RPGツクールMV・MZでベストなキャラサイズを探る
ツクールフォーラムアドベントカレンダー Advent Calendar 2020 11日目の記事です。
前の記事は、アーヴェルさんの『スクリプトの知識がなくても、自分と一緒に簡単なプラグインを作ってみましょう!』です。
次の記事は、こまどり乳酸菌さん『プラグイン不要!意外と知られていない「メタデータ」の活用法』です。
『RPGツクールMV』と『RPGツクールMZ』の収録素材を改変して、三頭身の歩行グラフィック(以後ホコグラ)を地道に作っている、とんび@鳶嶋工房です。
ツクールに最初から入っている素材(以後収録素材)のキャラのサイズ感はどうにも使いづらく感じたので、改変キャラを作っているわけなのですが、なぜこのスタイルに落ち着いたかを語っていきます。
[2020-12-11]現在、作ったキャラ数はこんな感じで、その後キャラを追加してMZの収録素材をコンプリートしました。
キャラ素材はRPGツクール素材 ダウンロードのページで無料でダウンロードできます。
各キャラの元となったツクール製品のライセンスを持っていれば、RPG以外のものも含めたツクールシリーズで利用できます。
MV・MZの収録素材サイズの欠点とベストなサイズの考察について詳細は RPGツクールMVロングレビュー キャラ編 にも書きましたので、気になる方は参照してください。
[2021-12-04]pandaさんも、似た記事を公開しているので、気になる方はそちらもどうぞ。
※[2021-12-04]現在、(3)には続いてません。
収録素材の欠点をざっと挙げると
- 家具タイルと比べると、ホコグラのサイズが小さすぎる。
- ファミコン時代の頭身なのに、48×48ピクセルと解像度が高く色数も多いためアンバランス。
- 頭が大きすぎかつ手足が短すぎで、パターンを描いて演技させづらい。
- 首回りの衣服や髪は胴体とのサイズ境界が極端なため 不自然。
- 体が小さすぎて、複雑な服が表現できていない。
- ロングヘアのキャラは後ろからみると、毛の塊になってる。
- 上に余裕がないので三角帽子やツノなどの形が潰れている。
- 大型モンスターから子供まで、体格に違いがほとんどない。
- 壁などの後ろに回り込む場合、1タイル高さなのではみ出る部分が少なく見失いがち。
- デフォルメがきつく、シリアスなストーリーに向かない。
- 目が離れすぎ、目の光が弱く、口もないため若干不気味。
といったところ。
僕はキティちゃんがどうにも不気味に感じるタイプなので、同様に頭が横に大きく目が離れていて光がなく口がないMV・MZホコグラを不気味に感じるわけですが、キティちゃんを可愛いと思ってる人からは「可愛いじゃない」と一蹴されそうです。
収録素材の俺、そんな欠点あるかなぁ?
リアル頭身で縦に長い場合の問題
単純に現実と同じ6〜8頭身にすると現実との差が気になるようになり、次のような問題が発生します。
- 歩行アニメーションが標準3パターンだとガッタガタの動きに見える。
- 椅子に座った表現をする場合、立ったままだとかなり不自然に見える。
- ジャンプによる演出が極めて不自然。
- 待機状態の棒立ち感がすごいが足踏みさせても不自然。
- しらべる 時に対象が頭に近いか足に近い部分で判断されるのかわかりづらい。
- 隣のタイルだと会話する際に、あまりに近すぎる感覚を与える。
- 1タイルを超える高さだと縦に並んだ時に他のホコグラに被ってしまう。
- ひょろ長く貧相な印象を与える。
- 同じスケールのアイテムを置くと小さすぎてコインが1ドットみたいになる。
- といってアイテムを大きく描くと、リアリティが崩壊する。
パターンをたくさん作らないと不自然になるため、ホビー向けとしては制作コストが上がりすぎてよくない、という結論で良いと思います。
縦に長くなると1タイルを越えた時に背景との重ね合わせの問題が発生します。
しかし実は収録素材のホコグラも上に6ピクセルずらして表示してあるので2タイルにまたがっています。
そもそも重ね合わせの問題は発生するんですね。
頭を48ピクセルギリギリまで描いてはいないので、実際にはみ出るのはちょっぴり。
つまり48ピクセル*2タイル - 6ピクセル = 90ピクセル以内の高さであれば、収録素材のホコグラと同じ感覚で使えるということです。
※ちなみに、ホコグラファイル名の頭に!をつけると6ピクセルのずれはなくなります。また、タイルセット画像を指定した場合もずれません。
ダークファンタジー素材の三頭身ホコグラ
実は公式から三頭身のホコグラがリリースされています。
頭は収録素材をそのまま使って、体の方を三頭身になるように引き伸ばした素材です。
以後ダークファンタジーはDFと書きます。
この素材はMZの発売が発表される前にリリースされたので、てっきり次期ツクール(MZのことです)は三頭身を標準にすると思ったんですが違いましたね。
背景から類推するホコグラサイズ
ホビー制作における2DRPGにベストなホコグラのスタイルを考えると、正直MV・MZの収録素材の48ピクセルは解像度が高すぎて作るの大変です。
しかしエディタの制約やすでに用意されている背景画像を考えると、ここで16×24がベストサイズ!とか言い出しても、それが気軽に使える環境を整えるのに一生かかりかねません。
そこで背景画像はツクール標準のものを利用することを前提に、その中でベストなものを探りたいと思います。
- MV・MZ収録素材
- DF3頭身
- 1タイルに収めた2頭身
- 4頭身
- 7頭身
公式ホコグラ❶❷と、検証に当たり、ざっくり作ってみたホコグラ❸❹❺。
収録素材は家具の厚みがタイルの半分あるのが標準で、高さがタイル半分だと流し台や木箱になり、高さを1.5タイル分にすると本棚やタンスになる感じです。
収録素材のように1タイルに収まっているホコグラだと、流し台の下に肩がきますし、本棚の上の方に手が届きませんし、体短すぎてベッドの下半分まったく使ってません。
左収録素材ホコグラ、右改変ホコグラ
タイルに描かれた家具を使って生活するなら、ホコグラの身長は1.5タイルかそれより少し低いぐらいが適当と言えます。
そして本棚は横1×縦1.5×奥0.5の比率で作られていて、これ実際の家具と比較すると、ずんぐりむっくり感のあるサイズです。
つまり背景がデフォルメされているので、リアル頭身はその点からも無理があると言えます。
このデフォルメした家具に合わせると、頭身は2から4頭身程度が適当かと思います。
逆に収録素材のホコグラに家具を合わせると、棚の正面やベッドの上面は正方形に近くなります。
なぜか扉だけはホコグラに合わせて正方形なのですが、実際の扉は縦長なので、一瞬何が描かれているのかわからず混乱します。
ドア…なの‥‥かな?
人間はわりと縦横比率で物の種類を判断してたりするので、正方形は感覚が狂います。
このへんからも収録素材の頭身はデフォルメがキツすぎることがわかると思います。
採用したサイズ
といった考察を経て、身長は1.5タイルより少し低く、頭身は2から4頭身が適切なサイズだと判断しました。
標準の3パターンアニメでもガタガタ感は少なく、ジャンプなどのコミカルな演出でも許容され、あるていどシリアスなシナリオにも対応できそうと、上記の収録素材のデフォルメの欠点もリアル頭身の欠点も両方とも、ほぼ解消されるナイス頭身だと思います。
DF素材のサイズはこの範囲に収まった絶妙なサイズです。
よって素材はDF素材を基本にしてアレンジしすることにしました。
(正確には既に作っていたホコグラのサイズ感がDFと近かったので寄せました)
ちなみに3頭身素材セットとありますが実際は2頭身半程度です。
アレンジ箇所は
DF素材の頭は収録素材をそのまま使っているので、サイズ以外の問題は収録素材と同様なものが残っています。
そこで、頭を正面と背後のパターンから左右1ピクセルずつ削って、2ピクセル小さいサイズにしています。
正面の顔には口もつけています。
側面の方はキャラによって異なりますが、前髪部分を2ピクセル削るか、前髪1ピクセル後ろ髪1ピクセル削る感じにしています。
収録素材の素体でも大人と子供では身長が異なります(言われても気づかないぐらい微妙な差ですが…)。
せっかく縦に身長を伸ばしたので、大人と子供はもちろん、男女間でも微妙に身長差をつけました。
ちなみに女性キャラはだいたい内股気味にしています。
また、ミノタウロスなど大型のキャラは標準サイズよりも大きめに作りました。
各種素体
どうもツクールのキャラの製作過程は、
- 基準となる正面向きイラストが描かれる
- それを元にして別々の人が戦闘・歩行・サイドビューの画像を作成する
と言う流れのようです。
しかも各画像の製作者間で情報共有されてないようで、ぜんぶ解釈が異なります。
解釈の乱れが発生しないように、アニメの設定画のようにちゃんと三面図は作って欲しいなと思います。
その辺で生じた解釈の乱れを補正するような修正を適宜くわえています。
また、正面向きイラストにあるのにホコグラで消えているパーツが結構あります。
デフォルメする過程で省略されたものは致し方ありません。
ですがたとえば頭にリングをかぶっているのに、後ろ向きでは描かれていない、といった明らかなミスも散見されるので適宜補完しています。
他にも服飾・風俗的にないのではないか、と個人的に判断した部分も変更しています。
左収録素材、中DF素材、右改変素材。
公式素材は上部に余裕がなく、帽子などはつぶれがちなのでだいたい引き延ばしています。
あとは目を中心に立ち絵などのイラストの印象に近づけ、中高齢男性の目は可愛いテイストを落としています。
このへんになるともう90%の人は気にならないし、残りの5%ぐらいは元の方がよかったと思いそうな変更ですが(笑)
残りの5%の方、とくに自分自身に向けて変更しています!
他にも、細かな変更は多岐にわたります。
あと、DFの1パターンのサイズは64×64なんですが、縦の限界である90に対して少なく、横を全部使うとタイルをはみ出してしまい「塀の中に体がめり込む」などの不具合が出て使い勝手が良くありません。
そこで48×72のサイズを採用しました。縦は90にしてもよかったんですが、1.5タイルにあたる72の方が背景に対しては収まり良く描けます。
実際DFは横に余裕を持たせて64ピクセルにしてますが、48より外の領域を使っているキャラはほぼいないため、スッカスカで描きづらかったのです。縦も同様と考え、いるか要らないかわからない程度の余裕は排除し、72を採用しました。
左がDF、右が改変後。背景に色が付いている範囲が、1パターン当たりに使用できる面積。
これより大きなホコグラが必要な場合は特別にファイルを用意しても構わないだろうとの判断です。
収録素材ホコグラを改変するに当たり、現在まで48×72では足りないと思えるキャラは出てきていません。
周辺素材
重ね合わせに凝りだすと、どうしても不自然になってしまう箇所が出てくると思います(これは収録素材のホコグラでも同様です)
そんな時のためにタイルの前後で重ね合わせが変わる(昔のツクールの[△]設定)プラグインを用意しました。
三頭身ホコグラとともにお使いいただくと、何かと捗るでしょう。
なぜか標準で扉だけはホコグラサイズに合わせた正方形なので、扉だけ建物の中で別世界観があります。
他の背景(あるいは三頭身素材)に合わせたサイズのものを作ったので、これも合わせてご利用ください。
また彫像の類は、ホコグラのスタイルとまったく合ってなくてリアル頭身です。たいていの人はとくに気にならないようですが個人的には違和感があるので、女神(天使)像と骨格標本を作りました。
作り物なので、別にその世界のキャラの頭身と揃っている必要はないんですが、キャラと違う頭身だと「文化的に何か理由が?」などと余計なことを考え始めてしまうので、揃ってた方がいいと思います。
あと、タイルセットにある帽子や服などが収録素材のホコグラとはもちろん改変した三頭身ホコグラと比べても大きいのも気になりますが、今のところ手をつけていません。
おわりに
ゲームの画像は、現実に寄せてリアルであれば良いというものでもなく、記号化(デフォルメ)すれば良いというわけでもなく、それぞれのゲームの目指すところによってベストな表現は変わってくるものです。
しかしながら、『RPGツクールMV』『RPGツクールMZ』といった2DRPGというジャンルに特化した開発ツールであれば、必要とされる表現はかなり限定されてきます。
収録素材のホコグラはツクールに求められるターゲットを外していると感じたので、自分のゲームで使うために改変するついでに、同じように感じる人のために素材を公開しています。
ただ、同じように感じる人は自分でホコグラ描けることが多い気がするので、今ひとつ需要がどこにあるんだかわからない素材になっている感は否めません(笑)
それにそもそも自分のゲーム作れてないじゃん、というツッコミを食らうと「ぎゃふん」というしかありません。
あとキャラクター生成機能で作れないというのも、弱点ではあります。
実際にゲーム画面で使ってみたサンプルは作ったので、とりあえずそれで感じを掴んでみて、行けると思ったら是非皆さんのゲームでも使ってプリーズ。
あと、三頭身キャラを使って作られたゲームを紹介しておきます。
義務ではないですが、使ったゲームを公開された時は、ツイッターなどで教えていただけると嬉しいてす。
アリヒコットさんの
- 属性の相性でバトル (Win用)
僕が作ったゲームで三頭身のキャラを使っていますが、収録素材改変のキャラがほとんど出てこない(笑)
えーと、ちゃんと改変素材を使った自作ゲームを完成させるべく頑張ります!!
[2020-12-11] とんび@鳶嶋工房
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