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統計検定2級 2016年11月問8 解説

2023/12/30に公開

はじめに

この記事は統計検定2級の取得を目指す方向けに構成されています。

問題の趣旨

3変数の確率変数の期待値と分散と相関係数に関する問題です。2ひねりから3ひねりくらいしていて、かつ2016年以前にこのような問題は出ていないので難しく感じます。
ですが、やっていることは基本の組み合わせです。

前提

標準化されたXi (i=1,2,3)とそれらの平均Yです。ここから

E(Xi) = 0, V(Xi) = 1

が成り立ちます。
問は、X1, Yの相関係数を求めます。2変数の相関係数ρ

ρ=\frac{cov(X1,Y)}{\sqrt{V(X1)V(Y)}}

ここまではたいていの人はたどり着きます。

解説

V(Y)の値を求めます。

V(Y)=V(\frac{X1+X2+X3}{3})

分散の性質

V(kx) = k^2V(x), k=定数

より、

V(Y)=\frac{1}{9}V(X1+X2+X3)
V(Y)=\frac{1}{9}(V(X1)+V(X2)+V(X3)+2cov(X1,X2)+2cov(X2,X3)+2cov(X3,X1))

 
標準化されていて、かつX1,X2,X3は無相関なので、
 

2cov(X1,X2)+2cov(X2,X3)+2cov(X3,X1) = 0

 
かつ標準化されているのですべての確率変数は1なので
 

V(Y)=\frac{1}{9}*(1+1+1) = \frac{1}{3}

 
次にcov(X1,Y)を考えます。公式より、
 

cov(X1,Y)=E[(X1-μ_{1})(Y-μ_{Y})]

 
標準化されているので、平均μはゼロですね。したがって
 

cov(X1,Y)=E(X1Y)
E(X1Y)=E(X1)*E(Y)
E(Y)=E(\frac{X1+X2+X3}{3}) = \frac{1}{3}(E(X1)+E(X2)+E(X3))

 
以上からE(X1Y)は整理すると
 

\frac{1}{3}(E(X1^2)+E(X1X2)+E(X1X3))

 
ここで、
 

E(X1)*E(X1) \neq (E(X1))^2

ですので注意です。

E(X1)*E(X1) = E(X1^2)

こちらが正解です。

 
ここまできてE(X1^2)ってどうやって計算するんだ?となった方が多いかと思われます。ここで使うのが、
 

V(x) = E(x^2) - (E(x))^2

 
この公式です。合格するだけなら、E(x^2)がきたらこの公式を用紙に書いておけばいいと思います。
 

前提より、E(X1)=0ですので、(E(X1))^2もゼロです。したがって

V(X1) = E(X1^2)

 
E(X1X2)E(X1X3)は前提からゼロですね。これらををまとめると右辺はV(X1)しか残らないので、cov(X1,Y)は、
 

cov(X1,Y)=\frac{1}{3}

 
これで相関係数を計算する各パーツがそろいました。それぞれ数値を当てはめると、

ρ=\frac{cov(X1,Y)}{\sqrt{V(X1)V(Y)}}=\frac{\frac{1}{3}}{\sqrt{\frac{1}{3}}}=\sqrt{\frac{1}{3}}=0.577...

 
こちらが答えとなります。

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