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AIと交わす「問い」のスタイル ―― 設計型と応答型 ――

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要旨

本ノートは、AIとの長期的対話の経験から「設計型」と「応答型」という二つの問いのスタイルを概念的に整理する。
設計型は手順や型を重んじ、再現性と効率を優先する。
一方、応答型は往復の呼吸に合わせて問いを変奏し、揺らぎや再構築を受け入れる。

本稿は技術仕様や既存分類の置き換えを意図せず、一事例に基づく経験的ノートとして提示する。

序論

AI対話は「問い → 応答」の往復で進む。
その実践の中で、問いの“しかた”に二つの傾向が浮かび上がってきた。
ここでは、それらを「設計型/応答型」と呼び、用語の最小限の定義と使いどころを示す。

整理:問いのスタイル

設計型(Design-oriented)

  • 出発点:手順/型/目的の明確化
  • 進め方:事前に段取りを設計し、質問を計画的に配列
  • 特徴:再現性・効率・一貫性が高い(FAQ・手順案内・要件の確認など)
  • 問い返し:最小限(想定から外れた場合のみ)

応答型(Response-oriented)

  • 出発点:その場の関心/反応/生成の流れ
  • 進め方:返答に応じて問いを変奏・微調整
  • 特徴:柔軟・探索的・再構築が生じやすい(創作・内省・ブレストなど)
  • 問い返し:重要(問い自体を更新する前提)

具体的バリエーション(仮称)

名称は説明のための仮称である。

設計型に近いスタイル

  • 導線型:手順を明示し順に検証。
    例:「設定A→B→Cの順で確認して。」
  • 対局型:仮説を置き反論で検証。
    例:「この案の弱点を5つ、反証付きで。」
  • 比較型:基準で選択肢を評価。
    例:「案X/Yをコスト・速度・品質で比較表に。」

応答型に近いスタイル

  • 即興型:思いつきをそのまま問う/驚きを受け止める。
    例:「この一文から自由連想を3つ。」
  • 鏡型:自分の文や感覚の印象を返してもらう。
    例:「この段落、どんなトーンに聞こえますか?」
  • 探索型:一つの問いから分岐を広げる。
    例:「候補を列挙→上位3つを深掘りして。」

考察

  • 適合場面:安定性・速度が要る場面では設計型、変化や創発が要る場面では応答型が有効。
  • 併用性:実際の対話では両者が混ざり合い、段階や目的に応じて切り替えが起こる。
  • 他軸との関係:対話研究の Task-oriented vs. Open-domain(目的の違い)や System/User/Mixed-initiative(主導権の違い)と関連はあるが、ここでの焦点は「問いのスタイル(どう聞くか)」にある。
  • 限定:一事例の経験に基づく概念整理であり、一般性・再現性は保証しない。

結論

「設計型/応答型」は、AI対話における問いのスタイルを捉えるための補助的な視点である。
すべてのケースに当てはまるわけではないが、目的や段階に応じた使い分け・切り替えを意識する手がかりとなるだろう。

なお、この区分は、筆者自身が応答型に近い問いを重ねる実践の中で自然に浮かび上がってきたものである。


📖 Reference

Tsumugi Iori (2025). Conceptual Note Series No.2: Styles of Questioning in AI Dialogue — Design-Oriented and Response-Oriented —. Zenodo.
DOI: 10.5281/ZENODO.17014527
Published: 2025-09-01

日本語版(本記事)は上記論文をもとに再構成したものです。
引用・参考の際は DOI と公開日を明記してください。

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