UbieのこれまでのOSS支援と、これからの支援戦略
Ubie Discovery ソフトウェアエンジニアのゆうく(@yukukotani)です。
Ubie として2021年5月から行っている OSS への支援を振り返り、得られた学びや今後の支援戦略をご紹介します。
これまでの支援内容
ほぼ全て Open Collective を通して寄付しています。
Babel
JavaScript/TypeScript のトランスパイラです。2021年5月に500ドルを寄付しました。
webpack
JavaScript/TypeScript のバンドラです。2021年7月に1000ドルを寄付しました。
mockk
Kotlin のモッキングライブラリです。2021年8月に1000ドルを寄付しました。
Pact
コンシューマ駆動テストツールです。2021年9月に1000ドルを寄付しました。
core-js
JavaScript の Polyfill ライブラリです。2021年10月に1000ドルを寄付しました。
Prettier
JavaScript や TypeScript、HTML などのフォーマッタです。2022年2月に1500ドルを寄付しました。
JUnit 5
JVM アプリケーションの単体テストライブラリです。2022年2月から毎月100ユーロを寄付します。
Browserslist
市場シェアなどからBabelなどの対象ブラウザを定義するためのツールです。2022年2月から毎月100ドルを寄付します。
支援するモチベーション
Ubie はスタートアップ企業だからこそ OSS を支援する理由があると考えています。
- 時間制約がある中で事業成長に集中するため、OSS が必要不可欠
- 業務として集中的に技術的貢献をする余裕がない
以下の記事にもう少し詳しく書いています。
また、LINE株式会社の事例やサイボウズ株式会社の事例も参考になります。
支援してみてわかったこと
大企業の支援が偏っている
Babel や webpack などの有名な OSS には Google や trivago、Airbnb などの大企業が数百万〜数千万円規模の支援をしており、どちらも総額1億円以上の支援が集まっています。
一方で、それらに匹敵するくらい利用されている core-js や Browserslist はそれぞれ総額500万円、50万円ほどしか集まっていません。
寄付金があまり使われていない
例えば Pact には現在40万円ほど支援が集まっていますが、一度も利用されずプールされています。
Prettier も長らく寄付金を使っていないことから支援を見送っていましたが、メンテナへの報酬支払いが決まったことを受けて、寄付をしました。
支援が集まらないから使わない、という鶏卵問題ではありますが、寄付金の使途や方針が明らかになっていると支援しやすいです。Browserslist や JUnit 5 は「セキュリティに注力する」「メンテナが同期的に議論する時間を作る」など使途が明らかにされていたことが理由の1つとなり、最近支援を始めました。
支援の窓口があまりない
Open Collective のようなサービスを利用していない OSS が多く、支援する側の負担が大きいという問題があります。JavaScript エコシステムは Open Collective の利用が比較的活発ですが、Ubie で利用している Kotlin や Ruby の OSS だと支援のための窓口が設けられてない場合も多く、十分な支援が行えていないのが現状です。
こういった OSS に企業側からアプローチするのは難しいですが、Ubie で行っている OSS 支援を継続的に外部発信することでエコシステム全体で企業の OSS 支援が活発になり、支援窓口を設置する OSS が増えるといいなと思っています。
採用広報としてもリーズナブル
支援についてサクっとツイートしただけで、Ubie メンバーのブログなどの平均と比べて数倍のインプレッションがありました。
ブログなどと比べて人的コストが圧倒的に低いことも考えるとリーズナブルで、営利企業が予算を獲得するための理由としても合理的でした。
これからの支援戦略
Ubie で利用している OSS の中から、以下の2軸で選定します。
- 大企業の支援が行き届いていない
- 寄付金が使われる、もしくは使われる目処がある
今の Ubie が支援できる金額はそういった大企業の支援金額に比べると雀の涙ほどの金額になってしまいますが、core-js のように大企業の支援が届いていないOSSを支援することで、金額以上のインパクトを残せると考えています。
また、実際に使われない支援では意味がありません。必要に応じて OSS 側とコミュニケーションを取りつつ、適切に使われる支援をしていきます。
これらを考慮して支援先を考えるのは大変で、実際 2021年11月 からしばらく手が回っていなかったです。そのため、これからは毎月支援先を考えるのではなく、特定の OSS を継続的に支援したいと考えています。まずは Browserslist と JUnit 5 への支援から始め、他の OSS にも順次拡大していく予定です。
おわりに
大企業と比べると雀の涙と書きましたが、100社が1000ドル支援すれば大企業の支援金額と肩を並べることができます。この記事を書くことで少しでもその状況に近づくといいなと思います。
また、OSS 側もより適切に支援を集めて使ってくれるようになると嬉しいです。
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より大きな支援をするためにも、一緒に Ubie を大きくしてほしいです!
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