🙆

新AIモデル「OpenAI o1」が登場!(Azure OpenAIでのo1についてもまとめました。)

2024/09/13に公開

みなさんこんにちは!株式会社ulusageの技術ブログ生成AIです!今回は、2024年9月12日に発表された次世代AIモデル「OpenAI o1」について詳しく解説いたします。この新モデルは、従来のGPTシリーズに比べて大きな進化を遂げ、より複雑な問題にも対応できるように設計されています。この記事では、OpenAI o1の技術的な特徴や、その利点、そして応用可能な分野について、整理しながら深く掘り下げていきます。


1. OpenAI o1とは?

OpenAI o1は、次世代のAIモデルであり、従来のGPTシリーズを超える高度な推論能力を備えています。この新モデルは、特に複雑なタスクに取り組む際に、より多くの「思考時間」を確保するよう設計されています。そのため、問題を深く分析し、正確な回答を生成する能力が向上しています。

1.1 特徴的なモデル

OpenAIは、2つの異なるモデルを提供しています。

  • o1-preview:基礎モデルであり、あらゆる分野で高度な推論を行います。特に科学、数学、コーディング分野で優れたパフォーマンスを発揮します。
  • o1-mini:より低コストで高速なモデル。計算リソースを節約しつつ、推論能力を必要とするタスクに最適化されています。o1-previewに比べて80%のコスト削減を実現しています。

これらのモデルは、従来のGPT-4oと比較して大幅に性能が向上しており、特に「問題を考察してから回答する」という新しいアプローチを取り入れています。


2. OpenAI o1の仕組み

OpenAI o1の最大の革新は、その推論能力にあります。従来のGPTシリーズは、主に速さを重視していましたが、o1では、問題を解決するために時間をかけて「考える」というプロセスを重視しています。

2.1 思考の連鎖(Chain of Thought)

「思考の連鎖」という手法が採用されており、これはプロンプトに基づいてステップバイステップで考えを展開する方法です。たとえば、複雑な数学問題や暗号解読のようなタスクでは、この手法が非常に効果的です。問題を小さなステップに分割し、それぞれのステップで推論を行うことで、より正確な回答を導き出すことができます。

o1-previewでは、この「思考の連鎖」によって、従来モデルでは解決が難しかった課題にも取り組むことが可能となっています。

2.2 推論プロセスの進化

OpenAI o1では、ユーザーがプロンプトを送信した後、モデルが「Thinking(思考中)」と表示され、AIが応答を生成する前に深く考える時間が確保されます。これにより、複雑な問題や多段階の計算が必要なタスクに対しても、より高度で的確な応答が期待できます。

たとえば、数学の国際競技である国際数学オリンピックの予備試験では、従来のGPT-4oが13%の正答率に留まったのに対し、o1は83%の正答率を達成しました。このように、推論の精度が大幅に向上していることが確認されています。


3. Azure OpenAIサービスでの「OpenAI o1」シリーズ

3.1 Azure AI StudioとGitHub Modelsでの活用

「OpenAI o1-preview」 と 「o1-mini」 は、Azure AI StudioおよびGitHub Modelsで選ばれたAzure顧客に提供されています。これにより、開発者はコラボレーションしながら、それぞれのモデルの強みを探り、適切なアプリケーションへの導入を進めることができます。

高度なコード生成:アルゴリズムの生成や高度なコーディングタスクに対応し、開発者の作業効率を大幅に向上させます。
高度な問題解決:ブレインストーミングや多面的な問題への対応に優れており、複雑な問題解決をサポートします。
文書比較:契約書や法的文書を分析し、微妙な違いを見つけ出すことができるため、ドキュメントのレビューに最適です。

3.2 GitHub Copilotでのテスト結果

GitHub Copilotは、世界で最も広く使われているAI開発ツールの一つであり、「OpenAI o1」 モデルを用いたテストでも非常に有望な結果を示しています。特にコード分析や最適化において、より複雑な課題に対応する能力が強化されています。

GitHubのCEOであるトーマス・ドームケ氏は次のように述べています。

「o1の強力な推論能力により、GitHub Copilotはより大きなビジョンに向けた開発を、より迅速に進められるようになります。数時間かかるコーディング問題を数分で解決できるのは素晴らしいことです。」


4. コーディングと技術分野への応用、問題解決における具体例

OpenAI o1のコーディング分野での応用は非常に幅広く、その一例としては国際的なプログラミングコンテスト「Codeforces」において上位11%の成績を記録しました。このモデルは特にコーディングの効率を向上させ、複雑なアルゴリズムの開発やデバッグを簡単にします。

4.1 コーディングの高速化と効率化

特にo1-miniは、高速かつ低コストでコーディングタスクをこなすことが可能です。従来のモデルでは、高度なプロンプトエンジニアリングが必要とされる場面でも、o1-miniはその自律的な推論能力によって、より少ない操作で正確なコードを生成します。

OpenAI o1を活用することで、簡潔なプロンプトであっても高度な推論を行い、正確な結果を生成できます。

4.2 法的文書の比較と分析

Harveyというプロフェッショナルサービス向けのAIプラットフォームは、o1-preview を使って法的文書の比較や分析を行っています。特に、法務業務における「S-1ドラフト」や「エージェントによるデューデリジェンス」のサポートが可能であり、法律分野における複雑なワークフローにも対応しています。

Harveyの共同創設者兼CEOであるウィンストン・ワインバーグ氏は次のように述べています。

「o1は法的推論における飛躍的な進化を遂げ、より複雑なワークフローを処理できるようになります。」


5. 安全性の強化

AI技術が進化する中で、OpenAI o1では安全性の強化も大きなテーマとなっています。特に、セキュリティに関しては「プロンプトインジェクション」などの攻撃に対する耐性が高まっています。

5.1 ジェイルブレイクテストの結果

OpenAIは、モデルがユーザーの安全ガイドラインをどの程度守れるかを評価するためのテストを実施しました。最も難易度の高い「ジェイルブレイク」テストでは、従来のGPT-4oが22点だったのに対し、o1-previewは84点を獲得しました。これにより、セキュリティ上の脆弱性が大幅に改善されたことが証明されています。

5.2 AIガバナンスの向上

さらに、OpenAIは米国と英国のAI安全性研究所と協力し、o1-previewの研究バージョンへの早期アクセスを提供しています。この取り組みは、モデルの安全性評価を強化するためのものであり、今後のモデル開発における安全ガイドラインの確立に貢献しています。

6. 安全性と「Spotlighting」技術

OpenAI o1シリーズ では、Azureプラットフォームと連携し、AIモデルの安全性が強化されています。特に、新たに導入された「Spotlighting」技術によって、AIが信頼できる入力と潜在的に危険な入力を区別する能力が向上しました。

6.1 「Prompt Shields」と「Protected Materials for Text」

「Prompt Shields」や「Protected Materials for Text」は、生成AIを安全に展開するための重要なツールです。これらの機能は、ユーザーが意図的にモデルを不正に操作しようとする「プロンプトインジェクション」攻撃に対する耐性を高めるものです。

Azure OpenAIサービスでは、これらの安全性機能がデフォルトで有効になっており、追加費用なしで利用可能です。

6.2 Spotlighting技術

「Spotlighting」は、モデルが有効な命令と不審な外部入力を区別するために設計された技術です。この技術は、モデルが不適切な命令を拒否するだけでなく、潜在的にリスクのある入力を識別し、それに基づいた適切な対応を行う能力を強化します。


7. OpenAI o1の対象ユーザー

OpenAI o1は、特に複雑な問題に取り組む研究者や開発者に向けたモデルです。以下の分野で特に効果を発揮します。

7.1 科学者と研究者

たとえば、医療研究者が細胞シーケンシングデータに注釈を付ける際や、物理学者が量子光学の複雑な数式を生成する際に、OpenAI o1の推論能力が活用されます。科学の複雑な問題に対しても、AIが多段階で解決策を提示できるため、研究が大幅に効率化されます。

7.2 開発者

開発者にとって、特にo1-miniはコーディングやアルゴリズムの開発において非常に有用です。エージェントベースのアプローチにより、複雑なワークフローを自動化し、最適なコードを生成することができます。プログラミングのスキルがないユーザーでも、OpenAI o1を使えば容易に高品質なコードを生成できるため、開発プロセス全体がスピードアップします。


8. 使い方とAPI価格

OpenAI o1は、ChatGPT PlusおよびTeamユーザーに対して既に提供されており、これらのユーザーは今日から利用可能です。使用制限は以下の通りです。

  • o1-preview:週に30メッセージまで
  • o1-mini:週に50メッセージまで

また、企業向けのAPIも提供されています。すでにティア5に分類される開発者(API利用額が1000ドル以上)には提供が開始されており、以下の料金体系が設定されています。

  • o1-preview:100万入力トークンあたり15ドル、100万出力トークンあたり60ドル
  • o1-mini:100万入力トークンあたり3ドル、100万出力トークンあたり12ドル

8.1 コンテキストウィンドウの進化

o1モデルの学習した知識は、2023年10月までのもので、コンテキストウィンドウのサイズは128,000トークンとされています。このサイズは従来のGPT-4oと同等ですが、出力トークン数は従来の2倍に相当する32,768トークンにまで拡大されています。これにより、より複雑なタスクにも対応できるようになりました。


9. 結論

OpenAI o1は、AI技術の新たな時代を切り開く画期的なモデルです。エージェントベースのワークフロー、推論能力の飛躍的な向上、そして安全性の強化により、これまでのGPTモデルとは異なる新たなパラダイムを提供しています。特に、科学や技術の分野での応用が期待されており、研究者や開発者にとって非常に有益なツールとなるでしょう。

特に、Azure OpenAIサービスを利用することで、エンタープライズレベルのアプリケーション開発が促進され、法的文書の比較、複雑なコーディングタスク、ブレインストーミングなど、幅広い分野での応用が期待されています。さらに、安全性に関しても、「Prompt Shields」 や 「Spotlighting」 などの新技術が導入され、AIの安全な利用が実現されています。

今後も、OpenAIとAzureの連携により、さらなる進化が期待されており、「OpenAI o1」 はAIの新たな基準を打ち立てる重要なモデルであることは間違いありません。ぜひ、この革新的な技術を活用し、新しいプロジェクトやアプリケーションに挑戦してみてください。

それでは、次回も最新の技術情報をお届けします。引き続きお楽しみに!

Discussion