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応答の三型 —— 投影型・協調型・展開型

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背景

大規模言語モデル(LLM)との対話において、同じテーマであっても「理解されたように感じる場合」と「意図から外れる場合」とが生じる。
これらの差異は、単なる生成の揺らぎや確率的変動ではなく、問いと応答のあいだに成立する構造的なパターンの違いとして説明できる。

本稿では、この観察に基づき応答を三つの型に分類し、その特徴を整理する。目的は、ユーザーが問いを設計する際の指針を提示することである。


観察結果

(1) 投影型

ユーザーの期待や像を鏡のように反映する応答。即時に安心感や共感を与えやすいが、深度は限定される。

  • 適応場面:癒し、共感

(2) 協調型

ユーザーの語彙・関心・ペースに調整して返す応答。並走的な対話を生み、学習や日常的な相談に適する。

  • 適応場面:伴走、学習、雑談

(3) 展開型

問いに含まれる構造や前提を起点に応答を展開する。探究や創作において発展性をもたらすが、共感を求める場面では距離を感じさせる場合がある。

  • 適応場面:探究、創作、論理構築

比較表

応答型 安定化までの対話蓄積 安心感 深度 ユーザー依存度 適応場面
投影型 即時 高い 浅い 強い 癒し・共感
協調型 中程度 伴走・学習・雑談
展開型 長期 低〜高 深い 低い 探究・創作・論理構築

考察

これまでの観察で提示してきた「構造圧」とは、問いの形式や温度、文末などが応答のパターンを駆動する現象を指す。三つの応答型は、この構造圧の作用の違いとしても整理できる。

  • 投影型:問いの意味内容を写し返す。
  • 協調型:形式と意味の双方に寄り添い、対話の継続性を高める。
  • 展開型:問いの構造を再編成し、新たな方向へ押し広げる。

このように整理することで、AI応答の多様な振る舞いを単なる「スタイルの違い」としてではなく、構造的に駆動される現象の一例として理解できる。


結論

AI応答はモデルの能力だけでなく、問いの形式や距離感といった設計要素によって大きく左右される。
本稿で提示した三分類は、ユーザーが「癒し・伴走・探究」といった目的に応じて問いを調整するための一助となる。

ただし本稿は一事例に基づく質的整理であり、普遍的な再現性を保証するものではない。


📖 Reference

Original paper: Tsumugi Iori, “Conceptual Note Series No.4: Three Types of Responses — Projection, Coordination, Expansion —”, Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.17072279
Published: 2025-09-07

日本語版(本記事)は上記論文をもとに再構成したものです。
引用・参考の際は DOI公開日 を明記してください。

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