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AI時代にスクラムガイドをそのまま運用するのは古いのでは?

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前提の整理

スクラムガイドは 「軽量で、最小限かつ十分(minimally-sufficient)なフレームワーク」 であり、各要素(役割・イベント・成果物)は“透明性・検査・適応”という経験主義を機能させるために存在しています。ガイドには次の記述があります。

  • 各要素はScrumに不可欠。要素を変更・省略すると価値が損なわれ、役に立たなくなる可能性がある
  • Scrumフレームワークは不変。部分導入は可能だが、それはScrumではない
  • 2020年版では“過度な規定を削り、最小限の枠組みに戻した”

つまり “追加は自由だが削除は自己責任” というのが公式スタンスです。

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「ガイドに従うだけ」は AI 時代のリスク

スクラムガイドは “不変” であると明言され、部分導入は「スクラムではない」と書かれています 。しかし 2025 年現在、LLM などの生成 AI が タスク記述・コード生成・テスト作成・会議議事録 を高速化し、「ガイドどおりの手順をただ回すだけ」の仕事は急速にコモディティ化しています。

置き換えが進む領域 具体例
要件細分化 AI がユーザーストーリーや受け入れ基準を草案
プランニング補助 相対見積・依存関係検知を自動計算
コード/テスト LLM による実装・単体テスト生成
儀式の記録 デイリーやレビューを文字起こし→要点抽出

→“人間が時給をかけて議事を読み上げるだけ” の工程は、最速で AI に置き換わります。

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深掘り ① — 何が「ムダ回し」になるのか

  1. 目的を忘れた定例
    「デイリーは 15 分だから守ろう」 が目的化すると、内容ゼロでも 15 分消化 → 生産性は純減。
  2. 非機能要件を伴わない Done
    PBI(完成の定義)が形骸化し「レビューで見せるためのインクリメント」を量産 → 早いが価値が薄い。
  3. フィードバック遅延
    スプリント長 2 週間固定 + レビューは対面のみ → SaaS では日次デプロイが常識なので遅すぎる。
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深掘り ② — 残る/伸ばすべき人間の仕事

領域 AI が苦手・人間が強い理由
価値仮説の検証 「作れば売れるか?」の不確実性はデータ+洞察が要る
倫理・責任 個人情報・安全規制の判断は組織の説明責任
利害調整/交渉 部門間の暗黙のルール・予算配分は文脈依存が大きい
創造性とストーリーテリング “プロダクトの未来像” を描くのは依然として人間
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深掘り ③ — AI 時代のスクラム指針

  1. イベント=仮説と捉える
    「このミーティングで ❶何が検査され ❷どう適応されるか」 を KPI として定量化。
  2. “AI オフロード” を常に検討
    • バックログ整形・重複検知 → GPT スクリプトで自動化
    • レトロの KPT 集計 → AI でクラスタリングして次回改善案に直結
  3. 同期の縮小、非同期+自動化の拡充
    デイリー:Slack スレッド+AI 要約 → ボトルネック検知だけを 5 分口頭で共有。
  4. PBI(完成の定義)を“機械で検証できる粒度”に更新
    静的解析・自動テストがパスしないとマージ不可=インクリメントの品質をコードで担保。
  5. 学習ループを Sprint より高速に
    実プロダクトに Feature Flag で即リリース → 計測できる運用データを AI が解析 → 次の PBI 候補を提案。
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メッセージ:「ガイド+問い直し+AI活用」こそ現代のスクラム

  • ガイドだけを守る → AI に代替されやすい儀式屋チームに転落。
  • ガイドをベースに仮説検証を最速化し、AI に雑務を渡して “人間が価値創造に集中” するチームが生き残る。
  • したがって “スクラムガイドをそのまま回せば OK” はすでに古い。 “ガイドを理解したうえで壊し続ける姿勢” が、AI 時代のベストプラクティスです。
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この主張が抱える主なリスク 3 点

課題 なぜ問題になるか 典型的な落とし穴
AIの適用可能範囲を過大評価しがち 生成AIが得意なのは“形式知”の自動化。
しかし、政治的調整・ステークホルダー交渉・非言語の場づくりなど「暗黙知が支配的な領域」は依然として人依存。
AI置換を過信すると、チームが共通理解・信頼関係を失う
「デイリーはBotで十分」と人間の対話をゼロに → 微細なニュアンスが共有されず品質低下
経験主義を崩す危険 スクラムのイベントは“検査→適応”サイクルを強制し、バイアスを抑える安全ネット。
不用意に削ると透明性が下がり、問題の早期検出が困難になる。AIログ分析だけでは組織の力学・心理的安全性を可視化しきれない。
スプリントレビューを隔回に短縮 → 経営層が現場の進捗感を失い、方向転換が遅れる
組織成熟度を無視した処方箋になりやすい ガイド破壊は「既にスクラムの原理を体で理解しているチーム」だからこそ有効。
成熟していない組織が形だけ省略すると 単なる“自己流ウォーターフォール” に逆戻りしやすい。
導入初期からデイリーを非同期Slackのみに → 若手が助けを求めづらくオンボーディング失敗

まとめ

  • AI活用で効率化は必須だが、人間同士の対話と透明性を削ると根本的な学習ループが壊れる。
  • スクラムを学び切った上での“意図的な逸脱” と、未成熟チームの“とりあえず省略” はまったく別物。
  • “壊す”前に 「価値仮説を検証する装置として機能しているか?」 を定量・定性の両面で測り続けることが安全策となる。