👾

PythonCall.jlでJuliaからOptunaを使う

2025/01/27に公開

はじめに

Juliaのコード中でOptunaを使う方法について紹介します.

同様の試みは

で行われています.
こちらで紹介されている方法はPythonからJuliaを起動して値を受け取るような方法のため,値を取得するたびにJuliaを起動し直す余分な時間が発生します.

今回はPythonCall.jlを使って繰り返しJuliaを起動することなく,JuliaでOptunaを使う方法を紹介します.

PythonCall.jlはJuliaからPythonの函数などを呼び出すためのパッケージで,Optuna以外のPythonパッケージにも使用可能です.
本記事はPythonCall.jlの使用例の1つとして読むこともできます.

今回Pythonのパッケージ管理にはuvを使用していますが,PythonCall.jlに任せることもできます.
他のPython環境管理ツールでも適切に設定すれば同様のことができると思います.

なお,各種ツールのインストールに関する説明は省略します.
以下で説明するコードを実行するにはJuliaとuvがインストールされている必要があります.
uvはパッケージだけではなくPython自体も管理しているため,uvを使用しない場合は別途Pythonもインストールする必要があります.

使用環境

macOS 15.2
Mac mini (2023), Apple M2
Julia 1.11.3
Python 3.11.3
PythonCall.jl 0.9.24
Optuna 4.2.0

問題設定

上述の記事と同じ問題をOptunaで解いてみます.
問題としては以下の2変数実函数のHimmelblau函数x,y \in \mathbb{R}

f(x, y) = (x^2 + y - 11)^2 + (x + y^2 - 7)^2

を最小化する問題です.

最小値は4箇所で0になります.
詳細はWikipediaの記事などを参照してください.

実行準備

まず以下のようにターミナルでコマンドを実行し作業ディレクトリを作成します.
プロジェクト名はoptuna-jlとします.

terminal
uv init optuna-jl
cd optuna-jl

上記のコマンドによってoptuna-jlディレクトリ下にpyproject.tomlREADME.mdhello.pyが作成されています.
pyproject.tomlがPythonプロジェクトに関する設定ファイルです.
他のREADME.mdhello.pyは必要ありませんので消しても問題ありません.

続いて以下のコマンドを実行することでOptunaを依存関係に追加し,Pythonの仮想環境を用意します.

terminal
uv add optuna
uv sync # Pythonの仮想環境を作成

コマンド実行後,プロジェクトのディレクトリに.venvディレクトリが作成されます.
その他にuv.lockというuvがバージョン固定に用いるファイルが作成されます.

Pythonのコード

比較のためにPythonでのコードを示します.
上述の記事のコードを改変して使用しています.
optuna-example.pyというファイル名で保存します.
Optunaのコードの説明は他の記事等多数あると思いますので,ここでは割愛します.

optuna-example.py
"""
https://myenigma.hatenablog.com/entry/2019/01/29/204714
original author: Atsushi Sakai
"""

import optuna


def himmelblau(x, y):
    return (x**2 + y - 11) ** 2 + (x + y**2 - 7) ** 2


def objective(trial):
    x = trial.suggest_float("x", -5, 5)
    y = trial.suggest_float("y", -5, 5)
    return himmelblau(x, y)


def main():
    study = optuna.create_study()
    study.optimize(objective, n_trials=1000)
    print(f"min: {study.best_value} at {study.best_params}")


if __name__ == "__main__":
    main()

実行

以下のコマンドで実行します.

terminal
uv run optuna-example.py

実行結果

terminal
# (めっちゃいっぱい出る)
[I 2025-01-26 04:33:34,594] Trial 999 finished with value: 0.0758888563447687 and parameters: {'x': 3.6225087377750724, 'y': -1.852452409575476}. Best is trial 787 with value: 0.0012883064501580882.
min: 0.0012883064501580882 at {'x': 3.5841488123848735, 'y': -1.8573979664983822}

のような出力が得られます.
最小値として得られたminの値が0に近い値になっていれば正解に近い値が得られています.
atの後に最小値として得られた値を取るx,yの値が表示されます.

Juliaの実行準備

それではJuliaに話を移します.
optuna-jlディレクトリで以下を実行します.

terminal
julia --project=. -e 'import Pkg; Pkg.add("PythonCall")'

これで現在のディレクトリのプロジェクトにPythonCall.jlがインストールされます.
Juliaのパッケージ管理用の設定ファイルであるProject.tomlManifest.tomlが作成されます.

Juliaのコード

続いて以下のようにJuliaのコードを作成します.
optuna-example.jlというファイル名で保存します.

optuna-example.jl
# 実行時に環境変数を設定しない場合は以下のコメントアウトを外す
# ENV["JULIA_CONDAPKG_BACKEND"] = "Null"

using PythonCall: pyimport

function himmelblau(x, y)
  return (x^2 + y - 11)^2 + (x + y^2 - 7)^2
end

function obejective(trial)
  x = trial.suggest_float("x", -5, 5)
  y = trial.suggest_float("y", -5, 5)
  return himmelblau(x, y)
end

function main()
  optuna = pyimport("optuna")
  study = optuna.create_study()
  study.optimize(obejective, n_trials=1000)
  println("min: $(study.best_value) at $(study.best_params)")
end
main()

import optunaと書く代わりにoptuna = pyimport("optuna")と書く以外はPythonのコードとほぼ同じです.
PythonとJulia間のオブジェクトの変換はPythonCall.jlが自動的に行います.
コードの書き方によっては変換がうまくいかない場合がありますが,その場合はpyconvert函数を使用して明示的に変換することができます(例:pyconvert(Float64, trial.suggest_float("x", -5, 5))).

実行

以下のコマンドで実行します.
なお,--projectオプションはプロジェクトのディレクトリを現在のディレクトリに指定するために使用しています.

terminal
env JULIA_CONDAPKG_BACKEND="Null" uv run julia --project optuna-example.jl

env JULIA_CONDAPKG_BACKEND="Null"は環境変数の設定をしています.
これはPythonCall.jlのデフォルトのパッケージ管理ツールであるCondaPkg.jlを無効にするために必要です.


Juliaではコード中に環境変数を設定することができます.
上記コードの先頭にあるコメントアウトを外すことで環境変数を設定することができます.
この場合,実行コマンドは

terminal
uv run julia --project optuna-example.jl

となります.

uvを使用しない場合

また,環境変数に関する設定を消去してデフォルトのCondaPkg.jlを使用することもできます.
その場合はconda用のPythonパッケージに関する設定を記述するCondaPkg.tomlファイルを作成する必要があります.
CondaPkg.tomlの記述方法はCondaPkg.jlのREADMEを参照してください.
また参考コードを置いているリポジトリCondaPkg.tomlの例を置いてあります.

実行コマンドは

terminal
julia --project optuna-example.jl

となります.

実行結果

Pythonのコードと同様の結果が得られれば成功です.
実行に時間がかかりすぎる場合は評価の回数を制御するn_trialsの値を小さくしてください.
なお,Himmelblau函数の最小値0を取る場所は4箇所あるため,得られる最小値の位置がPythonの場合と同じ場所になるとは限りません.
また,乱数を使用するため,Python版,Julia版ともに実行するたびに得られる最小値の位置が異なることがあります.

コード例置き場

今回使用したコードは以下のリポジトリに置いてあります.

GitHubで編集を提案

Discussion