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Turingの自動車開発挑戦記

2023/10/11に公開

はじめに

Turing株式会社でVehicleチームエンジニアを務めている山口恭史です。

Turingは自動運転車を量産するメーカーになることを目指し、2025年に100台の車の販売・2030年には10,000台の車の量産・販売を目標に開発を進めています。私たちTuringは単に自動車を作って販売することは目標に掲げておらず、Turing独自の哲学を持った自動車を作り上げることを目指しています。自動車の内外装(インテリア・エクステリア)のデザイン・IVIシステムやHMIシステムを通したユーザ体験・そして自動運転機能。2025年・2030年という目標設定を考えても、非常にタイトなスケジュールですが、高品質な車を一般カスタマーに届けるために、日々業務を頑張っています。

この記事では私がTuringのVehicleチームでどんな役割を果たしているか、またどんなことに日々挑戦しているかを紹介していきたいと思います。また自動車開発に関する細かいシステム・設計に関する話は後続の記事でお届けする予定です。

Turingが車両開発能力を獲得するために

私が入社した時のTuringは車両開発組織の立ち上げ途中段階でした。優秀なAI・ソフトウェアエンジニアが集まっていた中で、彼らが形成してきたカルチャーや組織能力にうまく車両開発能力を足していくことが求められていたと思います。そこで私が着眼した点は大きく2つ。「車会社と技術的に対話可能にすること」「車基準の安全性と製品開発プロセスを導入していくこと」でした。

Turingが求める車とは何か?を言語化できたとします。ただ、それが車開発における適切な言語に置き換わっていないと車両開発を思ったように進めることができません。そしてそれはサプライヤ開拓に大きく影響します。独自の価値を生み出そうとしている会社だからこそ、その思想を車両に落とし込む翻訳機能が必要だと考えました。

また、車を製品として世に出すには法規認証・保安基準を達成すること。つまり高い安全性・基準を内包した車両開発プロセスの実装が大切です。車業界が長い時間をかけて構築してきた安全基準を、スタートアップが短期に獲得するのはかなり難しいです。そのため、早期に機能安全・安全認証獲得に向けて動きました。これからの章で詳しく説明していきます。

サプライヤの開拓

車はステアリング、ブレーキ、モーターやバッテリーといった基本機能を果たす部品が多く組み込まれ、多数のコンポーネントで構成されています。これらを一つの車両としてまとめるためには、多くの人々や企業の協力が不可欠です。我々Turingで開発・内製化する部品もあれば、部品メーカーであるサプライヤ様に協力を仰ぐ部品も多々あります。

Turingに入社したての頃、私がまず取り組んだのは、車両のシステム図の作成でした。これにより、我々の要望を取引先に的確に伝えられるようになりました。そして、このシステム図を携えて、Tier1サプライヤーさんを含む多くの企業様へと足を運び、我々の想いを伝え、部品の提供をお願いしました。今も、その活動は続いています。


NIDEC永守会長/小部社長にご挨拶させていただいた際の写真。サプライヤ様との関係作りは超大切です

我々がつくる完全自動運転EVは確定していない要素が多く、不確実性も高いため、社内外から情報をかき集め、海外競合他社の動向もリサーチしつつ、AIの指示に応じて動く車両のシステム図の初版を作成しました。もちろん一度完成すればおしまい、というわけではなく、細部にわたって考察・改訂を重ねています。

また車両を構築する中では、専門性が非常に高い工程や技術が求められる場面も沢山出てきます。

我々の持っている設備・技術では対応しきれない場面では、専門的なスキルを持つパートナー企業さまにもサポートしてもらっています。

このような努力を経て、TuringがデザインしたEVは、徐々に形になってきました。2023年10月には、ジャパンモビリティショーでTuringオリジナルのコンセプトカーを公開予定です。

コンセプトカー鋭意製作中


コンセプトカーで私有地テスト走行

また並行して2030年の量産化に向けた試作車開発にも取り組んでいます。

我々のビジョン・夢を形にするために、支援してくださる投資家の資金を使い、自動車の図面を起こし、サプライヤ様やパートナー様と連携して製品開発を進めています。

安全安心なクルマを作るための取り組み

Turingが現在の目標としているのは、安全で信頼性の高い完全自動運転EVの実現です。目指すのは、乗員がハンドル・アクセル・ブレーキを操作せずに車が運転できるもの。まるでプロのドライバーが運転しているかのような安心感を、我々の製品で提供する必要があります。

この安心感を実現するためには、車体や電子制御部品、そしてそれらを制御するECUのプログラムやハードウェアの開発・設計が不可欠です。基本的な「走る」「曲がる」「止まる」という動作は、細かな要件を洗い出して図面に落とし込む作業が求められます。そして、何らかの故障が生じた場合でも、システムがその故障を検出し、代わりの手段で安全な動きを維持するよう設計されていなければなりません。

安全に関する要件としては、SOTIF(Safety of the intended functionality; ISO 21448)や機能安全(ISO26262)といったものが国際標準で定められています。Turingでもこの国際標準に沿った製品とするための取り組みを行っており、第三者機関からの安全認証の取得を目指しています。

この「安全認証」ではTuring社内の開発プロセス・設計方法・さらには完成品そのものが安全かどうかが多面的に評価されます。開発・設計に携わる人間もミスすることがありますし、機械も時には故障します。製品の安全性を高めるためには、あえて冗長なシステムにする必要もあります。


Turing社内で冗長な制御システムの開発をしている様子

実際に第三者機関に開発現場を見てもらった際には、私たちが丁寧に取り組む姿勢を「地味に、でも地道に取り組んでいる」と評価してもらえたのは、本当に嬉しかったです。

この安全に関する取り組みに終わりはなく、プロセスとして常に継続していく必要があります。各部品には意味があり、それぞれに安全を考慮しつつ作成しています。そして、真の快適さはその次に訪れるものだと信じています。

また、Turingでは「安全第一」を会社のバリューに掲げています。

スピードが重視されるスタートアップの環境でも、車は人命に関わる製品であることから、すべての社員が安全に関する意識を持とうという社風にも繋がっています。

今回記載した安全認証は国際規格・標準に準拠しているかによって評価されます。しかしこの安全認証に満足せず、Turingでは安全への取り組みがモノづくりの基本だと捉え、安全な製品を世に出せるよう努力していきたいと思います。

また、ナンバー付きの車両を公道に送り出すためには、サイバー攻撃に対する強固なセキュリティが求められます。このためTuringではサイバーセキュリティの強化にも取り組んでいますが、それはまた別記事にまとめたいと思います。

おわりに

今回は車両設計に関わるVehicleチームの業務としてサプライヤさまとの関係構築の話・安心安全な車づくりの話を記載しました。

現在、Turingで車両設計に関わるエンジニアは約10名。大手メーカーならば、1つの部署に100名以上のスタッフがいることもざらです。

私たちはこのコンパクトな体制の中で全体戦略を練り、実際の製品開発を進めており、非常に濃密な時間を過ごしています。採用活動も活発化しており、これからの拡大を見越して新たな仲間も増やしていく予定です。

私たちの目指す完全自動運転車の基本機能、つまりAIの指示による「走る」「止まる」「曲がる」の基盤が徐々に形になってきました。この成果を基に、今後の成長を見据え、更に力強い組織作りを目指しています。
こんな刺激的なフィールドは、そうそうありません。一度、私たちの活動をのぞきに来てみませんか?
興味がある方は、Turing の公式 Web サイト採用情報などをご覧ください。話を聞きたいという方はCTOの青木さんの X(旧Twitter) DM からでもお気軽にご連絡ください。

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