入社3ヶ月で感じたデータドリブン開発の面白さ 〜Amplitudeを活用した予約システム改善〜
この記事は、Linc’well Advent Calendar 2025 7日目の記事です。
1. はじめに:入社して3ヶ月が経ちました
はじめまして、エンジニアのゾノと申します。
リンクウェルに入社してから3ヶ月が経ち、当社支援先の医療機関クリニックフォアに提供しているオンライン診療の予約システムの開発を担当しています。(リモートワーク可能なので電車での通勤がなく快適です!)

日々の業務では、ユーザー体験の向上を目指し、UI改善やデータ分析を通じてサービスの品質を高める取り組みを行っています。
この3ヶ月で特に印象的だったのは、データに基づいてプロダクトを改善する文化がしっかり根付いていることです。
「なんとなく良さそう」ではなく、実際の利用データをもとに議論し、改修内容を決めていくプロセスが非常に新鮮でした。
2. データ分析と改善の流れ
開発チームでは、ユーザーの行動データを計測・分析するために Amplitude を活用しています。
たとえば、どの画面で離脱が発生しているか、どの導線から予約完了まで進んでいるかを可視化し、数値をもとに課題を発見します。
その結果に基づき、フォーム設計やボタン配置などのUIを改善し、再度効果を検証する――このサイクルを継続的に回しています。

Amplitudeのダッシュボードでは、仮説検証の結果をチーム全体で共有できるため、開発・デザイン・プロダクトのメンバー・支援先のクリニックのメンバーが同じデータを見ながら議論できるのも大きな強みです。
3. AmplitudeによるA/Bテストの活用
データを見ながら改善ポイントを探していく中で、「この変更は本当に良い効果があるのか?」を確かめたい場面も多くあります。
そんなときに活用しているのが、Amplitude Experiment を使った A/B テストです。
分析 → 改善 → 検証 のサイクルをより確かなものにしてくれています。
※利用イメージ

事前準備:仮説と指標を固める
A/Bテストを行う際は、まず 仮説の明確化 と 指標の設定 から始めます。
- 成功指標(Success Metric):予約完了率、ボタンCTR
- 安全指標(Guardrail Metric):離脱率の悪化、操作時間の増加
「改善されたかどうか」だけでなく「悪化していないか」も同時に見ることで、安心して意思決定できます。
計測の粒度を設計する
Amplitudeでは、イベント設計が分析の精度を大きく左右します。
- クリック → “意図” ごとにイベントを分割
(例:次へ進む操作 / 閉じる操作 / 補足情報の確認 など) - フォーム → ステップ単位でイベント化し、どこで離脱したかを特定
単なる “クリックされた” ではなく、ユーザーが何をしたかったのかを区別することで、課題が見えやすくなります。
フロントエンドでの実装とバリアント・exposureイベント
A/Bテストでは、ユーザーごとに 異なるUIパターン(バリアント) を表示します。
たとえば、
- Variant A:従来のUI
- Variant B:改善案のUI
といったように、Amplitudeがユーザー単位でランダムに割り当てます。
一度付与されたバリアントはそのユーザーに固定されるため、公平に比較できる環境が作れるのが大きな特徴です。
このとき、「どのユーザーがどのバリアントを見たか」を正しく記録するために送信しているのが exposure イベント です。
exposure が記録されていないと、どのUIを見たユーザーの行動なのか判断できず、テスト結果が正しく集計できなくなってしまいます。
また、バリアント読込前にUIが一瞬切り替わる FOUC を避けるため、読み込み中はコンポーネントを描画しないなど、UX面の調整も行っています。
実際に試して分かったこと
A/Bテストでは、意外な結果が出ることも多くあります。
- 入力欄を簡略化しても、完了率がほとんど変わらない
- 文言変更だけで大きく改善することがある
「なんとなく良さそう」ではなく、実際のデータを見て判断することの大切さを強く実感しています。
結果の読み解きと意思決定
Amplitudeの有意性判定だけでなく、以下の追加観点も合わせて確認しています。
- デバイス別の差(iOS / Android)
- 新規 / 再来の動き
- 安全指標が維持されているか
オンライン診療という特性上、UIのわずかな変化でもUXに影響するため、慎重で丁寧な意思決定が求められています。
4. コード不要で検証できる Web Experimentation の紹介
現在はエンジニア実装によるA/Bテストが中心ですが、将来的には 非エンジニアでも仮説検証できる仕組み として、Amplitude の Web Experimentation も有望だと感じています。
これは、コード変更を伴わずにAmplitude上でUI差分を作成・配信し、A/Bテストを実施できる仕組みです。
ノーコードで施策を試せるようになれば、検証スピードをさらに高められ、デザイナーやマーケターも主体的に仮説検証を進められるようになります。
5. まとめ:データドリブンな改善を当たり前に
入社して3ヶ月を振り返ると、「データを見て、仮説を立て、改善を繰り返す」という流れが自然にチームの文化として根付いていることを実感します。
Amplitudeを活用することで、ユーザー行動を具体的な数値として把握し、より確かな改善判断ができるようになりました。
今後もA/Bテストの精度を高めながら、ユーザーがより快適にオンライン診療を利用できるよう、データドリブンな開発を続けていきたいと思います。


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