『Amazon Bedrock 生成AIアプリ開発入門』の感想をば
最近話題のBedrock本『Amazon Bedrock 生成AIアプリ開発入門[AWS深掘りガイド] 』を共著者のみのるんさん(@minorun365)からご恵贈いただきました。
今回は感想をご紹介したいと思います!
みのるんさんには、私が運営しているStudyCoというコミュニティで以前もコラボさせていただき、大変お世話になってます。
また、次回勉強会にもご登壇いただきますので、是非ご興味のある方はご参加いただければ嬉しいです。
私ごときが感想を述べずとも、界隈では十分話題になっている本書ですが、
- ①CTOなどの職にあり、短時間でAWS×AIの概要をざっくり掴みたい方(私は完全にこのパターンでした)
- ②テックリードやアーキテクトとして自社にBedrockの導入を検討されている方
- ③これを機に生成Aアプリ開発に入門して、実際にガッツリ手を動かしてみたい方
などに特にオススメです。
(著書の方々の意図する読み方ではないかもしれませんが、)今回は①のようなのざっくり概要を掴みたいという観点から感想をシェアしたいと思います。
ざっくり全体の感想
本書は非常に網羅的で、Bedrockのことだけではなく、生成AIのトレンド、生成AIアプリ開発の全容が掴めるようになっています。
2024年以降の最新の情報も非常に丁寧に解説されており、エンジニアでない方が流し読みしても十分参考になる内容なのではないかと思いました。
私がエンジニアリング責任者を務めるPharmaX社では、メインでGCPを使用しており、AWSを本番でがっつり運用しているわけではないのですが、私としてもクラウド各社の生成AI対応状況は知っておきたいわけです。
私のように「AWSめっちゃ使っているわけではないけれど、クラウド各社の状況は理解しておかないとなぁ」と思っている方は決して少なくはないとは思います。
そのような方は、手を動かすところは動かしつつ、ざっと読むところは読みつつで、十分ニーズを満たせるようになっているのではないかなと思います。
AWSの生成AIアプリ開発への向き合い方・取り入れ方を見ていれば、GCPやAzureの今後の発展も想像がつくようになるかと思いますので、その点でもこのタイミングでこの書籍が手に入る意味は大きいでしょう。
特に良かった点
有力な生成AI各社のモデルの概要が網羅されている
冒頭から圧巻なのが、各社の最新モデルの情報が網羅されている点です。
生成AI業界は非常に進歩が速いので、数ヶ月でも勢力図は大きく変わり得ます。
私自身、OpenAIのGPTシリーズとAnthropicのClaudeシリーズぐらいしかきちんと情報を追えていなかったのですが、CohereのCommant RシリーズやAmazonのTitanなどの情報も網羅されていたので非常に勉強になりました。
実際にこの書籍きっかけで、Commant RやLlamaの現在地についてきちんと調べ直しました。
書籍の発売直前に発表されたClaude3.5の対応方法も早速カバーされているとのことで、サポートの手厚さも素晴らしいです。
Bedrockで生成AIアプリを作る場合のアーキテクチャ・パターンが豊富に紹介されている
この本の一番の魅力は、生成AIアプリを作る上でのアーキテクチャのパターンが図解付きで沢山紹介されている点です。
普段AWSを使わない方でも、十分に参考になるでしょう。
他社のサービスでのアーキテクチャ・パターンをある程度理解している方であれば、比較しながら各社の弱み強みをざっくり掴むこともできるでしょう。
(2024年6月現在では、生成AIアプリ開発に必要なサービス群の充実、組み合わせのしやすさという点では、GCPが少し出遅れているように感じます。)
読む方の技術力や想定する用途によって、AWSの各サービスを使い分けられるように解説してくださっているので、自社のサービスに無理なく取り入れることができるでしょう。
基本的には、GUIで一番簡単に構築できる方法から入り、読者のニーズによってカスタマイズする方法の紹介という順で解説が進んでいくので、活用のイメージもつきやすくなっているかと思います。
Bedrockの紹介に限らずRAGやAgentsなどの生成AIアプリ開発の勘所が分かるようになっている
また、この本の素晴らしいところは、Bedrockの知識だけではなく、最新の生成AIアプリ開発手法についても学べるところです。
RAGと一言で言っても必要な工夫や考慮点は多々あります。
本書では、RAGで求められるパラメータの説明や回答品質向上のための工夫などについても取り上げられています。
例えば、Rewrite-Retrieve-Readや、HyDEと呼ばれる最近注目の手法についても触れられているので、RAGアプリを作る上で知っておくべきことが余すことなく盛り込まれています。
AgentsについてもReActなどの重要な手法に触れられていますし、Bedrockについて学んでいたら、気が付くと生成AIアプリの流行の手法を理解できていたという構成になっている点に感動しました。
注意点
Pythonの知識については、生成AIプログラミングを少しでもご経験したことがある方であれば、問題なく読めると思います。
ほぼPythonの知識がなくとも、他の言語の知識があれば十分理解できる内容になっているように感じます。
一方で、AWSについては多少の前提知識が必要かもしれません。
私のようなAWSをガッツリ運用しているわけではないけど、入門書はちょこちょこ読んでいるし、少しは触ったこともあるという程度の知識の方でも、各サービスの位置づけなどが分からなくて困る場面はあるかもなと思いました。
もっとも、そこまで書いているといくら紙面があっても足りないので、仕方がないことだとは思います。
逆に冒頭からガッツリ手を動かして入門したい方に取っては、使い方自体は非常に丁寧に書かれているので、手を動かせなくて困ることは全くないかと思います。
まとめ
あくまで今回はご恵贈いただいた書籍のご紹介であるという前提はご理解いただきたいと思いますが、個人的には非常に勉強になる内容だったので、感想をシェアしました。
特に私のような技術の全体像を掴みたい方にはもってこいの書籍だと思います。
もちろん、今から生成AIに入門したいという方にも非常に丁寧で分かりやすい内容になっているのでご安心ください。
このスピードで、ここまでBedrockや生成AIアプリ開発の情報をきちんと網羅した書籍を刊行いただいた著者の方々には尊敬の念を禁じえません。
ぜひ、多くの生成AIアプリ開発を志す方にこの書籍が届くことを願っています!
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