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US配列 Dvorak配列 親指シフト などのキーボード配列の種類まとめ

2022/01/30に公開

US配列 Dvorak配列 親指シフト などのキーボード配列の種類まとめ

この記事は何?

タイトルを見て「US配列とDvorak配列と親指シフトは別のカテゴリでは?」と思ったあなたは正しいです。
この記事では「キーボード配列」や「キー配列」といった名前で紹介される概念について、それぞれの特徴の違いを解説します。

この記事で説明するキーボード配列

  • US配列/JIS配列
  • QWERTY配列/Dvorak配列/Colemak配列/Eucaryn配列
  • ローマ字配列/かな配列/親指シフト配列

この記事の対象読者

  • Dvorak配列や親指シフトなど、特殊なキーボード配列に興味を持った人
  • それぞれのキーボード配列がどういうものなのか理解があいまいな人
  • おすすめのキーボード配列が知りたい人

TL;DR

  • US配列 = ANSI配列 = ASCII配列 = 英字配列 = 英語配列
  • JIS配列 = 日本語配列
  • US配列/JIS配列 はアメリカと日本の標準規格で定められたキー配置のこと
  • Dvorak配列/Colemak配列/Eucaryn配列 は QWERTY配列 のキー配置を交換して作られた英字をより効率良く入力するための配列
  • ローマ字配列/かな配列/親指シフト配列 は全て日本語を入力するための配列
  • で、どの配列がいいの?
    • アプリケーションのショートカットキーはQWERTY配列が前提なので、日本語の文章を書くのがメインの人はQWERTY配列+好きな日本語入力配列を使うのがおすすめ
    • 筆者は https://github.com/toriwasa/akanarabe という自作配列を使ってる

US配列とJIS配列

市販されているキーボードの配列の種類としてよく出てくるのがUS配列とJIS配列です。
US配列やJIS配列と呼ばれるキーボードにはいくつかバリエーションが存在します。
ここではキーボード配列を知るために重要な3つを紹介します。

US配列:101キーボード

101キーボード

上記のUS配列はキーが101個あることから101キーボードと呼んで区別されます。

この後出てくるJIS配列も含めて、現在市販されているキーボードの配列はほとんどがこの101キーボード配列をベースに派生させたものと言えます。

ANSI: アメリカ規格協会(American National Standards Institute) という組織が統一規格を定めていて、
この配列にはANSI INCITS 154-1988 という規格番号が付けられています。

ANSIが定めた配列のためANSI配列と呼ばれることもあります。

また、US配列ではASCII文字が入力できるためASCII配列と呼ばれることもあります。

※ASCII文字: ここではASCII文字コードにおける印字可能文字 = 英数字+記号 のこと

ASCII文字が英字を含むことから英字配列英語配列と呼ばれることもあります。

上記のようにUS配列はかなり呼び名が多いです。
どれが正解という訳でもないですが、この記事ではUS配列と呼称します。

US配列:104キーボード

104キーボード

上記のUS配列はキーが104個あるため104キーボードと呼んで区別されます。
101キーボードに「Win」「Win」「App」の3キーが追加された配列です。

市販されているUS配列キーボードはこの104キーボードを派生させたような配列になっていることが多いです。

JIS配列:109キーボード

109キーボード

上記のJIS配列はキーが109個あることから109キーボードと呼んで区別されます。

JIS配列は上記のUS配列:104キーボードに「半角/全角」「変換」「無変換」「カタカナひらがな」「¥」の5つのキーが追加された配列です。
US配列とJIS配列では記号の配置が異なっているため、プログラミングをする際にはUS配列の方が便利!という紹介をされることがあります。

現在市販されている日本語キーボードの多くがこの配列をベースにしています。

JIS配列は JIS: 日本産業規格(Japanese Industrial Standards) という国家標準規格で定められた配列がベースとなっています。
ベースとなる配列には JIS X 6002-1980 という規格番号が付けられています。

ベースとなる配列がJISによって定められているため、上記のような配列をJIS配列と呼ぶことが多いです。
また、US配列を英語配列と呼ぶのと対比させて日本語配列と呼ぶこともあります。

小ネタ:109キーボードの規格について

実は JIS X 6002-1980 には「半角/全角」「変換」「無変換」「カタカナひらがな」といったキーは定義されていません。
上記のキーが定義された109キーボードは JIS X 6002-1980 をベースに更に派生した配列です。

OADG: PCオープン・アーキテクチャー推進協議会(PC Open Architecture Developers' Group) という団体が定めた OADG 109A 型 という標準規格が上記の配列となっています。

現在市販されているほとんどの日本語キーボードは OADG 109A 型を派生させたような配列になっています。

QWERTY配列とその仲間たち

QWERTY配列について

US配列もJIS配列も、記号の配置は少し異なりますが英数字の配置については同じです。
この英数字の配置のことを、キーボード左上の英字の並びからQWERTY配列と呼びます。

US配列もJIS配列も標準規格をベースにした配列のため、市販されているキーボードの配列はほとんどがQWERTY配列だと言えるでしょう。

QWERTY配列

QWERTY配列派生について

QWERTY配列は昔から使われていますが、普及しているからといって最も入力しやすい配列か?というとそうでもありません。
そこで、より入力しやすい配列を求めて英字+記号の配置を変更した配列が存在します。

Dvorak配列/Colemak配列/Eucalyn配列
といった配列は、上述したUS配列の英字+記号の 「キー配置」 を変更した配列です。

US配列のキーボードから英字+記号のキーを取り外して好きなように入れ替えたもの、と考えると良いでしょう。

Dvorak配列について

QWERTY配列の派生として最も有名だと思われる配列がDvorak配列です。

Dvorak配列

  • 母音を全て左に集めて左右交互に打鍵できるようにする
  • 英文で頻出するTやNは入力しやすいホームポジションの段に配置
  • カンマやピリオド、引用符などのよく使う記号はホームポジションの下段より入力しやすい上段に配置
  • 使用頻度の低い文字は入力しにくい下段に配置

といった工夫が行われています。

基本的には英文入力用ですが、母音が左に固まっているためローマ字入力が多少しやすいという利点があります。

Dvorak配列は ANSIでも ANSI INCITS 207-1991 という規格番号で規格化されていたりします。

Colemak配列について

Dvorak配列の次に有名であろうQWERTY配列の派生配列がColemak配列です。

Colemak配列

  • 英文で頻出する母音やT, Nは入力しやすいホームポジションの段に配置
  • ショートカットキーでよく使うキーはQWERTY配列と同じ場所に配置

と、Dvorak配列の良いところを残しつつ文章入力以外の利便性も担保するための配列です。

Eucalyn配列について

https://eucalyn.hatenadiary.jp/entry/about-eucalyn-layout
で提唱されている配列です。

Eucalyn配列

  • ローマ字入力時に頻出するT, K, S, Nといった子音を右手にまとめることで左右交互打鍵が発生しやすくする
  • ショートカットキーでよく使うキーはQWERTY配列と同じ場所に配置
  • vim等のエディタでカーソルキーとして使われるhjklは近い位置に配置

と、Colemak配列でやりたいことをプログラミングとローマ字入力に合わせてチューニングしたような配列です。

どうやってQWERTY配列派生のキーボードを作るのか?

QWERTYキーボードのキーキャップを取り外して交換するか、新しい文字のシールを貼り付けることで作ることができます。
ただしそのままでは当然ながら印字通りのキーが入力できません。

実際のキー入力を入れ替えるためには "DvorakJ" や "Powertoys Keyboard Manager" など、
QWERTYキーボードで入力したキーを別のキーとして扱わせるソフトを使うことになります。

QWERTY配列派生のメリット・デメリット

【メリット】

  • 既存のQWERTYキーボードのキーキャップを流用することができる
  • 日本語入力は慣れているローマ字入力をそのまま流用できるため、アルファベットと記号の位置さえ覚えれば良く学習が比較的簡単

【デメリット】

  • 大抵のアプリケーションのショートカットキーはQWERTY配列を前提としているため、非QWERTY配列を使うとショートカットキーが使いにくくなる
  • ショートカットキーが変更可能なアプリケーションであれば設定次第で解決できるが、それでも設定に手間がかかる

ローマ字配列とその仲間たち

ローマ字配列について

現在の日本でPCを使って日本語を入力する場合、大抵の人はローマ字入力を使用していると思います。

慣れている人にとっては意識せずに使えていますが、実のところローマ字入力ではキーボードに印字されていないひらがなを英字キーの組み合わせによって入力しています

ローマ字入力のようなひらがなを入力するためのキーの組み合わせ、つまりキーボード配列のことを 日本語入力配列 と呼びます。
また、ローマ字入力なのかローマ字配列なのか分かりにくいので以降の項目では 「ローマ字配列」 と呼びます。

かな配列について

JISかな配列

いわゆる「かな配列」として知られている配列は、JIS配列の項で説明した
JIS X 6002-1980 で定められたキーボード配列です。

英字とは全く関係なくキーボードにひらがなが配置されており、そのまま印字通りの文字を入力することができます。

一部の小文字はシフトキーと同時押しすることで入力できます。
たとえば 「ぁ」 は Shift+「あ」で入力できます。

上記のキーボード配置はJIS配列で定められたものなので 「JISかな配列」 と呼んで区別します。

JIS配列のことを「日本語配列」と呼ぶこともあるのでややこしいですが、
「JISかな配列」もひらがなを入力するための配列なので日本語入力配列の一つです。

日本語入力配列とは?

日本語を入力するためのキーボード配列であればどれでも 「日本語入力配列」 です。
ガラケーのトグル入力(あ行の文字を連打して目的のひらがなを出す方式)やスマホのフリック入力も 「日本語入力配列」 と言えます。
もちろんローマ字配列やJISかな配列も「日本語入力配列」です。

「ローマ字配列」「JISかな配列」「フリック入力」が有名すぎるため、これらをまとめて呼ぶ「日本語入力配列」というカテゴリ名は中々必要になりませんが、
実は上記以外にもひらがなをキーボードで入力するための配列があります。

大体の日本語入力配列はひらがなを入力後に「かな漢字変換」を行ってかな漢字交じりの文章にします。

世の中には漢字を直接入力していきなりかな漢字交じりの文章を作る漢直と呼ばれる配列もあったりしますが、これも「日本語入力配列」です。

日本語入力配列の検索性の悪さ

ローマ字配列とJISかな配列以外の 「日本語入力配列」 は様々な人が考案して公開していますが、

「◯◯という日本語入力のための配列を作りました」
「◯◯というカナ系配列を作りました」

といった公開文言になっており、ひらがなを入力するためのキーボード配列を統一して示す単語がなく検索するときに大変だったりします。

この記事ではそれらを統一して 「日本語入力配列」 と呼ぶことにしています。

親指シフト配列について

親指シフト

親指シフトはローマ字配列とJISかな配列以外の「日本語入力配列」で最も有名と思われる配列です。

親指シフト配列にはいくつかバリエーションがありますが、ここではNICOLA配列と呼ばれる配列を紹介します。

親指シフトは「親指左シフト」「親指右シフト」と言う2つの独自シフトキーを用意することで、

あるキーXを入力する際に

  • X
  • 親指左 + X
  • 親指右 + X

の3通りでそれぞれ別の文字を入力できるという発想を利用した配列です。

3通りの文字入力ができるという知識を持った状態で上の図を見れば概ね分かると思いますが、
たとえばQWERTY配列における「S」のキーはシフトキーとの組み合わせで

  • S -> し
  • 親指左 + S -> あ
  • 親指右 + S -> じ

のように3種類のひらがなを入力できます。

親指シフト配列の作り方

対応した文字のシールをキーボードに貼り付けることで作ることができます。
ただしそのままでは当然ながら印字通りのキーが入力できません。

実際のキー入力を入れ替えるためには "DvorakJ" などの
QWERTYキーボードで入力したキーを別のキーとして扱わせるソフトを使うことになります。

親指シフト配列のメリット・デメリット

【メリット】

  • ローマ字配列と比較して日本語入力で頻出する「か行・さ行・た行・ん」の文字を1キーで入力できるため一部の文字の入力時は打鍵数を減らせる
  • JISかな配列と比較して使用するキー数が少ないため手の移動量が少なくて済む
  • JISかな配列と比較して濁音・半濁音の文字を「し+゛」のように2キーで入力する必要がないので打鍵数が減る
  • 使用頻度の少ない濁音は清音と同じキーになっているため記憶コストが少ない

【デメリット】

  • 清音文字の配置に規則性がないため、どの位置にどの文字があるのかを覚えておくための記憶コストが高い
  • ローマ字配列だと「じゅ」は「ju」の2キー2打で入力できるが、親指シフト配列だとシフトキー含めて4キー2打が必要であり指の移動量が多い、などローマ字配列の方が入力しやすい文字もある
  • シフトキーを含めた入力に必要な総打鍵数を考えると文章全体でローマ字配列とそれほど差が出ないことが多い

親指シフト配列の派生

ここまで見てきたように、親指シフト配列とは独自シフトキーと独自キーマップを使ってひらがな入力を行う配列です。

キーの印字通りの入力でなくとも良いのであれば、NICOLA配列以外にも色々な日本語入力配列を考えることができそうです。

そう考える人はこれまでにたくさん存在したので、各々の考案者が独自シフトキーと独自キーマップを使って作成した「ぼくのかんがえたさいきょうの日本語入力配列」を公表しています。

参考: https://jisx6004.client.jp/layout.html

上記のページには2002年くらいからの自作日本語入力配列の例がたくさん記載されています。もはや歴史的資料。

どのキーボード配列を使うべきか?

ここまで色々な配列を見てきましたが、最後に「どのキーボード配列が良いのか?」について記載しておきます。

英語の文章をメインに入力する人であればまた別の結論になる可能性がありますが、
日本語の文章をメインに入力する人の場合、アプリケーションのショートカットキーのことを考えるとQWERTY以外のキー配置(Dvorak配列やColemak配列)にするのは弊害が大きいです。

日本語入力配列はQWERTY配列のままでも独自に作成することが可能なので、

個人的には
QWERTY配列 + なんらかの日本語入力配列
という組み合わせが最もバランス良く入力効率を高めることができると思います。

US配列とJIS配列のどちらを使うべきか

QWERTY配列でUS配列とJIS配列のどちらを使うべきかは好みですが、
個人的には日本語入力においては「変換」「無変換」キーでIMEのオン・オフが出来ると便利なのでJIS配列が好みです。

ただ、記号類はUS配列の配置の方が分かりやすいので「変換・無変換キーがあるUS配列」が最もオススメです。
まあそんなキーボードは自作しないと存在しないんですが……

こうして配列に興味を持つと自作キーボード沼にも沈んでいく訳ですね!

おすすめの日本語入力配列

上記のような内容をあれこれ考えた結果

あかならべ配列という日本語入力配列を作りました。

2022-01-30現在1年ほど使ってますがかなり使いやすいです。

良かったら試してみてください。

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