エンジニアが注目すべきDeepSeekの技術「DeepSeek-R1」の魅力
はじめに
DeepSeekが開発した「DeepSeek-R1」は、従来のAI開発とは一線を画すアプローチで、AIの推論能力を飛躍的に向上させたモデルです。
教師あり学習(SFT)に依存せず、強化学習(RL)を軸にAIを自律的に進化させるという、革新的な開発手法が注目を集めています。
本記事では、DeepSeek-R1の技術的な特徴と、エンジニアが注目すべきポイントを詳細に解説します。
強化学習(RL)による自己進化
DeepSeek-R1の最大の特徴は、大規模な強化学習(RL)を基盤としている点です。
従来のAIモデル開発では、大量の教師データを用いたSFTが主流でしたが、DeepSeek-R1は、ベースモデルに対して直接RLを適用することで、AIが自ら試行錯誤を繰り返しながら推論能力を獲得するという、より自律的な学習プロセスを実現しています。
特に、「DeepSeek-R1-Zero」は、SFTを一切行わずに、RLのみで高い推論能力を獲得した点が画期的です。これは、AIが人間によるラベル付けなしに、自律的に高度な能力を獲得できる可能性を示唆しています。
このアプローチは、教師データの準備コストを大幅に削減できるだけでなく、AIの自己進化を促し、より汎用的なAI開発への道を開く可能性を秘めています。
DeepSeek-R1-ZeroのRLトレーニングには、Group Relative Policy Optimization (GRPO) というアルゴリズムが採用されており、criticモデルなしで効率的な学習を可能にしています。
GRPOとは
GRPOは、DeepSeek-R1の開発において、強化学習(RL)の効率を向上させるために採用されたアルゴリズムです。従来のRLアルゴリズムでは、criticモデルという、policyモデルと同程度のサイズを持つ別のモデルが必要でしたが、GRPOはこれを不要とし、より効率的な学習を実現します。
criticモデルは学習に必要な計算資源を大幅に増加させる要因となっていました。
GRPOは、criticモデルを必要としないため、学習に必要な計算コストを大幅に削減できます。これにより、より大規模なモデルや、より多くの計算リソースを必要とする学習タスクでも、RLを適用しやすくなります。
DeepSeek-R1-Zeroは、自律的に思考時間(トークン数)を増やし、より複雑な問題解決に取り組む能力を獲得しました。さらに、自己検証や反省といった高度な思考プロセスも、自律的に獲得したことが示されています。
Chain-of-Thought(CoT)の自律的獲得
DeepSeek-R1-Zeroは、RLを通じてChain-of-Thought (CoT) を自律的に獲得し、複雑な推論タスクを解決する能力を獲得しました。
これは、AIが単に問題を解くだけでなく、自らの思考プロセスをメタ認知する能力を獲得しつつあることを意味します。
DeepSeek-R1-Zeroの学習過程では、モデルが自ら「aha moment」を発見するという興味深い現象も観測されています。
aha momentとは
aha momentとは、DeepSeek-R1-Zeroの強化学習(RL)のトレーニング中に観察された、特に興味深い現象です。
この瞬間、モデルは自らの問題解決のアプローチを再評価し、より長い思考時間を問題に費やすことを学習します。
これは、外部からの指示ではなく、モデル自身の自律的な進化によって生じたものです。
DeepSeek-R1-Zeroは、与えられた数学の問題を解くために、最初は特定の手順に従っていましたが、途中で「ちょっと待って、ここでアハ体験があるかもしれない」というような人間らしいトーンで、自分のアプローチを再評価しようとしています。
蒸留による小型モデルの高性能化
DeepSeek-R1の開発では、大規模モデルで得られた推論能力を、より小型のモデルに効率的に転送する「蒸留」という技術も活用されています。
大規模モデルは高い性能を持つ一方で、計算コストやメモリ消費量が大きいという課題があります。
しかし、DeepSeek-R1で得られた推論データを用いて、QwenやLlamaといったオープンソースのモデルをファインチューニングすることで、より小型のモデルでも高い推論能力を実現しています。
この技術により、計算資源が限られた環境でも、高性能なAIモデルを活用できるようになり、より多くの開発者が高度なAI技術を利用できるようになる可能性があります。
特に、蒸留された14Bモデルが、最先端のオープンソースモデルであるQwQ-32B-Previewを大幅に上回る性能を達成した点は、この技術の有効性を示す強力な証拠です。
今後の課題と展望
DeepSeek-R1は非常に有望な技術ですが、今後の課題も残されています。
例えば、言語の問題です。
現在は英語と中国語に最適化されているため、他の言語への対応が必要とされています。
また、DeepSeekはソフトウェアエンジニアリングタスクでの性能はまだ改善の余地があります。
一番実務と関係がありそうなのはプロンプトです。
DeepSeek-R1はプロンプトに非常に敏感であり、プロンプトの種類によって性能が大きく変動することがあります。
特に、Few-shotプロンプト(少数の例を用いたプロンプト)を使用すると、性能が低下する傾向があります
プロンプトの表現によって性能が変動するため、プロンプトエンジニアリングの改善が必要とされています。
まとめ
DeepSeek-R1は、強化学習を軸とした新しいAI開発手法を示し、大規模モデルの知見を小型モデルに転送する効率的な蒸留技術を実証した点で非常に興味深いプロジェクトです。
今後の課題を克服し、さらなる進化を遂げることでAI技術の発展に大きく貢献することが期待されます。
参考
この記事はNotebookLMにDeepSeekの論文を読み込ませて作成しています
NotebookLMと対話しながら要点を抽出して記事を書きました
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