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商業登記簿APIを作って販売する ~1年目振り返り~

2024/09/29に公開

商業登記簿APIの開発を始めて1年以上が経過しました。現在では本当にありがたいことに何社ものお客様にご利用を頂いています。1期目の振り返りとしてこれまでの活動をまとめます。

総評としては、思ったより前進することが出来ました。なにもないところから製品をリリースし、お客様に実際に使っていただくところまでたどり着くことが出来ました。

本題に入る前に...どういうプロダクト?

新規取引先を増やす際、取引先が本当に存在するかや役員が反社であったり悪い風評がないかを確認するためには、商業登記簿を確認することが一般的です。

商業登記は法務省が管理しており、オンラインでPDFとして閲覧することができます。しかし、このサイトはブラウザからの手動アクセスを前提としています。

また、商業登記簿をPDF形式で入手しても、商業登記簿を読み解くにはある程度の専門性が必要であり、人の目が必要です。

この2つの問題を、API経由で、法人番号をキーとして解析された結果が取得できるようにすることで解決することを目指しました。

例えば、取引先の審査をSlack経由で半自動化することや、ネット銀行の法人審査の自動審査へ組み込む、といったユースケースを想定しています。

法人設立

まずPMFをしてから他のことを考えれば良いという方針もありますが、まず最初に法人設立に取り組みました。

toB のプロダクトなので法人として販売したかったこと、登記簿APIを売っているのに自分は登記されていないのではなんだかカッコがつかないことが理由です。個人開発でいつ飽きるかわからないサービスを誰が買いますか?という思いもありました。

2023年の5月に動き始め、2024年6月中旬に登記が完了しました。クリティカルパスがどこにあるのかが全然わからず苦労しましたが、次やる時はすぐできると思います。資本金の払込み方法が少しトリッキーに感じました。設立プロセスそのものが興味深く楽しい体験でした。

登記簿パーサーの開発

商業登記簿APIのコアコンピタンスは解析部分になると確信していたので、APIの整備を始める前にパーサーの開発に取り組みました。

サンプルとなる登記簿を取得して、想定される解析結果のアノテーションを行い、パーサーの結果と一致させることを繰り返すことで漸進的に開発を行いました。2023年9月ごろには、法人名/住所/代表者氏名に限れば世の中の大半の登記簿は解析できるようになりました。

パーサーのソースコードをオープンソースにしたのは、一つ大きな決断でした。プロダクトの中で1番重要な部分だからこそ公開して、こういうレベルのプロダクトを作っているんだと知ってもらおうと考えました。

実際にパーサーの実装を見た上でAPIの導入をしてくださるケースもあり、これ良い判断だったと感じています。

パーサー https://github.com/tychy/toukibo-parser

インフラ選定

2023年8月ごろからインフラ構成と利用するライブラリの選定を始めました。最初はできるだけ運用コストを下げる方針だったので、とにかく安く運用できることを重視しました。

DB: Digital Oceanのシンガポール
LB: Cloudflare
インスタンス: Sakura+自宅

というような構成でした。しかし、ちゃんと監視などを構築した結果、シンガポールDBは遅すぎること、自宅サーバーは意外とダウンしている(どこでかは切り分けてないが)こと、Cloudflare LBはいきなり仕様変更して障害を起こす頻度が高いことなどを学びました。

結局2024年9月時点では、DB/LB/インスタンスの全てをVultrの東京リージョンに寄せました。速度と信頼性はちゃんとお金を払って買わないといけないなと学びました。

API開発とドキュメント執筆

本丸です。この部分が1番苦労が少なかったです。とにかく仕様を決めて、そこに向かって実装をしていくことに集中しました。

2023年9月から開発を行、2023年10月にはサービスをリリースしました。

API仕様はこちらにまとまっています。 https://toukikun-docs.tychy.jp/api_spec/

お客様のオンボ体験の改善

2023年10月の時点では、新しいお客様はメールで申し込みをして契約する方式でした。しかし、鉄は熱いうちに打て、ということで、興味を持っていただいたお客様がすぐにAPI利用を開始できるようにオンボ体験の改善に取り組みました。

ポータルサイトを作成し会員登録を行ったのち、ポータルサイト内のStripeのリンクから支払いを出来るようにしました。そして、支払い完了時にAPIが解放されるように設定しました。

これはとても良い判断で、これまですべてのお客様がこのフローで登録してくださっています。

ポータルサイト https://portal.tychy.jp/

オンボ方法まとめ https://toukikun-docs.tychy.jp/100plan/

利用規約と契約書の整備

ここは少し進め方を間違えました。当初、利用規約とプライバシーポリシーは自作したものを使っていました。しかし、変更時には、すでに購入いただいたお客様へのコミュニケーションを行う必要があるので、利用規約、プライバシーポリシー、(必要に応じて)契約書の整備はできるだけ早い段階で行うべきでした。

最終的には、素晴らしい弁護士さんを見つけてレビューいただきましたが、もっと早い段階で依頼をかけておくべきでした。自分が思っていたより大変なプロセスではありませんでした。

広報活動

ここまでの全てと同じくらい広報活動が重要だ、というのがこれまでに学んだ最も大切なことです。記事を書くこと、検索にちゃんと引っかかるようにすることをコツコツ積み上げることで思った以上の結果が出ることに驚きました。

基本的には、ドキュメントをきちんと書くこととZennにユースケースごとの記事を積み上げていく方針を今後も継続していきます。

次の一年に向けて

とにかくプロダクトの品質を上げることにコミットしていきたいです。登記簿パーサーも1000件に数件くらいの割合で解析がうまく出来ていないので精度を高めていきたいです。また、1年目は無障害でサービスを提供できたので2年目も継続していきたいです。

どこまでやるか決めていないですが、法人を登録して定期的に登記簿を取得し変化があればcallbackするモニタリングシステムと反社DBの構築にはいつか取り組みたいと考えています。余裕があれば手を出そうと考えています。

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