状況がとにかく怖かったのを覚えています。

家族からは「もう仕事辞めたら?」と言われる始末。本当にそうだね。
(これは激務のせいというより、前向きになれない仕事は辞めたら?という意味合いだったようです)

情シスはなぜメンタルを壊しやすいのか

レイヤーや社風や業種にもよるでしょうけども。
開発者がメンタルを壊しやすい理由が全部そのまま当てはまる上に、

  • 社内での地位が低かったり、力が弱かったりする。一方的に無茶振りを受け続けるシチュエーションになりがち
  • セキュリティとか監査とか、金にならない上に嫌われる仕事をやることになりがち
  • 上長が技術職ではないケースもあり、適切に評価されない
  • 一人情シスだと、誰からも理解されず分かり合えない
  • ヘルプデスクは接客業

などなどがあるのかなと。

メンタルを壊さないための処方箋

日頃から選択肢をいっぱい持っておくべきです。
大変になってから選択肢を増やすのは大変です。何か一つに縋るとそれがダメになったときに共倒れします。
DBは冗長化するしサーバはUPSを通します。自分の命綱もバチバチに冗長化しておきましょう。なんぼあってもいいですからね!
以下は自分が支えにしたものです。

怒り&ストレスに乗る

アンガーマネジメントの本は巷にあふれています。出す場所や出し方を間違えれば、怒りはよくない効果をもたらすでしょう。
ストレスも、いかに避けるか・解消するかという視点で語られることが多いと思います。

でも怒りもストレスも、自分をドライブしてくれるものではあるんです。
「こんなことも分からない自分が腹立たしい、絶対できるようになってやる」
「無茶振りされたからって失敗する自分は許せない、絶対無事に着地させてやる」
そう思って一人情シスをやってきました。
これがなかったら多分「あ、もう無理っす、辞めます」になっていたことでしょう。
怒りとストレスが自分をここに立たせてくれました。
(Top of the worldみたいに言うな)

あたりまえですが、怒りもストレスも、続くと疲れちゃうのでほどほどに。
本当にいざって時のエナドリくらいに思っておくといいかもしれません。

怒りやストレスをそのまま自分の燃料に使うのではなく、笑いに転化することもあります。
「今のこの理不尽シチュエーション、めちゃくちゃ面白いな!友達に話したらウケるのでは?」
「退職するとき、増田に怪文書として投下しちゃう?」
などとくだらないことを考えると、くだらなさに怒りやストレスが成仏します。
自分視点で見るから怒ったり苦しんだりするのであって、神の視点で見れば戯画です。

他の人を思いやって行動する

実はこれが一番効いたと思います。
大変な状況になると「こんなに大変なのは自分だけ」「一人情シスだし誰も分かってくれない」「助けてくれない」と視野狭窄になりがちです。(自分はなりました)

でも、自分以外にも大変な人は 絶対に います。
いないように見えるとしたら、気づいていないだけです。

困っている人に気づき、配慮し、できる範囲で助けること。
利他的であることが自分のストレスを軽減し、結果的に自分を救います。
これは倫理でも道徳でも宗教でもありません。
他でもない自分のために、超絶自己中に、利他的になってください。
(利他的であることとレジリエンスに関する調査は、ググるとたくさん出てきます。興味があればどうぞ)

利他的になるのは自分のため。
だから見返りはなくていいし、期待もしなくていいです。期待すると思い通りにいかないときにダメージをもらいます。
なんせ自分のための利他ですから、他者を利した途端に忘れてください。

役職や組織内の地位が何であれ、社歴が長かろうと短ろうと、情シスは力を持っています。
デバイスやSaaSに詳しく、特権管理者的な権限を持っているという、まぎれもない力です。
誰かに親切にしようと考えた時に、ものすごく都合のいい力だと思いませんか?
PCを使いこなすネタの10や20はすぐ出てきますよね。
そしてその知恵で助かる人もいっぱいいるはずなのです。

闇落ちしているときは「自分はこんなに大変なのに、それでも人を助けなきゃいけないのか?」と思うかもしれません。
ご自身の生存に無理のない範囲で、どうぞ助けてあげてほしいなと思います。
情シスには前出の力があります。そして力は使ってこそ価値があります。
ぜひ正しく使いましょう。

そして、自分を思いやって行動する

真面目に頑張って高ストレスな環境に耐えていると、セルフネグレクトっぽくなっていきます。
自分の気持ちや要望は後まわし。
やるべきことのため、誰かのため、邁進してしまったり。
休みが取れなかったり、取ってもちゃんと休めなかったりします。

ちょっと立ち止まって、自分にも親切にしてあげてください。
利他的であるために培った観察眼を、自分に対しても使うときがきました。
「自分は後回しでいいや」とついつい思ってしまうなら、ここにいる「(自分の名前)さん」を労う気持ちで接してみてください。

「いもさん(※)は昼ごはんなんて何でもいいって言ってるけど、今日はあのおいしいお店に連れて行ってあげよう」
そういう感じで自分をいたわってあげてください。その人、いつも頑張っていますので。
※当方、「いもがすき」という名前です。

最後に

他にも多くのものに助けられました。書ききれないのでここらでやめておきます。

最近は「メンタル強いね」と言われることが増えてきました。
メンタルが強いのか、もはや自分では分かりません。
それなりにダメージを受けつつウオオとなりつつ、最後は「まいっかー」になるから生きているのかもしれません。

タイトルの「◯◯療法」にはお好きなものを入れてください。
情シスの皆様が今日も明日も来年も、元気に幸せに過ごせますように!

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