AIエージェント開発、どっちを選ぶ?DifyとCopilot Studioの違いを解説
はじめに
記事の概要
DifyとCopilot Studioを比較し、どちらを利用すべきかの判断に役立って貰いたいです。
まず2つのツールを紹介し、次に技術面とセキュリティ面に分けて両者を比較します。
さらに、DifyのCloud版, Enterprise版, Community版と、Copilot StudioのClout版について、まとめています。
この記事を読んで欲しい人
- 初めてAIエージェントプラットフォームを導入し、DifyとCopilot Studioを比較したい方。
- DifyやCopilot Studioを利用した開発を考えている際に、具体的にどちらを選択すれば良いか知りたい方。
各ツールの特徴
Difyとは
Difyは生成AIアプリケーションを誰もが簡単に作ることができる、AIエージェント作成のプラットフォームです。Difyという名前は「Define + Modify」に由来し、AIアプリケーションの定義と継続的な改善を意味します。
UI上のみで操作できるCloud版と、オープンソースのコードを自由にカスタマイズできるOSS版 ( = Community版 ), ソースコードの改変は基本的にできないが商用Sassとして利用できるEnterprise版が提供されています。
Copilot Studioとは
Copilot Studioは、Microsoftが提供する業務用AIチャットボットの開発プラットフォームです。
Power Platformと連携し、UI上で簡単に業務フローに沿ったチャットボットを作成できます。
Azure OpenAIを基盤にしており、法人向けにセキュリティや認証機能も強化されています。
Dify vs Copilot Studio
大きな違い
DifyはCommunity版とEnterprise版を提供していて、セルフホスト対応していることに対し、Copilot Studioは提供していないです。
DifyのCommunity版では、ソースコードを変更したり、自社サーバーでデプロイしたりすることが可能です。
技術的な違い
最も汎用性が高く、自由に作れるのはDifyのOSS版です。
しかし、改変したコードをマルチテナント利用であったり、ホワイトラベリングすることができないため、利用用途が限られます。
Cloud版の場合でも、Copilot StudioよりもDifyの方が汎用性が高いです。例えば、RAGの詳細設定があります。DifyのCloud版ではトリガー設定ができませんが、代わりにAPI利用ができます。そのため、外部ツールからDifyワークフローを呼び出す流れで自由な開発が可能です。
Enterprise版では基本的にソースコードを変更することができないのですが、実際のソースコードにCommunity版やCloud版と比較してどのような内容が含まれているのか不明で、Cloud版と大体仕様が一緒であると仮定し、トリガーは「なし?」としました。
Copilot Studioは、多くのことでPower Automateとの連携が必要で、少し手間がかかります。
技術的に見ると、Copilot StudioよりもDifyの方が優れていると考えています。
セキュリティ的な違い
( Dify (OSS版)には、Community版(無料)とEnterprise版が含まれます。)
Dify(Cloud版)
- データの取り扱い
- RAGやユーザー入力は、データを匿名にして、研究やサービス改善などに利用されます。
- データの匿名化とは、データを識別可能なアカウント情報と紐付けない処理のことです。
- 匿名化できない場合: 例えば、お客様の個人情報がバックアップアーカイブに保存されている場合があります。
- データの保存・処理場所の指定
- できません。
- FAQによると、データは米国東部リージョンにあるAWSサーバーに保存されます。しかし、Dify共通のポリシーに従って、他の国でもデータが処理される可能性があります。
Copilot Studio(Cloud版)
- データの取り扱い
- Azure OpenAI サービス基盤モデルのトレーニング、再トレーニング、または改善には使用されません。
- 許可しない限り、サードパーティにも情報は共有されません。
参考:Azure OpenAIのセキュリティFAQ
- データの保存・処理場所の指定
- リージョンの指定が可能です。
- Copilot Studio の顧客データは、選択した Azure の地理的ロケーション内に残ることが保証されています。
- リージョンをまたいだデータの移動を許可すると、入力 (プロンプト) と出力 (結果) は、ご利用のリージョンの外、生成 AI 機能がホストされている場所に移動する可能性があります。
参考:Copilot Studioでのデータの場所
セキュリティを気にするのであれば、Enterpriseを契約していないDifyのCloud版は非推奨です。
DifyのOSS版が最も安心ですが、Copilot StudioやEnterpriseプランを契約したDifyでも問題ないケースが多そうです。
Cloud版について (Dify・Copilot Studio)
- LLMの違い
- Difyは、AIエージェントプラットフォーム(Dify, Copilot Studio, n8n, Zapier, …)などの中で、最もLLMに特化していると言えます。
- LLMモデルの種類が豊富であったり、RAGの詳細設定ができる
- 外部連携の方法の違い
- Dify
- HTTP通信:ブロックが用意されていて、簡単に設定できます。
- Webhook:HTTP通信が可能で、プラグインを利用することでLINEやSlackなどとも連携できるようになります。
- トリガー:用意されていないので、別のサービスをトリガーに使って、DifyワークフローをAPI利用するという方法で開発することになります。
- API利用:可能です。ワークフローをAPI利用することが想定されていて、簡単にAPI Keyを発行できます。
- Copilot Studio
- デフォルトで用意されているトリガーは、Microsoft製品のみです。
- HTTP通信、Webhook、外部トリガー、API利用は全て、Power Automateと連携すれば実装できます。
- Dify
両者は似た用途で利用できますが、大きな違いは次の点です。
- Copilot Studioのメリット
- ワークフローに何らかのトリガーを設定できること。
- 他のMicrosoft製品との連携がスムーズであること。
- Difyのメリット
- LLMの種類が豊富であること。
- RAGの詳細設定を行えること。
OSS版について (Dify)
Difyはオープンソースで自由にカスタマイズできるOSS版が提供されています。
Dify OSS版は Apache 2.0 ベースのライセンスが付与されていますが、次のことは禁止されています。 (参考:Apache2.0のGitHub)
商用SaaSとして、第三者に提供すること。(マルチテナントの禁止)
Difyフロントエンドにあるロゴの削除、ホワイトラベル利用の禁止。
これらを解除して使いたい場合は、Enterpriseプランを契約することで、フロントエンドを利用した商用利用(Sassなど)が可能となります。
【利用規約】
Apache 2.0ベース + 「マルチテナント禁止」 + 「ホワイトラベル利用の禁止」
-
Apache 2.0の概要;
ソースコードは自由に利用・変更しても良いが、利用の際に次の制約があるライセンス。
- ライセンスを必ず同梱しないといけない。
- Apache の名称やロゴなどをそのまま利用する場合、特許が必要。
ユースケース:AIエージェントの選び方
-
セキュリティも機能も本格的な開発を行いたい。
▶︎ Dify(Community版 or Enterprise版)が良いです。
データの保存場所を自社サーバーにできる点と、制限がなく実装できる点から、AIエージェントプラットフォームを利用する本開発にはDify(Community版 or Enterprise版)が良いと考えます。
商用のSassなどを開発する予定であれば、Enterprise契約が必要です。
具体的には、マルチテナント利用 or ホワイトラベル利用が必要な開発なら、ライセンスよりEnterprise契約が必要となります。
-
UI上で簡易的なチャットボットを作りたい。社内機密情報を含むので、セキュリティは気をつけたい。
▶︎ Copilot Studioが良いです。
社内利用であれば、Dify(OSS版)のCommunity版でも可能ですが、作業工数を考えるとCopilot Studioがおすすめです。
-
システムの開発デモを簡易的に作成したい。
▶︎ Dify(Cloud版)が良いです。
Copilot Studioで作業すると、Power Autemateとの連携に時間がかかるので、Difyで実装した方が早く作り終えることができます。
まとめ
DifyのCommunity版、Enterprise版、Cloud版、Copilot StudioのCloud版を比較しました。
DifyのCommunity版は、自由にソースコードを変更できるため汎用性やセキュリティも要件に合わせて構築できますが、利用用途に制限があります。
DifyのEnterprise版は、セキュリティも特別に用意されているのですが、ドキュメントを読んだ限りだとAIの学習に情報が利用されるかどうかが不明でした。ソースコードを変更できないところが欠点です。
Copilot Studioのセキュリティは全てユーザーの任意となっているので、間違えて許可を与えない限り要件に合わせることができるかと思います。しかし実装できる幅が限られており、何をするにもPower Automateと連携が必要になる印象でした。
- 技術的には、Dify(Community版) > Dify(Cloud版) > Copilot Studio
- セキュリティ的には、Copilot Studio, Dify(Community版) > Dify(Cloud版)
と結論付けました。
(DifyのEnterprise版は不明点が多いので、結論からは外しました。)
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