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エンジニアが「QC」について語る会

2024/08/05に公開

はじめに

はじめまして、株式会社バニッシュ・スタンダードでエンジニアをやっているkzzzmです。
最近職場で「QC」についての話題が上がったので、今回はエンジニアの技術系記事ではなくQCについて記事を書きたいと思います。

私は前職でトヨタ系の企業に勤めていました。
ITの世界ではあまり聞き馴染みのない「QC」。
しかしトヨタ系の企業では毎日耳にする言葉です。

QCに対しても賛否両論の考え方はあると思いますが、理解して適材適所、有効に活用出来れば業務はさらに効率化されるかと思います。

車とソフトウェアでは違う点も多々ありますが、モノづくりという観点では共通点もあるかもしれません。

なので、QCの本場で学び、(半ば強引に)QC検定2級を取得した私がQCについて少しだけ触れていきたいと思います。

当たり前のことや既に分かっている内容もあるかと思いますが、改めて普段モノづくりをしている方々の品質に対しての再認識になれば幸いです。

またこの記事をしっかり理解出来ればQC検定3級は取得出来るかもしれません!

そもそもQC?

そもそもQCって何やねん?という方に向けての章です。
すでに理解している方はスキップしてくださいー!

QCとは

QCとは品質管理(Quality Control)のことです。
製品やサービスが規定された品質基準を達成し、顧客の期待に応えるための一連の活動を指します。
QCは、製品やサービスの開発から製造、提供までの各段階で実施され、品質を保証するための重要な役割を果たします。
製品の生産やサービス構築などの製造過程で品質に問題がないか検証・保証することを指します。

品質とは

品質とは、製品やサービスが顧客の要求や期待にどの程度応えているかを示す概念です。品質は主観的な要素が含まれるため、顧客の視点からの評価が重要です。品質の評価には以下の要素が含まれます。

  • 性能: 製品やサービスが期待通りに機能するかどうか。
  • 信頼性: 製品やサービスが一定期間内に故障せずに使用できるかどうか。
  • 耐久性: 製品やサービスが長期間使用できるかどうか。
  • 適合性: 製品やサービスが規定された仕様や基準に適合しているかどうか。
  • 審美性: 製品やサービスの外観やデザインが顧客の好みに合っているかどうか。
  • 顧客満足度: 顧客が製品やサービスに対して満足しているかどうか。

品質管理の重要性

  • 顧客満足の向上: 高品質な製品やサービスは顧客満足度を高め、リピーターや新規顧客の獲得につながります。
  • コスト削減: 不良品や欠陥品の発生を防ぐことで、再製造や返品対応にかかるコストを削減できます。
  • ブランドイメージの向上: 高品質な製品やサービスを提供することで、企業のブランドイメージが向上し、競争力が強化されます。
  • 法規制の遵守: 多くの業界では品質に関する法規制が存在し、それを遵守することが求められます。品質管理を徹底することで、法規制の遵守を確実にできます。
  • 市場シェアの拡大: 高品質な製品やサービスは市場での評判を高め、結果として市場シェアの拡大につながります。

QCの基本概念

品質管理は、製品やサービスが規定された品質基準を達成し、顧客の期待に応えるためのプロセスです。これには、以下の3つの主要な要素が含まれます。

  • 品質計画: 品質基準と品質目標を設定し、それを達成するためのプロセスを計画する段階。品質計画には、以下の内容が含まれます。

    • 品質目標の設定
    • 必要なリソースの特定
    • プロセスの設計
    • 品質管理のためのツールと技法の選定
  • 品質保証: 設定された品質基準が維持されていることを確認するための一連の活動。品質保証の主な目的は、プロセスが適切に管理され、期待通りに機能することを確保することです。具体的には以下の活動が含まれます。

    • プロセス監査
    • トレーニングと教育
    • プロセスの標準化
  • 品質管理: 実際の製品やサービスが品質基準を満たしているかどうかを評価し、必要に応じて改善する活動。品質管理には以下のステップが含まれます。

    • データの収集
    • データの分析
    • 改善策の実施

スクラム開発とQC

QCとスクラム開発はPDCAサイクルなど共通の考え方がある一方、違った考え方もあります。

スクラム開発とQCの共通点

スクラム開発とQCには、以下の共通点があると考えます。

  • 継続的な改善の追求: スクラムではスプリントごとに改善を行い、QCではPDCAサイクルを回して継続的に改善を行います。
    チームのコラボレーションとコミュニケーション: スクラムではデイリースクラムミーティングを通じて進捗状況を共有し、QCでも部門間の協力やコミュニケーションが重要です。
  • データに基づく意思決定: スクラムではバーンダウンチャートなどを使用し、QCではチェックシートやヒストグラムなどのデータを用いて意思決定を行います。
  • 顧客満足の重視: スクラムでは顧客からのフィードバックを重視し、QCでも顧客満足度を最優先とします。
  • 明確な目標設定と計画: スクラムではスプリントプランニングで目標を設定し、QCでは品質目標を設定します。
  • 透明性と可視化: スクラムではスクラムボードなどを使用し、QCではヒストグラムやパレート図を使用して品質の状態を明確にします。

スクラム開発とQCとの違い

スクラム開発とQCには、以下の違いがあると考えます。

  • フォーカスの違い: スクラム開発はソフトウェア開発のプロジェクト管理に特化し、QCは製品やサービスの品質そのものに焦点を当てます。
  • アプローチの違い: スクラム開発は柔軟で適応性のあるアプローチを採用し、QCは計画的で体系的なアプローチを採用します。
  • ツールと技法の違い: スクラム開発ではプロダクトバックログやバーンダウンチャートなどのツールを使用し、QCではチェックシートやヒストグラムなどのツールを使用します。
  • 時間軸の違い: スクラム開発は短期間の反復的な開発サイクルを使用し、QCは製品やサービスのライフサイクル全体にわたって品質管理を行います。
  • 組織文化と役割の違い: スクラム開発では自律的なクロスファンクショナルチームが中心となり、QCでは品質管理部門や品質保証部門が中心となります。
  • 目的と目標の違い: スクラム開発は高品質なソフトウェアを迅速に提供することが目的であり、QCは製品やサービスの品質を保証することが目的です。

QCの実践方法

品質管理を実践するためには、以下のステップを踏むことが重要です。

  1. 目標設定
    まず、品質基準と目標を明確に設定します。これには、顧客の要求や業界標準を考慮することが含まれます。目標設定の際のポイントは以下の通りです。

    • 具体的で測定可能な目標を設定する
    • 現状のパフォーマンスを評価し、改善点を特定する
    • 目標達成のためのタイムラインを設定する
  2. データ収集
    次に、製品やサービスの品質を評価するためのデータを収集します。これには、チェックシートや検査報告書などが使用されます。データ収集のポイントは以下の通りです。

    • データ収集の目的を明確にする
    • 収集方法とツールを選定する
    • データの一貫性と信頼性を確保する
  3. 分析
    収集したデータを分析し、問題点や改善点を特定します。ヒストグラムやパレート図などの手法を活用します。データ分析の手順は以下の通りです。

    • データを整理し、視覚化する
    • 問題のパターンや傾向を特定する
    • 根本原因を分析し、対策を検討する
  4. 改善策の実施
    特定された問題に対して改善策を講じます。これには、プロセスの見直しやトレーニングの実施が含まれます。改善策の実施手順は以下の通りです。

    • 改善策を計画し、具体的なアクションプランを作成する
    • 必要なリソースを確保し、担当者を割り当てる
    • 改善策を実施し、進捗をモニタリングする
  5. 効果の確認
    最後に、改善策の効果を確認し、品質基準が達成されていることを確認します。必要に応じて、さらなる改善を行います。効果確認の手順は以下の通りです。

    • 改善後のデータを収集し、分析する
    • 目標達成状況を評価し、報告する
    • 持続的な改善活動を継続する

QCの主要な手法

品質管理にはさまざまな手法がありますが、特に重要な7つの手法 「QC7つ道具」 を紹介します。
これらの道具は問題解決や品質改善に広く利用されており、データ収集、分析、視覚化に役立ちます。

  1. パレート図
    パレート図は、問題の多くが少数の要因によって引き起こされることを示す図表です。これにより、主要な問題点を特定し、効果的な改善策を講じることができます。パレート図の作成手順は以下の通りです。

    • データを収集する
    • データを重要度や頻度順に並べ替える
    • 累積パーセンテージを計算する
    • 棒グラフと累積曲線を作成する
  2. 特性要因図
    特性要因図は、問題の根本原因を特定するためのツールです。魚の骨のような形状から「フィッシュボーンダイアグラム」とも呼ばれます。特性要因図の作成手順は以下の通りです。

    • 中心に問題を記載する
    • 主な要因カテゴリを決定し、魚の骨のように配置する(例:人、機械、方法、材料)
    • 各カテゴリに対する具体的な原因をブレインストーミングし、記載する
    • 因果関係を分析し、根本原因を特定する
  3. グラフ
    グラフは、データを視覚的に表現したもので、数値の比較や変化を把握しやすくするために使用します。よく使われるグラフと代表的な目的は以下の通りです。

    • 折れ線グラフ(変動を見る)
    • 棒グラフ(数量などを比較する)
    • 円グラフ(比率を見る)
    • 帯グラフ(比率を比較する)
    • レーダーチャート(バランスを見る)
  4. 管理図
    管理図は、プロセスが安定しているかどうかを監視するためのツールです。これにより、異常な変動やパターンを早期に発見することができます。管理図の作成手順は以下の通りです。

    • データを収集し、時系列にプロットする
    • 上限管理線(UCL)と下限管理線(LCL)を設定する
    • データポイントが管理線内に収まっているかを確認する
  5. チェックシート
    チェックシートは、データを収集し、特定のパターンや問題を特定するためのツールです。例えば、製品の欠陥数や種類を記録するのに使用されます。チェックシートの利用方法は以下の通りです。

    • 目的を明確にする(例:製品の欠陥の種類を把握する)
    • チェック項目を設定する
    • データを収集し、記録する
    • データを分析し、問題点を特定する
  6. ヒストグラム
    ヒストグラムは、データの分布を視覚的に表現するための棒グラフです。これにより、データのばらつきや傾向を把握することができます。ヒストグラムの作成手順は以下の通りです。

    • データを収集する
    • データを範囲に分ける(例:値の範囲ごとにグループ化する)
    • 各範囲のデータの頻度を計算する
    • 棒グラフを作成する
  7. 散布図
    散布図は、2つの変数の関係を視覚的に表現するためのツールです。これにより、変数間の相関関係を確認することができます。散布図の作成手順は以下の通りです。

    • 2つの変数のデータを収集する
    • X軸とY軸にそれぞれの変数をプロットする
    • データポイントを図にプロットし、パターンを確認する

これらのQC7つ道具を活用することで、品質管理の精度を向上させ、問題解決や改善活動を効果的に進めることができます。

新QC7つ道具

実は新QC7つ道具ってのもあるんですけど、今回は割愛します。
気になる方はこちら

エンジニアが業務でQC的な考え方を活かす方法

弊社で実際に取り組んでいることと今後導入したいことを挙げます。

コーディング規約

弊社では開発手法の一つにDDDを採用しています。
DDDの概念を理解していても、実際にコーディングをしていく中で悩むポイントやプロダクト特有の考え方もあるかもしれません。
そのあたりをコーディング規約としてまとめておくことで、誰が書いても同じQualityでコーディングが出来るようになるかと考えます。
※規約には、命名規則、コードスタイル、エラーハンドリングの方法などが含まれます。

バグトラッキングと品質指標のモニタリング

バグトラッキングツールを使用して、バグの発見から修正までのプロセスを管理します。
品質指標(例:バグの発生件数、修正時間、テストカバレッジなど)をモニタリングし、品質改善のためのデータを収集します。定量的なデータに基づいて改善策を講じることで、品質管理がより効果的になります。

継続的な教育とトレーニング

チームメンバーに対する品質管理のトレーニングや教育を定期的に実施します。
最新のQC手法やベストプラクティスを学ぶことで、チーム全体の品質意識が向上し、品質向上のための新しいアイデアが生まれます。
内部勉強会や外部セミナーへの参加も有効かもしれません。

ユーザーフィードバックの収集と分析

リリース後のユーザーフィードバックを積極的に収集し、品質改善に役立てます。
ユーザーからのフィードバックは、プロダクトの使用状況や問題点を直接知る貴重な情報源です。
これをもとに改善を繰り返すことで、ユーザー満足度の向上が図れます。

ベンチマークとベストプラクティスの活用

業界のベンチマークやベストプラクティスを参考にし、自社の開発プロセスを改善します。
他社の成功事例や標準的な手法を取り入れることで、品質管理の効果を高めることができます。
これには、業界レポートの分析やカンファレンスへの参加も含まれます。

などなどエンジニアが業務においてQC的な考え方を活用することで、全体の品質管理のレベルを一層高めることができるかと思います。

最後に

いかがだったでしょうか?
私も久しぶりQCについて触れたので忘れていたことも多々ありました。

工業系とITで分野は違いますが、1つでもタメになる内容があれば幸いです。

気になった方はぜひQC検定を受けてみてください!!
(個人的には結構ムズかったですww)

最後にある先輩エンジニアの言葉がとても興味深かったのでそれを記載して締めとさせていただきます。

弊社にご興味を持ってくださった方のご連絡を心よりお待ちしております。

要はバランスですね。

https://v-standard.notion.site/a652acc985f34244bf3e7f1142a54799

参考文献

https://www.keyence.co.jp/ss/general/manufacture-tips/7qc-tools.jsp

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