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ベトナムITの熱気を感じる2日間 - Rikkei Global Summit 2025レポート

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はじめに

2025年10月10日(金)、11日(土)の2日間にわたり、ベトナムのハノイにあるJW Marriott Hotel Hanoiで開催された国際テクノロジーイベント「Rikkei Global Summit 2025」に参加してきました。

ベトナム最大級のITソリューションプロバイダーであるRikkeisoft社が主催する本サミットは、同社のグローバルな顧客やパートナー企業が集結し、最先端の技術動向とビジネス戦略を共有する場です。本稿では、このサミットで得られた知見と、今後の私たちの開発・事業戦略にどう活かせるかについてレポートします。

エントランスの様子
Rikkei Global Summit 2025のエントランス

参加の背景と目的

当社は5年以上にわたり、Rikkeisoft社をオフショア開発の重要なパートナーとして連携してきました。今回のサミットへの参加には、主に以下の目的がありました。

1. パートナーシップの深化とグローバルネットワークの構築:

長年にわたる両社の連携をさらに強固なものにすること、そしてRikkeisoft社の世界中のお客様やパートナー企業とのネットワークを構築し、グローバル開発の知見を吸収すること。

2. IT体制強化に向けたベトナムの可能性探求:

当社のIT部門の体制強化という喫緊の課題に対し、ベトナム開発拠点の実現可能性を含めた調査を行うため、現地の開発環境と熱量を肌で感じること。

イベント概要

サミットのテーマは「Driving Innovation & Efficiency(イノベーションと効率性の推進)」。日本、韓国、ベトナム、欧米など多様な国籍のテクノロジーリーダーや企業幹部が一堂に会し、グローバルな交流と共創の場となっていました。

プログラムは、キーノートスピーチ、パネルディスカッション、ソリューション展示、Rikkeisoft本社見学など、多岐にわたる構成でした。

サミットのプログラム
多岐にわたるプログラムが組まれたサミット

注目セッション深掘りレポート

セッションで焦点となっていたのは、AIとデジタルトランスフォーメーション(DX)でした。

1. Rikkeisoft社のグローバル成長戦略

Rikkeisoft社は、AIを「事業の根幹を変える戦略的資産」と捉え、年間50%の成長を目指す具体的な「4つの柱」を発表しました。

  • AIへの重点投資: 開発ライフサイクル全体へのAI導入を加速させ、生産性を向上させる。
  • 産官学連携による人材育成: 国を挙げたIT人材戦略の中心的な受け皿として、トップエンジニアを確保する。
  • アウトソーシングからソリューション提供への転換: 単なる受託開発から脱却し、顧客の課題を解決する高付加価値なソリューションプロバイダーへ転換する。
  • IPO準備を通じたユニコーン化: 迅速な成長と企業価値向上を通じて、グローバル市場での競争力を確立する。

「ベトナムの知恵を世界へ」という理念のもと、成長に向けた強い決意が示されました。

セッション会場の様子
熱気に包まれたセッション会場

2. パネルディスカッション:「AIの岐路:幻想か革新か?」

「AIを活用する中で各社が生み出す『独自性』」 について、金融、サービス、データなど各業界からの視点で議論されました。多くの企業がAIツールを利用できるようになった今、いかに自社の強みや文化とAIを結びつけて競争優位性を確立するか、そしてそこに人がどう関わって影響していくべきかという点が焦点でした。

  • イノベーションは挑戦の数に比例する: 「出来そうなこと」だけではなく、「出来るかどうかわからない」未知の領域に、AIとともにどれだけ多くのチャレンジを増やせるか。この挑戦の量が、新しい価値を生み出す重要な要素であるという考え方に強く共感しました。

  • 差別化の鍵は「ドメイン知識の深さとデータ」: 汎用的なAIモデルではなく、企業独自の専門性の高いデータ(ドメイン知識)を学習させることで、競合他社には真似できないイノベーションを生むということの重要性を再認識しました。

  • 技術とビジネスの「翻訳者」の重要性: AI技術を最大限に活かすためには、技術を理解したビジネス側の人材、つまり「バイリンガル人材」が、現場の課題とAIの能力を結びつける役割を果たすことが不可欠であるという認識が共有されました。エンジニア人材のみならず、AIをビジネスにどう活かすかを一人ひとりが考えて行く必要があります。

パネルディスカッションの様子
活発な議論が交わされたパネルディスカッション

ベトナムの熱気から得た3つの気づき

セッションの学びを含め、ハノイの地で強く心に残った「気づき」をまとめます。

1. 「オフショア」から「共創のパートナー」へ

Rikkeisoft社のようなトップクラスのIT企業は、もはや単に安価な労働力を提供する「オフショア開発」企業ではありません。AI、クラウド、データサイエンスといった 最先端技術を自ら研究し、ソリューションを提案できる「戦略的共創パートナー」 へと進化していることを強く認識しました。

2. ベトナムIT戦略の根幹:「強靭な人材育成の循環構造」

Rikkeisoft社の技術力の背景には、ベトナムという国を挙げた強力なIT人材育成戦略があることを再認識しました。
強固な「産官学」連携により、 ハノイ工科大学(HUST)のような最高峰の理工系大学と、Rikkeisoft社、そして国の施策が一体となり、国が優秀なエンジニアの育成を最優先で推進し、Rikkeisoft社がその主要な受け入れ先として機能しています。教育機関へのフィードバックを通じてカリキュラムに影響を与え、常に最先端技術を学んだ即戦力を確保し続ける強靭な循環構造が、同社を「戦略的共創パートナー」へと進化させている根幹であり、ベトナムIT企業の決定的な優位性だと強く認識しました。

3. 現地で体感した「勢い」と「働くことへの哲学」

技術的な学び以上に強く心に残ったのは、国全体とそこで働く人々の圧倒的な「勢い」でした。

日本では近年稀薄になりつつある、若い世代の持つ熱量、野心、そして未来への活気が、街の至る所、そしてRikkeisoft社の社員の方々から溢れ出ていました。それは、現実的にシビアで、強かさを持たなければ生き抜けない環境の不完全さがあるからこそ生まれる、強いエネルギーだと感じます。

物質的な豊かさ以上に、自分の人生や目の前の人との繋がりを大切にし、日々を大事に生きる「心の豊かさ」 を追求しているように見えました。この心の充実こそが、いきいきと働く源泉であり、当社のミッションである「ワークライフをハッピーに!」に通ずる部分 なのだと深く考えさせられました。現地で出会った日本の方の多くが「ベトナムに来るとなんか元気になるんだよね!」 と口々におっしゃっていたのが印象的でした。その理由を肌で感じることができたのは私にとっても貴重な体験でした。

また、Rikkeisoft社では、一般的には会社の飲み会の位置づけのイベントを 「チームビルディング」 と呼び、頻繁に実施されています。これは、ビジネスの成功には技術力だけでなく、人と人との強固な信頼関係が不可欠だという哲学が社風として根付いている証拠なのだと思います。

今後のアクションプラン

今回の学びを当社開発組織の業務にフィードバックするため、以下の点を推進していきます。

  • AI活用の更なる推進: 「イノベーションは挑戦の数に比例する」というサミットでの知見に基づき、ビジネス部門と開発部門が連携し、「できるかわからない」未知の領域に焦点を当てたAI活用プロジェクトを小規模で開始したいと思います。具体的には、生成AIを用いたドキュメント自動生成やコードレビュー支援といった開発効率化はもちろん、AIによる顧客体験(CX)の飛躍的な向上や業務プロセスの効率化に繋がる試行の数をこれまで以上に増やします。

  • グローバル・リソースとの連携強化: Rikkeisoft社との関係性を、共同開発のパートナーからステージを上げ、技術的な共通言語を増やすだけでなく、事業戦略やビジネス企画のより早い段階からベトナムのメンバーとも密に連携し、お客様の課題解決に繋がる高付加価値なソリューションを共同で創出できる体制を模索・構築していきます。

まとめと結び

「Rikkei Global Summit 2025」は、単なる技術発表会ではなく、未来のテクノロジーとビジネスがどのように融合していくかを予見させる、貴重な体験となりました。

技術セッションの熱気に加え、MOU締結式でのパートナーシップ強化の様子や、現地エンジニアとの交流は、技術とビジネスが「人と人との繋がり」の上に成り立っていることを再認識させてくれました。

このサミットで得た知見と、ハノイの街で感じた活気ある熱を原動力に、私たちのチームもさらなるイノベーションと効率性の追求に邁進していきます。
ベトナムの活気ある街並み
ハノイの活気ある街並み

ユニフォームネクスト株式会社

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