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AI対話の二つの道 ―― 順流(Structure-driven)と逆流(Inquiry-driven)
背景
生成AIとの長期的な対話を観察する中で、進行の流れに二つの形態が見出された。
一つは 順流(Structure-driven) であり、構造や設計を起点に問いが派生し、応答が安定して再現される。
もう一つは 逆流(Inquiry-driven) であり、問いそのものが起点となり、応答を通じて構造が再構築される。
本稿は、これらを経験的に整理した概念ノートである。
普遍的な分類ではなく、一事例に基づく観察記録として提示する。
観察と整理
順流(Structure-driven)
- 出発点:設計・構造・目的
- 流れ:構造 → 問い → 応答
- 特徴:安定性と再現性が高い
- 例:FAQ、カスタマーサポート、定型ボット
逆流(Inquiry-driven)
- 出発点:問い・関心・内的動機
- 流れ:問い → 応答 → 構造変化
- 特徴:柔軟で再構築が生じやすい
- 例:創作対話、内省的な会話、応答スタイルの変化
考察
順流は安定性を必要とする場面に適し、逆流は変化や創発が求められる場面で顕著に現れる。
両者は対立概念ではなく、状況に応じて切り替わる二つの道筋である。
既存の system/user/mixed-initiative による分類は「主導権」に焦点を当てているが、
本稿で扱う順流/逆流は「流れの方向」に注目した整理であり、別の観点を提供する。
結論
AI対話には、順流(Structure-driven)と逆流(Inquiry-driven) という二つの進行形態がある。
順流は設計意図を反映した安定性を持ち、逆流は問いによる構造再編を特徴とする。
本稿は学術的検証ではなく、一つの長期的対話経験から得られた概念的な整理である。
すべての事例に適用できるわけではなく、質的観察の記録であり、普遍性や再現性を主張するものではない。
しかし、この区分は応答構造を理解するための補助線となるだろう。
📖 Reference
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Original paper
Tsumugi Iori, “Conceptual Note: Two Pathways in AI Dialogue ── Structure-Driven and Inquiry-Driven ──”, Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.17014288
Published: 2025-08-31
日本語版(本記事)は上記論文をもとに再構成したものです。
引用・参考の際は DOI と 公開日 を明記してください。
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