成長したいエンジニアのための目標設定入門
ごきげんよう🙋♀️あっきー(@kuronekopunk)です。
目標設定は好きですか?
この記事は、エンジニア組織向けに実施した『目標設定入門』というトークを再構成した内容となっています。
この話を通して、以下のことを期待しています。
- 目標設定と運用の具体的なイメージができる
- 目標設定のことをポジティブに感じる
ツクリンクの評価制度について
ツクリンクでは『GSFB(ゴールセッティングフィードバック)』という評価制度を設けています。
概要
会社の年間目標と部署毎の戦略に紐づいたマネージャーからの期待値に対して、メンバーは自律的に目標設定をし、実績に照らし合わせたメンバーとマネージャー双方間のコミュニケーションで建設的なフィードバックを行う。
半期毎に昇給額を決定する。方針
一人ひとりの成長が必要不可欠なフェーズ。それに応じた目標設定に
- 会社目標に紐づいた部署毎の戦略・目標と個人の目標がリンクし、それを各自が理解するよう支援する。
- フィードバックで各自の良い点・改善点が明確となり、成長を促進させる=会社の成長となる。
- 成果目標だけでなく Origin (ツクリンクの価値観) を含めた目標設定とフィードバックをする。
出典: ツクリンク会社説明資料
会社や部署が目指す方向と、メンバー一人ひとりの目標をしっかり繋ぎ合わせ、一方的な「評価」ではなく、対話によるフィードバックを繰り返すことで、お互いの成長を支援していく仕組みです。
また命名にもフィードバックと入っていることから目標設定とフィードバックを大事にしていることがわかります。
個々人の成長が、会社の成長に直接つながるからこそ、「評価」ではなく「フィードバック」という言葉が使われています。
目標設定とは?
1950年代にドラッカーが 『Management By Objectives and Self-control (目標による管理と自己統制)』を提唱しました。
「MBO」という単語だけで語られがちですが、「Self-control」とセットになっています。
MBO以前は、上から決められたノルマをこなすことが仕事だったところから、MBOのように自分で目標を決め取り組むことでより主体性を持って業務に取り組めるようになるという考えが生まれました。
目標は行動変容が起こるもの
全ての仕事は組織として何かしらの成果を出すためのものです。目標設定も同じで、目標を立てても成果が上がらなければ時間の無駄です。
つまり今までと同じ作業をした積み上げの結果が目標になっていては目標を立てた意味がありません。
目標を立てたことで行動変容が起こればそれは良い目標だと言えます。
例えば「エベレストに登る」を目標にすると日本で簡単な登山をしていた時には考えなかったエベレスト登頂のために必要な装備や知識、トレーニングなどを調べ実践すると思います。そういったビジョナリーで記憶に残り、ワクワクする目標が立てられると勝手に行動は変わってきます。
行動変容が起こる目標の立て方
個人の「やりたい」を直接会社の目標にするには難しいケースは多いです。
例えば「すごいエンジニアになりたい」という場合、「この会社で成果の出せる、有名なプログラマになる」という接頭辞をつけて考えてみたり、「すごいエンジニア」を因数分解して、すごいエンジニアなら会社でこんな成果を出しているはず、という課題解決の目標を立てることもできます。
「有名なプログラマなら会社でこんな成果を出しているはず」という考えが出た時点で、既に行動変容は始まっているとも言えそうです。
逆に「ありたい姿」「やりたいこと」に具体的なイメージが持てない場合、現在の仕事や興味関心から少し深ぼるか広げた領域のステップアップを目標に置くことが多いです。ここでも行動変容が起こることを念頭に、現状維持にならない視点での目標が必要です。一人で考えても幅が広がりづらいため、他者との対話の中で見つかることも多いです。
大きく分けて以下の2パターンが存在します。
- 目標逆算型: Will-Can-Mustフレームワークで、理想の未来から現在地までの道筋を描く
- 積み上げ型: 現在の興味・関心を起点に、会社のグレード制度などを参考に、一歩ずつ着実にステップアップする道筋を描く
目標設定と査定
目標が会社の評価制度・査定と紐づくと給与を上げるため、目標を低く設定するなどハックする動機が生まれてしまいます。こうしたハックされた目標設定は前述の行動変容は起こらないどころか置きにいった目標のため成果自体も低くなってしまいます。
ハックできたとしても、ハックできる可能性を考えること自体が行動変容になっていると考えられます。
例えば、『この指標を上げれば評価されるが、本来の事業貢献には繋がらない』という“ハック”に気づくこと自体が、より本質的なKPIは何か、事業貢献とは何かを深く考えるきっかけになり得ます。
別の観点として、そもそも目標の達成度だけで昇給が決まるわけでもありません。例えば会社の財務状況や、相対的な評価、目標外の振る舞いや成果などにも影響されます。また評価者も置きにいった目標はわかるので調整も入ります。
結果として、査定を意識しすぎた置いた目標設定は行動変容も起こらず、成果が出づらいので無意味となります。
フィードバックとは?
フィードバックは、単なるダメ出しではありません。
辞書の説明を確認してみましょう。
ある機構で、結果を原因側に戻すことで原因側を調節すること。
電気回路では出力による入力の自動調整機能、生体では代謝・内分泌の自己調節機能など。
出典:goo辞書
「結果の情報を受けて、調整すること」がフィードバックです。
良いフィードバックとは
原因側を調整できる適切な結果情報が良いフィードバックになります。
SBIモデルを活用すると良いフィードバックになります。(書籍フィードバック入門より)
SBIモデルとは、Situation(状況)を明確に把握し、対象者のBehavior(行動)によって起こされたImpact(影響)を説明するためのモデルです。SBI情報を伝えると客観的かつ受け手にとって有用なフィードバックになります。
例:
「昨日の会議で(状況)、ずっと横を向いていたので(振る舞い)、作業中かと思い話を振れず意見をもらえなかった(結果)」
このように伝えられると、客観的な事実として受け止めやすく、次の行動に活かしやすいです。
フィードバックを得るには
フィードバックは待っているだけでは得られづらいです。1on1や日々のコミュニケーションの中で、「何かフィードバックはありますか?」と、ぜひ積極的に自分から取りに行ってみてください。またフィードバックをもらうための関係性づくりも重要になってきます。
フィードバックを得るには、自分がフィードバックを得やすいコーチャブルな状態を作ることと、フィードバックをくれる方との関係性を作ったうえで積極的にフィードバックを貰いに行くことが大切です。
フィードバックをされない自己改善に注意
フィードバックをもらわずに、内省だけの改善は注意が必要です。
外的自己認識(他者からの見え方)とは違う誤った内的自己認識から誤った改善施策をしてしまうこともあります。また自分に対してなぜなぜ分析をすることはオススメしません。なぜなぜ分析は仕組みにやるものであって、人間に対してすると「自分が悪かった」といった方向に流れやすいです。実施するのであれば自身を切り離し人間性などに寄らない分析をする必要があります。
目標の自己評価、ふりかえり
四半期や半期、通期ごとに行う自己評価も、ただの反省文ではありません。
目標への取り組みや結果のフィードバックを得て、原因側を調整して行動変容を起こすものが自己評価やふりかえりです。
自己評価は職務経歴書のように
評価・査定の文脈も含まれるため、自身の成果が適切に見える化されていることも大切です。
目標にしていない項目や実績も含め、自身の仕事や結果を分かりやすくまとめる必要があります。
自己評価、ふりかえりには以下を客観的に、そして分かりやすくまとめることが大切です。
- どんな課題があったか
- 自分はどう考え、どう行動したか
- その結果、どんな成果が出たか
- 学んだことや次回に生かせる改善点はあるか
この内容は職務経歴書に近いものがあります。
エンジニア採用の中で多くの職務経歴書を見てきましたが、ただ実施した業務内容が書いてあるだけでなく、上記の内容が書いてあるとその人の志向性や行動や成果が伝わります。
職務経歴書を作るという考えで自己評価を記載することでより質の高い自己評価が書けるとともに、四半期ごとに自身の職務経歴書をアップデートすることができます。
目標設定の話に戻りますが、逆に職務経歴書に書いてあると価値のある実績を作ることを目標にすることも成果を出すという観点では有効になると思います。
まとめ
目標設定は、管理や査定のためのものではなく、可能性を広げ成長を加速させるためのツールです。
- 行動が変わるような、ワクワクする目標を立てる
- 評価ではなく、フィードバックと捉える
- 積極的にフィードバックを取りにいく
- 自己評価は職務経歴書のように
この記事が目標設定に対するイメージを、少しでもポジティブに変えるきっかけになれると嬉しいです。
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