この記事は統計検定2級 2018年6月の問13に関する解説記事です。統計検定2級合格を目指す方向けの記事となります。
前提
この問いは第一の過誤、第二の過誤、検定力を単なる文章だけで理解していないかどうかの理解力を問う問題です。これに類する問題は過去問でも比較的多くないので、この問題できっちり理解することが合格への一歩となりそうです。
第一の過誤:
本当は帰無仮説H_0を棄却できない(帰無仮説H_0が正しい)のに、誤って帰無仮説H_0を棄却する(対立仮説H_1が正しい)確率。通称αで有意水準とも呼びます。
第二の過誤:
本当は帰無仮説H_0を棄却できる(対立仮説H_1が正しい)のに、誤って帰無仮説H_0を棄却出来ない(帰無仮説H_0が正しい)とする確率。通称βと表記します。
検定力:
帰無仮説H_0を棄却できる(対立仮説H_1が正しい)要件を正しく棄却する確率。通称1-βで計算します。
問13(1)
棄却域をX≦3とします。この設定によってH_0が正しい時の分布Pの確率、H_1が正しい時の分布Pの確率を求めます。
H_0の分布を考えると、棄却できる領域の確率を計算するので、
です。
棄却域をX≦3と決めているので、H_1はX>3の領域の確率を計算します。
です。
ところで、第一の過誤はH_0が正しい条件において、誤ってH_0を棄却してしまう確率です。いいかえると、H_0の条件において、棄却域をX≦3で棄却してしまう条件です。
この「H_0が正しい条件において、誤ってH_0を棄却してしまう確率」という風に第一の過誤の意味と求められている問題を正しく理解できるか?が重要です。
したがって、
また、第二の過誤は、H_1が正しい条件において、誤ってH_0を受け入れる確率です。いいかえると、H_1の条件において、棄却域をX≦3で棄却しない条件です。これはX>3の条件ですので、
です。
したがって、検出力は
です。
この結果をもとに、正しい選択肢を選ぶと、④となります。
問13(2)
検定条件を3つ考えたときにそれぞれがどういう関係になっているかを理解する問題です。
検定I
検定II
検定Iが棄却域をX≦3としていたのに対し、検定IIは棄却域をX≦2とした条件です。検定Iと同様に考えると、与えられている同じ確率分布表から計算して、
検定III
検定Iおよび検定IIが棄却域をX≦3, X≦2としていたのに対し、検定IIIは棄却域をX=6とした条件です。この時棄却しない域はX\neq6です。検定I, IIと同様に考えると、与えられている同じ確率分布表から計算して、
検定I,II,IIIの比較
|
検定I |
検定II |
検定III |
α |
0.3 |
0.2 |
0.3 |
β |
0.1 |
0.3 |
1 |
1-β |
0.9 |
0.7 |
0 |
この表をみて、正しい選択肢を選ぶと②となります。
まとめ
「帰無仮説H_0を棄却できない(帰無仮説H_0が正しい)のに、誤って帰無仮説H_0を棄却する(対立仮説H_1が正しい)確率」
この文章をいいかえると、
帰無仮説H_0を棄却できない(帰無仮説H_0が正しい)のに → H_0の確率分布表において、
誤って帰無仮説H_0を棄却する(対立仮説H_1が正しい)確率 → 棄却域の確率が発生する
「帰無仮説H_0を棄却できる(対立仮説H_1が正しい)のに、誤って帰無仮説H_0を棄却出来ない(帰無仮説H_0が正しい)とする確率」
この文章をいいかえると、
帰無仮説H_0を棄却できる(対立仮説H_1が正しい)のに → H_1の確率分布表において、
誤って帰無仮説H_0を棄却出来ない(帰無仮説H_0が正しい)とする確率 → 棄却域ではない確率が発生する
第一の過誤、第二の過誤ともに、文章全体の構成としては前半は本来どちらの仮説が正しいかを示していて、後半は誤って棄却する/棄却しない確率を示しています。
Discussion