AWS Billing and Cost Management MCP serverを早速使ってみた
こんにちは、ツクリンクでSREエンジニアをやってるida.です。
先日AWSより AWS Billing and Cost Management MCP server が発表されました。
ツクリンクのSREチームもコスト分析や監視を行っているので、実際に基本的な使い方を試してみたので紹介しようと思います。
なお、今回はClaude Codeで利用してみました。理由として、ツクリンクでは定期的にコスト監視を行っているので今後Claude Codeのカスタムスラッシュコマンドを用意して自動化しようと考えているためです。
AWS Billing and Cost Management MCP serverについて
AWS Billing and Cost Management MCP serverは、AWSのコスト管理と最適化を支援するための強力なツールです。従来はAWSコンソールやAWS CLIで個別に実行していたコスト分析が、Visual Studio CodeやClaude Desktop等のIDEで自然言語を使って簡単に実行できるようになります。
主な機能
1. AWSコストと使用状況の分析
サービス、リージョン、アカウント等のディメンションごとにAWSのコストを詳細に分析できます。例えば、「先月のEC2のコストをリージョン別に教えて」といった自然言語での質問に対して、具体的なコストデータをグラフやテーブル形式で表示してくれます。
2. 任意の期間のコスト比較
AWS Cost Explorerの機能を活用して、2つの期間のコストを比較し変化やトレンドを特定できます。「今月と先月のコストを比較して」と質問すると、コスト増減の要因を自動的に分析し、上位10件の最も重要なコスト変動要因を特定してくれます。
3. 将来のコスト予測
過去の使用パターンに基づいてコスト予測を生成し、80%または95%の信頼区間で予測を提供します。日次および月次の予測粒度をサポートしており、予算計画や将来のAWS支出の予測に役立ちます。
4. 新しいワークロードのコスト推定
特定のAWSサービスの利用量を入力することで、月次コストの見積もりが可能です。
新規開発や構成変更時のコスト計算に役立ち、予算計画や技術選択の判断材料として活用できます。
MCPサーバの詳細は以下に記載されています。
紹介した機能の他にもコスト最適化のレコメンドやS3Lensを用いたS3の分析、Graviton移行分析といったこともできるようでSREタスクに大きく貢献しそうなMCPサーバになっています。
セットアップ
MCPサーバを利用するにはuvコマンドとpythonが必要です。
また、今回はMac端末で利用しています。Windows利用者は適宜読み替えてお試しください。
- uvコマンドのインストール
以下のコマンドを実行しuvコマンドをインストールします。curl -LsSf https://astral.sh/uv/install.sh | sh
- Pythonをインストール
Macは標準でPythonがインストールされてますし、AWS CLIでも必要なので基本入ってるかと思いますが3.10移行である必要があるので古い方はアップデートしてください。brew install python
- AWSクレデンシャルを設定
AWS CLIを利用している方は基本セットアップ済みかと思いますが、未セットアップの方はaws configure
等でセットアップしてください。もちろんですがBilling and Cost Management への権限が必要です。
(ここでは焦点じゃないので詳細な手順は今回は割愛します。)
- 利用したいツールでMCPサーバーをインストールしてください。
今回は.mcp.json
に以下を追加しました。{ "mcpServers": { "awslabs.billing-cost-management-mcp-server": { "command": "uvx", "args": [ "awslabs.billing-cost-management-mcp-server@latest" ], "env": { "FASTMCP_LOG_LEVEL": "ERROR", "AWS_PROFILE": "your-aws-profile", "AWS_REGION": "us-east-1" }, "disabled": false, "autoApprove": [] } } }
以上でセットアップは完了です。
MCPサーバーが読み込めるかClaude Codeを起動して読み込めるか確認します。
> Billing and Cost Management MCP serverは利用可能ですか
⏺ はい、AWS Billing and Cost Management MCP サーバーが利用可能です。
利用可能なツール:
- cost-explorer: コスト・使用量データの分析
- compute-optimizer: パフォーマンス最適化推奨事項
- cost-optimization: コスト最適化推奨事項
- storage-lens: S3 Storage Lens メトリクス
- aws-pricing: AWS サービス料金情報
- budgets: 予算情報の取得
- cost-anomaly: コスト異常の検出
- cost-comparison: 期間別コスト比較
どのような分析をお手伝いしましょうか?
早速使ってみる
今回は社内のサンドボックス環境に繋いで使ってみました。
使用状況の分析
まずは「先月のコストを分析してください」と雑に投げて分析してもらいます。
回答はこちらです。実際の請求とも一致していていい感じです。
⏺ 先月(2025年7月)のAWSコスト分析結果:
主要コスト構成
- EC2関連(最大の支出): Compute + Other で約 $146.15/月(約28.6%)
- Amazon ECS: $55.11/月(約10.8%)
- Amazon RDS: $60.79/月(約11.9%)
- Amazon S3: $62.31/月(約12.2%)
- Amazon CloudWatch: $40.68/月(約8.0%)
- AWS WAF: $35.04/月(約6.9%)
- Amazon CloudFront: $26.50/月(約5.2%)
- AWS Lambda: $10.87/月(約2.1%)
特筆すべき項目
1. Amazon OpenSearch Service: 7/10から開始、約$22.16の新規利用
2. Amazon Bedrock: Claude 3.5/3.7 Sonnet の使用で約$0.35
3. Amazon Q: 固定$0.61/日の利用
コスト傾向
- 税金: 7/1に$52.6の一時的な請求あり
- データ転送: マイナス値による調整が7月後半に発生
- 全体の月額費用: 約$511.8(税金等除く)
AWS環境は主にコンテナ(ECS)とEC2での運用、データベース(RDS)、ストレージ(S3)、CDN(CloudFront)が中心となっており、
新たにOpenSearchとBedrockサービスが追加されています。
任意の期間でのコスト比較
次は期間間でのコスト比較をやってみます。
「今月と先月のコストを比較して。新規追加項目や極端に増加傾向にあるものがあれば教えて」と投げて結果を確認します。
回答はこちらです。
ちょうど今月から生成AI系のPoCをこの環境で実施し始めたのですが見事に反映されてます。急増やスパイクも検出できていていい感じです。
⏺ 今月(8月)と先月(7月)のコスト比較分析:
新規サービス(今月から利用開始)
1. Amazon Lex: 8/5から開始 - 約$0.08/月(会話型AI)
2. AWS Support (Business): 8/13から $28.43(ビジネスサポート契約)
著しい増加項目
1. Claude Sonnet 4(Bedrock): 先月$0.35 → 今月 $486.93 (約1390倍増)
- 8/1: $17.00
- 8/4: $27.36 (ピーク: 8/15 $66.02)
- 重要な用途拡大を示唆
2. Amazon RDS: 先月$60.79 → 今月 $103.01 (約70%増)
- 8/21から急増($6.43 → 通常の$2.77から倍増)
3. AWS Lambda: 先月$10.87 → 今月 $8.93 (比較的安定)
- 8/17-19に一時的なスパイクあり(最大$0.44/日)
新規登場のBedrockモデル
- Claude 3.5 Haiku: 約$3.72/月(軽量版)
- Claude 3.7 Sonnet: 約$12.36/月(中級版)
- Claude 3.5 Sonnet v2: 少量利用
その他の変化
- Amazon OpenSearch Service: 7月途中で廃止 → 8/25に再開($4.75)
- AWS Secrets Manager: 8月から本格運用開始(~$0.63/月)
コスト影響分析
- Bedrock利用の急激な拡大が今月最大のコスト要因
- RDSの増加は新たなデータベース要件やスケーリングを示唆
- 全体として7月の約$512から8月は 約$750以上への増加傾向
今月は特にAIサービス(Bedrock)への投資が大幅に拡大していることが最大の特徴/resumeです。
将来のコスト予測
「今年の請求をもとに12月までの年間コストを予測してください」と投げて回答を確認します。
こちらは結果の詳細は長くなるので控えますが1月~8月のデータを取得・分析して12月までのコスト予測を出してくれました。
予測は、能動的に保守的予測、現実的予測、積極的予測と3パターンを出してくれました。また、主要予測要員も説明くれて概ね納得できる内容でした。
参考として予測の部分だけ抜粋して紹介します。
🎯 年末予測シナリオ
🟢 保守的予測 ($10,800/年):
- 9-12月: $900/月平均
- Bedrock成長率: 月20%
- 年末月額: $1,100
🟡 現実的予測 ($12,500/年):
- 9-12月: $1,000/月平均
- Bedrock成長率: 月30%
- 年末月額: $1,350
🔴 積極的予測 ($15,000/年):
- 9-12月: $1,250/月平均
- Bedrock成長率: 月50%
- 年末月額: $1,800
次年度の開発計画をインプットに与えて予測してもらうことで予算策定にも使えそうだなと思いました。
新しいワークロードのコスト推定
こちらは新規開発計画のコスト見積もりに使えそうですね。
試しに「東京リージョンでLexを利用予定で、月間10万リクエストを想定しています。月間コストを予測してください。」と投げて回答を確認します。
回答はこちらです。
Lexにはテキストリクエストと音声リクエストがあるのですが、それぞれの場合と、混合の場合で予測を出してくれました。今後の新規開発の際に見積もりが楽になりそうな気がしました。
⏺ 月間10万リクエストでのAmazon Lex料金予測(東京リージョン):
無料利用枠適用後の課金対象
- テキストリクエスト: 90,000回(100,000 - 10,000無料枠)
- 音声リクエスト: 95,000回(100,000 - 5,000無料枠)
シナリオ別月額コスト
1. 全てテキストリクエストの場合
90,000回 × $0.00075 = $67.50/月
2. 全て音声リクエストの場合
95,000回 × $0.004 = $380.00/月
3. 混在ケース(テキスト70% / 音声30%)
テキスト: 70,000回 × $0.00075 = $52.50
音声: 30,000回 × $0.004 = $120.00
合計: $172.50/月
推奨予算
- テキスト中心: $70-80/月
- 音声中心: $380-400/月
- 混在利用: $150-200/月
注意: 初年度のみ無料枠適用。2年目以降は全リクエストが課金対象となり、上記金額に約10-15%追加されます。
おわりに
今回はAWS Billing and Cost Management MCP serverを実際に使ってみて、その機能や使用感を紹介しました。
自然言語でコスト分析や予測ができることで、AWS Cost Explorerの操作に慣れていなくても簡単にコスト分析が行えるようになります。SREとしてコスト最適化の観点からも、コスト分析や予測が簡単にできるようになるのは嬉しいですね。
特に便利だと感じたのは、期間比較での急増や新規追加項目の検出です。これまでは手動でExplorerを操作してコスト変動を確認していましたが、自然言語で質問するだけで詳細な分析結果が得られるので、日常的なコスト監視業務が効率化されそうです。
ツクリンクでも今後、カスタムスラッシュコマンドを活用してコスト監視の自動化を進めていく予定です。同じような課題をお持ちの方は、ぜひお試しください。
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