Claude Codeを活用してリファインメント時間を83%削減した話
はじめに
「リファインメントに時間がかかりすぎる」
「実装後に大幅な手戻りが発生する」
こんな悩みを抱えていませんか?
私が所属するSREチームでは、開発スピード向上のためリファインメントを省略する方向で進めていました。しかし、手戻りのリスクをどう最小化するかが新たな課題となっていました。
そこで私は、Claude Codeを使って「議論のたたき台」を事前に作成するアプローチを試みました。結果、リファインメント時間を83%削減し、手戻りをゼロにすることができました。
本記事では、SREチームでの運用改善とプロダクト開発の両方で実践した具体的な手法をご紹介します。
背景:リファインメント省略に伴う懸念
私が所属するチームでは、効率化のためにリファインメントを省略する取り組みを進めていました。しかし、以下のような懸念がありました:
- 手戻りリスク:要件は明確でも、実装の詳細で認識がずれる可能性
- PR後の修正コスト:実装後に「使いづらい」と判明すると大幅な手戻り
- デザイナーへの説明コスト:複雑な仕様を抽象的に説明しても伝わりにくい
特に、実装を進める中で以下のような状況を経験していました:
1. 実装完了 → PR作成
2. レビューで初めて動作確認
3. 「この使い勝手だと運用が大変では?」
4. 「エラー時の挙動、考慮が足りない」
5. 「そもそもAPIの設計から見直しが必要」
6. 結果:大幅な手戻り
解決策:Claude Codeによる「たたき台」の高速作成
アプローチの概要
私が採用したアプローチは以下の通りです:
- 事前準備(10分):Claude Codeを使って複数の設計案を作成
- チーム議論(5分):作成した具体的な成果物を基に比較検討
- 即座に方向性決定:その場で実装方針を確定
このシンプルなプロセスで、従来30分以上かかっていた議論を5分に短縮でき、かつ手戻りリスクも最小化できました。
技術的な実装
1. 既存コードベースの活用
# プロジェクトルートでClaude Codeを起動
$ cd /path/to/your-project
$ claude
既存のコードベースをClaude Codeに読み込ませることで、現在の設計パターンやコーディング規約を踏まえた提案が可能になります。
2. 複数パターンの生成
Claude Codeへの指示例:
既存のAPIパターンを参考に、データ一括処理機能の実装案を3パターン提示してください。
それぞれ以下の観点で比較できるようにしてください:
- パフォーマンス特性
- エラーハンドリング
- 実装の複雑さ
- 運用時の考慮事項
事例1:SRE業務での運用ツールUI自動化
背景
私はSREチームのメンバーとして、定期的に発生する運用作業をコマンドラインから実行していました。この作業を管理画面から安全に実行できるようにする必要がありました。
チームではリファインメントを省略する方針でしたが、UIの使い勝手で後から問題が発覚するリスクを避けたいと考えました。
実施内容
-
既存の運用手順をClaudeに入力
- 私が普段実行しているコマンド操作
- 必要な権限チェック
- エラー時の対応手順
-
UIパターンの生成
- パターンA:一覧選択型(チェックボックス方式)
- パターンB:個別確認型(モーダル方式)
-
チームでの議論(5分)
私:「2パターン作ってみました。実際に操作してみてください」 チームメンバー:「モーダル方式の方が誤操作のリスクが少なそう」 チームメンバー:「確かに。一括処理より個別確認の方が安全」 → その場で方針決定
結果
- 議論時間:30分 → 5分(83%削減)
- 参加者の総工数:90分 → 25分(72%削減)
- 実装後の手戻り:ゼロ
事前にモックを作成したことで、議論が具体的かつ建設的になり、手戻りリスクを完全に回避できました。
事例2:プロダクト開発での複雑な管理機能
背景
今度はプロダクト開発側で、新しい管理機能の開発を担当することになりました。複雑なビジネスロジックをデザイナーに伝える必要があり、階層構造を持つデータ、既存システムとの連携、一括登録機能など、多くの要件が絡み合っていました。
デザイナーに丸投げすることも可能でしたが、以下の理由から事前にモックを用意することにしました:
- 抽象的な説明では伝わりにくく、都度質問対応が発生する
- より良いものを作るには、事前の認識合わせが重要
- デザイナーの負荷を軽減したい
実施内容
-
ドメイン知識の構造化
-- 私が運用で使用しているSQLをClaude Codeに読み込ませる -- テーブル構造やリレーションを理解させる
-
段階的なモック作成
- 基本版:シンプルな CRUD 操作
- 拡張版A:階層表示に対応
- 拡張版B:一括登録機能を含む
-
デザイナーとの協業
私:「3パターン作ってみました。実際に触ってみてください」 デザイナー:「なるほど、こういう機能なんですね」 私:「一括登録は初期導入時だけなので、使用頻度は低いです」 デザイナー:「じゃあ誤操作防止を重視した方がいいですね」
結果
- デザイナーへの説明時間を大幅短縮
- 複雑な仕様も動くモックで即座に理解してもらえた
- 私のドメイン知識を効率的に共有できた
- 都度の質問対応が不要になった
他の領域への応用可能性
今回はUI開発の事例を紹介しましたが、これは成果物が視覚的に分かりやすいためです。同じアプローチは、API設計やデータベース設計、アーキテクチャ検討など、様々な場面で応用可能だと考えています。
重要なのは、チームで議論する前に、誰かが課題を整理して「たたき台」を作っておくということ。AIを使えば、この準備作業が劇的に効率化されます。
導入のポイント
私の経験から、以下のポイントが重要だと感じています:
1. 小さく始める
最初は簡単な機能から試してみることをお勧めします。私も最初は小さな運用改善から始め、成功体験を積み重ねることで、より大きな機能にも適用できるようになりました。
2. 「完璧」を求めない
AIが生成するコードやドキュメントは、あくまで「たたき台」です。私は最初、完璧なものを作ろうとして時間をかけすぎていましたが、議論のベースとして使うことが目的だと割り切ることで、効率が大幅に向上しました。
3. 既存資産を活用する
私が特に効果を感じたのは、既存のコードベースを参照させることです。チームの設計思想に沿った提案が得られ、議論がスムーズになりました。
効果測定
定量的効果
指標 | 改善率 | 備考 |
---|---|---|
リファインメント時間 | 83%削減 | 30分→5分 |
手戻り発生率 | 100%削減 | 事前確認により手戻りゼロ |
定性的効果
- 議論の質の向上:抽象論から具体的な比較検討へ
- 心理的負担の軽減:「たたき台作り」という重い作業からの解放
- 知識共有の促進:ドメイン知識が可視化され、チーム全体で共有
まとめ
Claude Codeを活用した「たたき台」作成により、私は以下を実現できました:
- 時間の大幅削減:議論時間を83%削減
- 品質の向上:具体的な成果物による精度の高い認識合わせ
- 個人の生産性向上:低価値な作業から高価値な判断業務へのシフト
重要なのは、AIは人間を置き換えるものではなく、エンジニアがより価値の高い仕事に集中できるようにするツールだということです。
私自身、Claude Codeを取り入れてから、リファインメントのストレスが大幅に減り、実装により多くの時間を割けるようになりました。また、事前準備をしっかり行うことで、チーム内での評価も向上したと感じています。
皆さんも、まずは次回のリファインメントで、1つの機能についてClaude Codeでモックを作ってみてください。小さな機能から始めて、成功体験を積み重ねることで、より大きな機能にも適用できるようになります。きっと議論の質が変わることを実感できるはずです。
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