【Swift Concurrency】Delegate パターンを async な関数にする
Summary
- Delegate パターンなものを async な関数にブリッジっぽいことをしてみる
- async な関数で
withCheckedContinuation(function:_:)
を使い、その中で渡されるCheckedContinuation
をクラス等に保持する - 処理が終了した後は
CheckedContinuation.resume()
などを使って async な関数に値を返してあげる
Closure パターン(completionHandler など)の場合はこちら
Delegate パターンを async な関数にする
Swift 5.5 以降で導入される Concurrency、これを既存のプロジェクトで使用しようとするとき、しばらくは従来の completionHandler
等によるコールバックや、Delegate パターンによるイベント駆動なものと共存していくことがあるでしょう。
これを1つの async な関数にする方法の一例を見ていきます。
async な関数を用意する
まずは async な関数を用意しておきましょう。
import Foundation
class ViewModel: NSObject {
// Core NFC を使って電子マネーカードの残高を読み取る
func readBalance() async throws -> Int {
// ...
}
}
withCheckedContinuation(function:_:)
などを呼ぶ
この readBalance()
の中で withCheckedContinuation(function:_:)
か withCheckedThrowingContinuation(function:_:)
を呼び出し、それを return するようにします。両者の違いはエラーを投げるかそうでないかの違いです。これらは async な関数なので、await キーワードが必要になります。
import Foundation
class ViewModel: NSObject {
func readBalance() async throws -> Int {
return try await withCheckedThrowingContinuation { continuation in
// ...
}
}
}
CheckedContinuation
をクラス内に保持する
withCheckedContinuation(function:_:)
・withCheckedThrowingContinuation(function:_:)
のクロージャで得られた CheckedContinuation
をクラスに用意したプロパティに置いておきます。
今回は activeContinuation
という名前で、 readBalance()
の返り値の型である Int
と throw のための Error
をジェネリクスにあてています。
その後、Concurrency 導入前と同じようにイベントが発火するようなコードを書いていきます。
import Foundation
class ViewModel: NSObject {
private var activeContinuation: CheckedContinuation<Int, Error>?
private var session: NFCTagReaderSession?
func readBalance() async throws -> Int {
return try await withCheckedThrowingContinuation { continuation in
activeContinuation = continuation
// 以降は Concurrency 導入前と同じようなコード
session = NFCTagReaderSession(pollingOption: .iso18092, delegate: self)
session?.begin() // イベント発火
}
}
}
CheckedContinuation.resume()
などを呼ぶ
処理が終了したら 返す値を用意できた、またはエラーを返す準備ができたら、CheckedContinuation.resume(returning:)
や CheckedContinuation.resume(throwing:)
、CheckedContinuation.resume(with:)
などでそれらを返します。
ドキュメントにも記載がありますが、この resume
メソッドはプログラム中の全ての実行経路において必ず正確に1度だけ呼び出す必要があります。
resume
をメソッドを2回以上呼び出してしまうのは未定義の動作で、逆に1度も呼ばなければ今作っている async な関数が全く再開されない状態となってしまいます。
今回の記事で使用している CheckedContinuation
はこの resume
が呼び出されている・呼び出し忘れているという操作についてランタイムでチェックしてくれるようになっています。一応このランタイムでのチェックを行わない UnsafeContinuation
も用意されていますが、これを使うのはパフォーマンスを非常に重視する場合などに限定し、テストでしっかりと網羅されているか確かめる必要があります。
以下のコードでは resume
を呼び出した後に activeContinuation
に nil
を入れることできちんと破棄し、 resume
が誤って2回以上呼び出そうとしても問題ないようにしています。
import CoreNFC
extension Hoge: NFCTagReaderSessionDelegate {
func tagReaderSessionDidBecomeActive(_ session: NFCTagReaderSession) {
// 今回は使用しない
}
func tagReaderSession(_ session: NFCTagReaderSession, didInvalidateWithError error: Error) {
// エラーが起きるとこのメソッドが呼ばれる
activeContinuation?.resume(throwing: error)
activeContinuation = nil
}
func tagReaderSession(_ session: NFCTagReaderSession, didDetect tags: [NFCTag]) {
// 正常なら(この場合は電子マネーカードを検出できたら)このメソッドが呼ばれる
// 電子マネーカード読み取りの実装は省略
// `balance` に `Int` で残高を入れた想定
activeContinuation?.resume(returning: balance)
activeContinuation = nil
}
}
完成した async な関数を呼び出してみる
以上で async な関数が完成しました。これを呼び出してみましょう。
今回作った readBalance()
は async
であり throws
なので、使う側では try await
キーワードが必要となります。
Concurrency がサポートされていない場所で呼び出したい場合は Task.init(priority:operation:)
で囲みます。
Task {
do {
let balance = try await viewModel.readBalance()
print("残高:", balance)
} catch {
print(error.localizedDescription)
}
}
resume
と保持した CheckedContinuation
の破棄を忘れずに
これまでの completionHandler
等によるコールバックや Delegate パターンでは、例えば値を取得したはいいもののそれらを元の処理に返すのを忘れてしまった場合、コンパイルエラーとはならず気づきにくい処理漏れとなることがありました。
しかし、これら Swift Concurrency の仕組みによってその心配が少なくなろうとしています。Apple が用意した Framework の多くは Interoperability with Objective-C の仕組みによって async への対応がなされているかと思いますが、そうでないクロージャを使うパターン、Delegate パターンでは、自分で CheckedContinuation
等の仕組みを使って async にできることが分かりました。
この自前対応の場合は resume
と保持した CheckedContinuation
の破棄を忘れずに行いましょう。
【おまけ】 Xcode 13.2 以降でのみ使えるようにする
今回作った readBalance()
は、このままだと Xcode 13.0、Xcode 13.1 でもビルドしようとしてしまい、「withCheckedThrowingContinuation(function:_:)
とか Concurrency は iOS 15.0 以降でしか使えないよ!」というエラーが出てしまいます。
そこで、Xcode 13.2 の Swift コンパイラが 5.5.2 であることを利用し、以下のように記述することで Xcode 13.2 以降でのみビルドできるようにします。
import Foundation
#if compiler(>=5.5.2) && canImport(_Concurrency)
class ViewModel: NSObject {
private var activeContinuation: CheckedContinuation<Int, Error>?
private var session: NFCTagReaderSession?
func readBalance() async throws -> Int {
return try await withCheckedThrowingContinuation { continuation in
activeContinuation = continuation
// 以降は Concurrency 導入前と同じようなコード
session = NFCTagReaderSession(pollingOption: .iso18092, delegate: self)
session?.begin() // イベント発火
}
}
}
#endif
サンプルコード
参考
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