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「基礎からの新しいストレージ入門」は、2023年夏の課題図書

2023/08/26に公開

夏も終わりに近づいた時期ですが、エンジニア必読のストレージ入門が発売されました[1]

基礎からの新しいストレージ入門 基本技術から設計・運用管理の実践まで

https://www.amazon.co.jp/dp/4802614136/

こちらはゼットラボやSNIAで最新ストレージの情報発信をして下さっている坂下さんの待望の新刊技術書です。
クラウド時代にも陳腐化しないストレージ技術について、基礎からわかりやすく説明してくれています。

(私が考える)対象となる読者

アプリケーション開発をしている方からストレージ以外のインフラエンジニアまで、「ストレージなんもわからん」と感じている人々に、ぜひおすすめしたい入門書です。

特にクラウドからシステム開発に入って、

  • EBSとかEFSとか雰囲気で使ってる
  • とりあえずS3、他は難しくて分からない
  • ファイルストレージ?ファイルシステム?マウント?なんのこと??

という方は、最初から最後まで本書を通して読んでもらえれば、会社に1人は居るストレージおじさんとの会話が捗るようになるでしょう。クラウドやハードウェアベンダーとの会話でも、(全然分かってないのに)分かったふりをする必要もなくなります。

当書籍の構成

Chapter2で「ストレージのアーキテクチャ」、Chapter3で「ベアメタルサーバ/VMでの使い方」、Chapter4が「コンテナ/Kubernetesでの使い方」と内容が続いていきます。

ここで多くの初心者の方は思うはずです。
「私、普段はベアメタルとかVM使わないし、コンテナとかサーバレスの環境だから前半は読まなくてよくない?」

ここがストレージの難しいところだと思っています。

他の技術同様に、現在のストレージは過去からの積み上げで今の形になっているのですが、どこから学ぶべきか初心者には分かりづらいのです。

ストレージの種類として良く説明されるのが、

  1. ブロックストレージ
  2. ファイルストレージ
  3. オブジェクトストレージ

ですが、当書籍の図にも何度か示されている通り、ブロックストレージが全ての基礎です。上の3つは横並びではなく、1.に2.や3.のサービス(書籍内にはファイルサーバやデータサービスと表現されているもの)がオーバーラップしたものだと考えるべきです。

このブロックストレージに使われている技術やメディアなどへの理解が根本であり、それを順番に積み上げて理解していくために、当書籍の目次が構成されているように見えます。

クラウドのストレージサービスでも階層化やスナップショットの機能が使えますよね?それを見たときに裏にあるブロックストレージを想像してみて下さい。この本を理解すればそれが出来るようになるはずです。

新しいストレージ

タイトルにもある "新しい" ストレージとは何のことでしょうか。
Chapter4「コンテナ/Kubernetesでの使い方」とChapter6「Cloud Nativeとストレージ」を読んでみて下さい。

"新しい"とは新製品や新サービスではなく、現在のアプリケーション開発環境にフィットした新たなストレージの運用・管理の仕方だと分かります。

コンテナやKubernetesを使ったことがない方は、もしかするとChapter4のコマンドやYAMLの内容が分かりづらいかもしれません。
それでも、Chapter3までをきちんと理解していれば、PodにVolumeを割り当てたり、CSIでもクローンやスナップショットなどが準備されていることの意味は分かるのではないかと思います。

そしてストレージエンジニアへ

ここまでに説明を飛ばしていたChapter5「ストレージ管理と設計」、ここはストレージに馴染みのない方には正直一番難易度が高いかなと思いました。

ここで書かれていることは、 ストレージエンジニアが普段仕事中に考えていること、気を付けていること です。
Chapter4までの内容を何度も読んで理解し、これからストレージエンジニアとしてキャリアを積んでみたいという方、ぜひChapter5にも積極果敢に挑戦してみて下さい。今携わっているシステムに対して、この辺りの内容をレビューで指摘したりできればとても良いと思います。

もちろん、システム全体のアーキテクトにも必要な視点になります。シニアのインフラエンジニアとして視野を広げたい方にも、Chapter5を繰り返して読むことをお勧めします。

みんな、ストレージエンジニアになろうぜ! (私は見習いぐらいですが)

脚注
  1. 当記事のタイトルはmaginoliaさんのblogのぱk、オマージュです。 ↩︎

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