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山海異聞録

に公開

第一話:カフの遺志

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コマ1:
広大で荒れ果てた北の大地、空は黄砂に覆われている。遠くには連なる険しい山々がそびえ、頂には雪が積もっている。巨大な影がまるで小山のように倒れ、干からびた巨体は骨とひび割れた皮膚をさらけ出している。夕陽が血のように赤く、その光景に壮絶な悲しみを添えている。
テキスト:
北方の荒野、太古の昔から寂寥が支配する。この地で太陽を追い続け、力尽きて倒れた巨人がいた。その名は……カフ(夸父)。
モノローグ(ナレーション、荒々しくも悲壮な声):
我が願いは未だ果たされず、太陽と月は天にあり……後の世の者よ、我が代わりに、あの日の昇る壮麗を見届けてくれぬか?

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コマ1:
近景。ぼろぼろの服をまとい、意志の強そうな顔立ちの少年(仮名:アグ)が、カフの巨大な足の骨のそばに跪いている。彼は粗い石を固く握りしめ、その石には簡単な記号のようなものが刻まれている。
テキスト:
数百年後。孤児のアグは、この地で必死に生き延びていた。彼は幼い頃から、部族に語り継がれるカフの太陽追跡の伝説を聞いて育ち、その力強き巨人に深い敬意を抱いていた。
モノローグ(アグ):
カフの先祖様……あなたの無念、僕にはわかる。いつか必ず、太陽の昇る場所を見に行きます!

コマ2:
アグが荒れ地を苦労しながら掘っている。痩せた体が必死さを物語っている。彼は乾いた草の根と硬い塊茎を掘り出す。
テキスト:
過酷な環境が、彼に不屈の性格を与えた。生き延びるため、彼は全力を尽くすしかなかった。

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コマ1:
夜、揺れる焚き火のそばにアグが一人で座り、見つけた食べ物をかじっている。火の光が彼の幼いが決意に満ちた顔を照らす。彼は空の星を見上げ、その目には憧れが宿る。
テキスト:
長い夜、星々だけが友だった。『山海経』に描かれる奇怪な世界は、アグにとって最も美しい夢だった。
モノローグ(アグ):
書には、東に扶桑神樹があり、金烏が棲むとある。南には不死鳥が炎の中で再生すると……外の世界は、一体どんな所なんだろう?

コマ2:
アグが懐から大切そうに取り出したのは、ぼろぼろの獣皮の本。黄ばんだページには奇妙な鳥獣や植物の絵、そして古代文字が記されている。
テキスト:
この破れた『山海経』は、アグの唯一の心の支えであり、外の世界を知るための窓だった。

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コマ1:
突風が吹き、地面の砂を巻き上げる。遠くから奇妙な咆哮が聞こえてくる。その声は鋭く、野性に満ちている。アグは驚いて顔を上げ、警戒の眼差しを見せる。
テキスト:
だが、荒野は静寂ではなかった。闇に潜む危機は、いつでも牙を剥くのだ。
効果音: フウウウ—— アオオオ——

コマ2:
地平線に巨大な影が現れる。狼にも豹にも似た姿、巨大な翼を持ち、目は凶悪な光を放っている。
テキスト:
異獣「ジョウ(狰)」!『山海経』に記された凶暴な獣。飛砂走石を従え、生き物を喰らうという。

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コマ1:
狰がアグに飛びかかり、鋭い牙が並ぶ大きな口を開けている。アグは顔色を変え、咄嗟に石を振り上げて抵抗しようとする。
テキスト:
か弱き少年は、強大な異獣の前ではあまりに小さい。
効果音: ガオオオ——!

コマ2:
狰がアグに飛びかかるその瞬間、空から青い光が剣のように降り注ぎ、狰を直撃。狰は凄まじい悲鳴を上げ、巨体を地面に叩きつけられる。
テキスト:
間一髪の時、神秘の力が現れる!

コマ3:
青い光が消えると、青い長袍をまとい、冷ややかな表情の若い女性が現れる。彼女の手には古風な玉の笛が握られており、笛には奇妙な模様が彫られている。
テキスト:
彼女は何者なのか?なぜこの荒れた北方に現れたのか?アグの運命は、これからどう変わっていくのか――

(第一話 完)

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