円安の今こそAWS NAT Instancesをうまく使いこなそう at 2023年春
はじめに
皆様はAWSコスト削減について何か施策を行なっているでしょうか?
この記事を書いている2023年2月下旬は1ドル134円程度となっておりますが、2022年10月には一時1ドル150円を付ける場面もありました。
ドル円5年チャート
2018年~2020年くらいまでは1ドル100円程度であったことを考えると、単純にAWSをはじめとする米ドルベースで支払うサービスの料金が1.3~1.5倍程度になったということになります。
そんな状況下でAWSを利用する利用者としてはコスト削減をいかにして行うか...という悩みが増えてきているのでないかと考えております。
今回はそんな悩みを解消するために、1つのTipsを共有させていただこうと思います。
"NAT Gateways" or "NAT Instances" ???
さて、本題です。
今回は状況によっては NAT Gateways
と NAT Instances
をうまく使い分けることでコスト削減になるかもしれません...という内容になります。
"NAT Gateways" or "NAT Instances"の違いは・・・?
両者の違いについてはAWS 公式ドキュメント Compare NAT Gateways and NAT Instancesに記載があります。
このドキュメントに記載されていないところで違う点を思いつく限り挙げてみます。
属性 | NAT Gateways | NAT Instances |
---|---|---|
停止 | 不可。 常時起動。利用時に都度作成することも可能だが、やや煩雑。 |
可能。 停止することでインスタンス料金の削減が見込める。 |
同一宛先への同時接続数 | 55,000 ~ 440,000 (紐づけるIPによって変動) |
インスタンスタイプによって変動。 (EIP * エフェメラルポート数) |
料金観点で見た "NAT Gateways", "NAT Instances"
今回は以下の前提をおいた上で両者の料金を比較してみましょう。
前提
- 東京リージョン
- 停止はしない
- インターネットへの通信量は1000GB/月
- 1ヶ月あたりの料金を試算(730時間換算)
- 冗長化は行わない
- NAT Instancesのインスタンスタイプはオンデマンドt4g.small or c6gn.16xlarge(Amazon Linux2, gp3 8GB)
- c6gn.16xlargeインスタンスはネットワークパフォーマンスが100Gbps(インターネット通信時はマルチフローで最大50Gbps)あるので比較対象として選定
比較結果(概算)
課金項目 | NAT Gateways | NAT Instance (t4g.small) |
NAT Instance (c6gn.16xlarge) |
---|---|---|---|
ゲートウェイ利用 | $45.26 | - | - |
インスタンス利用 | - | $15.76 | $2,546.24 |
ディスク | - | $0.77 | $0.77 |
データ処理 | $62.00 | - | - |
通信量 Internet-Out |
$114.00 | $114.00 | $114.00 |
合計 | $221.26 | $130.53 | $2,661.01 |
いかがでしょうか?
単純な料金だけの比較だと NAT Instances(t4g.small)を利用することで 40%強の利用料削減ができます。
しかも、EC2のページに以下記載の通り、t4g.small インスタンスは2023年12月31日まで実質無料になります!!!
Free Trial: Try Amazon EC2 t4g.small instances powered by AWS Graviton2 processors free for up to 750 hours / month until Dec 31st 2023. Refer to the FAQ for additional details.
"NAT Gateways", "NAT Instances"の使い分け方法は...?
NAT Gatewaysの利用を検討するパターン
- 50Gbpsのような太い帯域が必要な場合
- NAT Instancesを利用するとインスタンス料金が爆増するため
- 本番環境などで可用性が求められる場合
- NAT GatewaysはAWS側で冗長化してくれているため
- メンテナンスコストをかけられない場合
- 構築を含むメンテナンスはNAT Gatewaysが圧倒的に楽なため
NAT Instancesの利用を検討するパターン
- 最大5Gbps程度の帯域で十分な場合
- NAT Gatewaysは最大100Gbpsまで帯域拡張するが、NAT Instancesはインスタンスの大きさで帯域幅が変わるため
- 検証環境や個人利用環境などで可用性が求められない場合
- 最悪、NAT Instancesが止まっても直せばいい
- どうしてもコストを抑えたい場合
- 単純な料金だけ見るとNAT Instancesに軍配が上がる
おわりに
今回はAWSのコスト削減についてTipsを共有してみました。
2022年は急激な円安が進み、日本全国のAWSコストを管理する人たちは悲鳴をあげていたのではないかと推察しております。
そんな方達に向けて、微力ですが助けになれば...と思い今回の記事を執筆いたしました。
また、今回の記事を読んでくださった方がAWSのコスト削減やネットワークに少しでも興味を持ってくれたなら最高に嬉しいです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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