社内の新製品企画会でふりかえりの話をしてみた
この記事は「ふりかえりアドベントカレンダー2022」の18日目の記事です。
この記事について
この記事を読んでくださっている皆さんは、おそらく普段からふりかえりを実践していて、ふりかえりの効果を実感しており、ふりかえりが好きだという人が大半なのではないでしょうか?
私もそのうちの1人です。
最近は、個人やチームでのふりかえりがそれなりにいい感じに回るようになってきたため、次のステップとして「企業全体にふりかえりの習慣をインストールしたい」と考えるようになりました。
その活動の1つとして、社内の新製品企画会でふりかえりアプリを企画したお話をします。
弊社について
- ざっくりとした人数構成
- 15人 : 役員
- 30人 : バックオフィス
- 30人 : 営業
- 155人 : SIer(EC、ERPパッケージのカスタマイズ。ウォーターフォール開発。)
- 25人 : 自社プロダクト開発(アジャイル開発/スクラム。私の所属はここです。)
- 弊社のふりかえりの現状
- 全社としては、奇数月にMBO、偶数月に1on1を実施しているため、そのタイミングで人によっては内省をしている。1on1は何を話してもOKなので内省していない人も多い。
- 案件(数ヶ月から数年)が終了する際にプロジェクト反省会を実施している。
- 自社プロダクトを開発しているメンバーは、スプリント毎でもふりかえりを実施している。
- その他、今回の話で登場する弊社の特徴
- 年に1度、全社員が自由に参加できる新製品企画会が開催されている。
- 全社員がいつでも自由に開催・参加できる有志の勉強会が不定期で開催されている。
経緯
過去の私の"振り返り"
私の前職はSIerでしたが、そちらでは案件(半年から1年)が終了するタイミングでのみ振り返りを開催していました。
現在の企業に転職して、最初に参画したプロジェクトは、デスクトップアプリで作られていた自社プロダクトのWeb版を開発するというプロジェクトでした。仕様や作るものは決まっていることもあり、ウォーターフォール開発で行いました。プロジェクト期間は約2年、反省会は終了時の1回のみでした。(今ではアジャイル開発/スクラムになってスプリント毎にふりかえりを行なっていますが)
そのような振り返りだったため、次のような課題や認識を持っていました。
- 作業のやり方、進め方などに課題を感じていたとしても、進捗やコストで大幅な問題がない限りはカイゼン方法を話あう時間を設けていない。
- 会社のルールとして実施しているだけで、形骸化してしまっているように感じる。
- Aプロジェクトでの反省が、次のBプロジェクトにいかされないこともしばしば。
- プロジェクト、人が変わっても、毎回似た内容の反省になってしまっている。
- 「振り返り = 反省会」という認識で楽しくはない。
"ふりかえり"との出会い
振り返りに課題を感じている中、Developers Summit 2021のこちらのセッションで、ふりかえりに出会いました。
また、ほぼ同じタイミングで新規プロダクトの立ち上げが決まり、1からチームを作れるタイミングが訪れました。
このチームでのふりかえりのやり方を見直したことで、私の認識は次のようなモノになりました。
- ふりかえりは反省ではなくカイゼン。
- 短い期間でふりかえりをするようになり、カイゼンのためのアクションをタスク化することで、明らかに働きやすくなった。
- 「ウォーターフォール開発、アジャイル開発」といった開発手法の話と、「アジャイルなチームをつくるふりかえり」というのは別物。ふりかえりとはアジャイル開発だけの話ではない。
- 作業内容とは関係なく、ふりかえりはどんなチームにでも取り入れられる。
- 何かあればふりかえりをしろ!何かなくてもふりかえりをしろ!
- ふりかえりは楽しい!!みんなに広めたろ!!
企業全体に広めるために
自社プロダクト開発をしているメンバー以外にもふりかえりの習慣をインストールしたいと思い、今回の新製品企画会以前にも次のようなことをしてみました。
やったこと
- 森一樹さんの書籍とスライドを紹介
「アジャイル
、ふりかえり
というワードを聞くと、ウォーターフォール開発をしているメンバーや開発部門以外の人たちには関係ないと思われるかもしれないけど、そうじゃないんだよ。」ということが伝わればいいなと思い、まずは、私とふりかえりの出会いのきっかけとなった書籍とスライドを紹介してみました。
- 有志の勉強会を開催
次に、話に具体性を持たせた方が興味を持ってもらえるのではないかと考え、次のような有志の勉強会を開催してみました。
- なぜ、ふりかえりを行うのか
- どのようにふりかえりを行えばよいのか
- 私のチームでの効果
結果
- 自社プロダクト開発をしているメンバーにはそこそこ刺さった?
- この効果があったかどうかは分からないが、自社プロダクト開発をしているどのチームも、いい感じにふりかえりができているみたい。
- 通知本文は読んでくれても、オススメした書籍やスライドの中身まで確認してくれる人が限られている。
- 社内図書に置いていても、ほとんど目を通してもらえない。
- 有志の勉強会に一番参加して欲しかったSIer組織の方々がほとんど参加してくれていない。
- その後も、社長から毎回同じプロジェクト反省会の結果を読まされて辛いと愚痴られた。
結果としては1番訴求したかった人たちに届けられなかったので、ゴールとは程遠い結果となってしまいました。
仮説
次のアクションを考えるために、下記の仮説を立てました。
- 単に忙しくて参加できなかった。
- 関係性の薄い私が講師のため、業務時間外の勉強会に参加しようと思わない。
- ふりかえりというテーマに興味を持っていない。課題を感じていない。
- チームでのふりかえりの話をされると、若いメンバーがボトムアップで取り入れるのはハードルが高い。
社内の新製品企画会
弊社では、年に1度、全社員が自由に参加できる新製品企画会が開催されています。
新製品企画会の概要
毎年、ルールは少しづつ変わるのですが、今年は下記のような形式で行いました。
- 予選
- 誰でも自由に参加可能(個人参加もチームでの参加もOK)
- 1人何案出してもOK
- リーンキャンバスに沿った項目を埋めた1枚ペラの企画書を提出
- 社員全員が1枚ペラの企画書を見て投票(1人3票)
- 決勝
- 予選の上位3人(3チーム)が参加
- 社員全員の前で10分間のプレゼン、5分間の質疑応答
- 社員全員が投票(1人1票)
- 結果と事業化の判断は別、事業化するかは会長・社長・役員が判断
つまり、決勝まで進めば、業務が忙しかろうが、私との関係が希薄だろうが、ふりかえりというテーマに興味がなかかろうが、半強制的に10分間はお話を聞いてもらえるのです。
プレゼン資料
内容
企画を考える上で次のような点を意識しました。
課題
見せ方として「ふりかえりには、こういう課題があるよね。」よりも、「こういう課題があるよね。その課題を解決するためには、ふりかえりをするといいんじゃないかな。」という形にしたいと考えていました。
また、プレゼンを聞いた若手社員がボトムアップでチームに取り入れるのは難しかったとしても、個人としてふりかえりを始めてみようかなと思ってもらえるように、次のような内容から入ることにしました。
- 継続的学習が今後必要になってくると思われる。
- 学習を支援するサービスではなく、マインドを育ててくれるサービスが必要なのではないか。
- 個人が自分のキャリアを考え続ける場が必要なのではないか。
解決方法
ふりかえりを習慣づけるために、形骸化させないために、この辺を意識したらいいんじゃないかなと思っている内容を伝えることにしました。
- 目標を掲げた直後はモチベーションが高くても、意識し続けないと薄れてしまうと思うので、目標はよく目に入るようにする。
- 次にやると決めたアクションの実行を忘れないように、アクションもよく目に入るようにする。
- できていないことではなく、これまでやったこと、カイゼンしてきたことに意識が向くようにして自己肯定感を上げる。
- KPT、YWTだけがふりかえりじゃないよということを伝えるために、目的に応じたフレームワークを提案できるような仕組みを設けたい。また、その時に、有識者がいなくても始められるように、ファシリテーションのサポートできるような仕組みを設けたい。
結果
- 10分という枠でふりかえりの効果を説明しつつ、新製品企画として成り立たせるのは難しかった。
- 本当の事業プレゼンだとすると、話がまとまっていなかったり、とっ散らかっている気がする。
- 新製品企画会としては優勝することができた。
- 新規事業の立ち上げまでは至らなかった。会社のお金で事業立ち上げは難しいが、作ってしまって、会社が買い上げるという形ならいけるよという話はされた。
- 匿名のアンケートでは、次のようなコメントをもらった。
- KPT以外にもたくさんの手法があって、チームの状況に応じたふりかえりをすることで成長できると感じた。
- メンバーの辛い、大変、楽しい、嬉しいなどの感情の変化に気づきやすくなることで、良いチームにしていける気がする。
- とても前向きになれるサービスだと感じた。ワクワクした。
- どんな業界でもふりかえりが必要だと感じた。
- 改めて、ふりかえりは大事だと感じた。
- 普段から気づいたことを書き溜めているが、こういうサービスがあれば使ってみたいと思った。
- 弊社のプロジェクト反省会という形では成長が見られないため、社員にふりかえりを習慣化させられるといいなと感じた。
投票やアンケートは匿名のため、誰にどれだけ伝わったのか、どれだけ心に響いたのかは分かりませんが、優勝という結果とコメントを読む限りは一定の効果はあったように思います。
最後に
今回は、「企業全体にふりかえりの習慣をインストールする」ために行なった取り組みについて、お話しさせていただきました。
ふりかえりは魅力を話すとそれなりには伝わってくれると思うので、一番のハードルは、興味を持っていない人たちに、如何に話を聞きに来てもらうかという部分なのかなと感じました。
皆さんからも、チーム外にふりかえりを浸透させるために、こんな活動をしてみたよ、こういう活動が効果的だったよというお話を聞かせていただけると幸いです。
私の次のアクションとしては、「Notionのワークスペース公開会」というテイで、社内のNotion好きなメンバーにふりかえりのテンプレートを配れるといいなと考えています。
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