はじめに
Turing UXチームでソフトウェアエンジニアをしています佐々木(kento_sasaki1)です。Turingは「We Overtake Tesla」をミッションに掲げ、2030年に完全自動運転EVの10,000台量産を目指すスタートアップです。
本記事は、Turingアドベントカレンダー15日目の記事です。今回、手軽に試せるGPTsの機能を用いて「保安基準GPT」を作ってみたので、その概要について紹介します。
「保安基準GPT」は、以下のリンクから使用できます。
保安基準とは
保安基準とは、国土交通省令の1つであり、自動車の構造・装置が持つべき保安上、あるいは公害防止を目的とする技術上の最低限の基準を定めたものです。完成車メーカーを目指すTuringは、安全確保の観点から保安基準に則った開発をしなければなりません。Turingには、「保安基準をよむやつは常に偉い」という開発チームに浸透しているバリューがあります。
実際に「保安基準」には何が記載されているのか、例として操縦装置に関する第10条を見てみましょう。
第10条 自動車の運転に際して操作を必要とする次に掲げる装置は、運転者が定位置にお
いて容易に識別でき、かつ、操作できるものとして、配置、識別表示等に関し告示で定
める基準に適合するものでなければならない。
一 始動装置、加速装置、点火時期調節装置、噴射時期調節装置、クラッチ、変速装置
その他の原動機及び動力伝達装置の操作装置
二 制動装置の操作装置
三 前照灯、警音器、方向指示器、窓ふき器、洗浄液噴射装置及びデフロスタ（前面ガ
ラスの水滴等の曇りを除去するための装置をいう。以下同じ。）の操作装置
このように、第10条では操縦装置に該当する項目が列挙されています。また、細目告示の第12条、第90条、第168条、適用整理第6条に詳細が記載されています。細目告示の第168条では操縦装置の識別表示が示されており、識別表示が表示条件が詳細に定義されています。例えば、ロービームの識別表示は「すれ違い用前照灯（点灯）の操作装置」という名称で定義されており、設置場所については、以下のように記載されています。
走行用前照灯、すれ違い用前照灯、方向指示器、停止装置、警音器、制動装置、ク
ラッチ及び非常点滅表示灯の操作装置は、運転者がかじ取装置から手を離さずに操作
することができること。
すれ違い用前照灯（点灯）の操作装置
識別装置だけでも全てを把握するには時間、労力を必要としますが、保安基準は膨大であり、第73条まで存在します。そこで、保安基準を読む際にパートナーとなるのが今回作成した「保安基準GPT」です。ふわっとした質問を投げても、該当箇所のヒントが得られます。
では、早速「保安基準GPT」を作成して使ってみます。
保安基準GPTを作ってみる
今回は、ChatGPTの機能であるGPTsを使用します。GPTsとは、「特定のタスクに特化するようにカスタマイズされたChatGPT」であり、2023年11月6日に開催したOpenAI Dev Day 2023にて発表されました。
以下のわずか3つの手順で作成できます。
手順1. 国土交通省の道路運送車両の保安基準で公開されている保安基準の全文をPDF形式で収集します。
手順2. GPTs作成ツールGPT Buildersを開きます。
手順3. Configure画面を開き、先ほど収集した保安基準の全文をUpload Filesからアップロードします。
以上で完了です。では、早速質問してみます。
保安基準GPTの作成画面
自動車の運転に際して操作を必要とする装置の配置、識別表示等に関する基準は、道路運送車両の保安基準の第10条に記載されています。この条文は、運転者が定位置において容易に識別でき、かつ操作できるように、次の装置に関する配置と識別表示の基準を定めています：
始動装置、加速装置、点火時期調節装置、噴射時期調節装置、クラッチ、変速装置その他の原動機及び動力伝達装置の操作装置。
制動装置の操作装置。
前照灯、警音器、方向指示器、窓ふき器、洗浄液噴射装置及びデフロスタ（前面ガラスの水滴等の曇りを除去するための装置）の操作装置。
このように、正しい回答が得られました。最終的には一次資料を参照する必要がありますが、「保安基準GPT」は時間・労力を省いて保安基準を読み、開発に集中するための心強いパートナーになります。
おわりに
本記事では、手軽に試せるGPTsの機能を用いて作成した「保安基準GPT」について紹介しました。Turingアドベントカレンダーは12/25（月）まで続きます。ぜひ、これまでの記事も合わせてご覧ください。
Discussion
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