Terragrunt の generate block を応用して removed block の for_each を実現する
注意
この記事は terragrunt の利用を前提としています。
生の Terraform を利用している方は "removed / moved block の基本" まで確認後、スクリプトを作成するか手で作成する感じになると思います。
はじめに
Terragrunt (Terraform) を利用していると、既存リソースを destroy せず tfstate からのみ削除したい場面があると思います。
筆者が実際に経験した例で言えば、version の更新により破壊的変更が入ったリソースを一度管理外に置かせて、後に import するという文脈で必要になったことがありました。
その際に便利なのが removed ブロックです。
通常、この要件を達成するには terragurnt state rm コマンドを実行すると思いますが、removed ブロックを作成することにより terragrunt plan/apply を通した削除が可能になります。この方式は以下の利点があります。
- terragrunt plan を通して dry-run ができるため、安全に移行作業が進められる。
- terragrunt apply の CI/CD さえ構築されていれば、余計な shell script を組まず自動的にリソース削除を実施することができる。
しかし、removed ブロックには大きな制限があります。それは for_each や count に対応していないことです。
この際 terragrunt state rm を含んだスクリプトの作成と実行を CI/CD の範囲外で行わなければならず、商用環境でスクリプトがうまく動くことを祈ることになり精神衛生上あんまりよろしくないかと思います。
本記事では、この制限を Terragrunt の generate block 機能を使って回避し、動的に removed block を構築して terragrunt plan/apply で削除する方法を紹介します。
Terraform における removed / moved block の基本
Terraform の removed ブロックは、リソース定義の削除を宣言的に行うための仕組みです。
# resource "aws_instance" "to_be_deleted" {
# ...
# }
removed {
from = aws_instance.to_be_deleted
lifecycle {
destroy = false
}
}
通常、リソース定義を tf ファイルから削除すると destroy が走りますが、removed ブロックを記載することによって、実際のリソースの削除は行われず tfstate からのリソース定義の削除だけが行われるようになります。
実際に plan, apply の実行時には、 ... will be destroyed から ... will not be destroyed への表示へ変化します。
しかし、removed ブロックは for_each や count 属性を持ちません。
それだけではなく以下のような key の指定も受け付けないため、単純に for_each の各アイテムを列挙するという力技もそのままでは通用しません。
removed {
from = aws_instance.to_be_deleted["some_key"]
lifecycle {
destroy = false
}
}
これを解決するために、追加で moved ブロックが必要になります。
moved ブロックはリソースの名前を宣言的に変更する terraform の機能です。
# resource "aws_instance" "before_moved" {
# for_each = ...
# ...
# }
resource "aws_instance" "after_moved" {
...
}
moved {
from = aws_instance.before_moved["some_key"]
to = aws_instance.after_moved_some_key
}
これによりリソース定義のインスタンスの名称が変更されます。
before_moved と after_moved の属性値が異なる場合、move と同時に属性も変更されるので、差分がないか plan を実行して確認してください。
この二つの block を terraform apply することで for_each や count を削除することを目指します。 terragrunt を利用されていない読者の方は、ここまでの情報を元にご自身で tf ファイルをご記載ください。
公式情報も貼っておきますので、詳しく知りたい方はこちらからご参照ください。
Terragrunt の generate block の基本
本記事では上述した moved, removed block を generate ブロックで生成することで for_each を実装します。その前に generate ブロックに関して軽くおさらいします。
Terragrunt の generate ブロックは、terragrunt.hcl 実行時に動的にファイルを生成する機能です。
これは terragrunt 特有の機能であり、terragrunt.hcl もしくはそれに include される .hcl ファイルに記載することで実行可能です。
動的に作成されたファイルは terragrunt plan, apply を実行すると作成されて読み込まれます。
これは色々使い道があります。例えば、provider 設定をトップ階層の .hcl ファイルに generate ブロックとして記載し、商用環境、ステージ環境、開発環境の各モジュール単位の terragrunt.hcl で include することにより、コードを DRY に保ちながらも環境による変動を動的に適用することができます。システムの複雑度でコード変わりますが、ひとまず簡単な具体例は以下のような感じです
ディレクトリ構成
-
infra/root.hcl-
dev/terragrunt.hcl
-
stg/terragrunt.hcl
-
prd/terragrunt.hcl
root.hcl
locals {
env_regions = {
dev = "ap-northeast-1"
stg = "ap-northeast-1"
prd = "us-east-1"
}
env = basename(get_terragrunt_dir())
}
generate "provider" {
path = "provider.tf"
if_exists = "overwrite"
contents = <<-EOF
provider "aws" {
region = "${local.env_regions[local.env]}"
}
EOF
}
このような構成にすることにより、provider の定義は root.hcl に集約されたまま環境差分を適用することができます。
公式ドキュメントは以下です。
Generate block を利用した for_each の代替
今回はこの generate block の中で for_each を実装します。
aws_instances.examples["..."] を tfstate から削除したい場合、最終的には以下のようになるはずです。
move 実行スクリプト
generate "moved_resources" {
path = "moved_resources"
if_exists = "overwrite"
contents = <<-EOF
%{ for elem in local.parameters ~}
resource "aws_instances" "examples_${elem}" {
...
}
moved {
from = aws_instances.examples["${elem}"]
to = aws_instances.examples_${elem}
}
%{ endfor ~}
EOF
}
state rm 実行スクリプト
generate "removed_resources" {
path = "removed_resources"
if_exists = "overwrite"
contents = <<-EOF
%{ for elem in local.parameters ~}
removed {
from = aws_instances.examples_${elem}
lifecycle = {
destroy = false
}
}
%{ endfor ~}
EOF
}
上のコードは join("\n", [for elem in local.params : <<-EOF ... EOF]) のような形でも実装できます。
CI/CD を走らせる際は、それぞれの generate block をそれぞれ別の PR の .hcl ファイルに作成して順にマージする形になると思います。これで for_each が事実上可能になります。お疲れ様でした。
おわりに
自分の環境下だけか不明ですが、generate block を編集したり消したりすると、.terragrunt-cache に編集前ファイルが残ってしまいローカルでうまく作動しないことがあります。
CI/CD で実行される場合は関係ないですが、望ましくない挙動をしていたら削除してみるのも一つの手ではあるかなと思います。
terraform も terragrunt も積極的に開発が進められている段階(特に terragrunt はプレリリースの状況)なので、今後の発展に期待していきたいですね。
参考文献
Discussion