Azureの知識地図 〜クラウドの基礎から実装・運用管理までを読んで
前提
これまでAzureの専門家としての書評が多く出されていますが、本稿はWeb開発者としての視点から取り上げています。
Web開発者としてもAzureを全く知らないわけにはいかず常にクラウドインフラのことを意識した開発をすることが必要です。
Web開発者としての立場でAzureの知識を習得する上でどれだけ助けになるのか?
また、とても重厚でとても読み切れないMicrosoft Learnを読み解く上でのとっかかりになるのか?
そのような視点で取り上げていこうと考えています。
クラウドサービスとAzureの基礎
クラウドサービスについて知ろう
Web開発者視点としてはプロジェクト初期においてプロジェクト計画を作成する上でCAFの存在はやはり無視できるものではなくこの内容について少し触れられているもののもう少し踏み込んだ内容であるとよかったなあという所感があります。
内容としてはCAFでいうクラウド導入の動機にあたる部分の概要について説明されているように思いました。
また、「サーバ」「サーバー」といった用語の不統一が見られることが読むにあたって残念なところでした。
Azureの基本を知ろう
開発者視点でいえば、Visual Studioからの連携機能について一言だけでも具体的に触れられているとよかったなという所感があります。
もちろん、時とともに機能が変化するので難しいところではありますが。。。。
AzureのPaaSを知ろう
Web上にアプリケーションを作りたい
おそらく、Web開発者において最重要のリソースの一つがApp Serviceになる。
ここで、App Service PlanとApp Serviceの関係を理解するところが一つの躓きポイントになるわけだがとてもわかりやすく解説されているのでお勧めできる。
また、可搬性を意識してコンテナーを選択することもある。そうしたとき、Azure App ServiceやContainer Instanceなどの機能の違いによってどのように選択したらいいかというのがわかりにくいことがある。このあたりも明瞭に説明されていることが開発者にとってとてもありがたいと感じた。
データを保存したい
ここでも一般的なアプリケーションを構築する上で一番迷うところでSQL DatabaseとSQL Managed Instanceの選択です。
ここでも、選択に関するドキュメントであったりヒントが示されているという点で有益と感じました。
たとえば、開発者目線でいえばオンプレからの移行でどうしてもデータベースをJSTで動作させる必要性があるようなときはSQL Managed Instanceを選択するということがドキュメントをたどると分かるようになっています。
また、ストレージアカウントの各ストレージ機能についてもユースケースが示されているのがうれしい。
分析をしたい
Service BusとEvent GridとEvent Hubsのユースケースの違いを示しているのはありがたい。
これはドキュメントを見てもなかなかわかりにくいところであるのでまとまった情報というのがありがたい。
セキュアなPaaS環境の構築
おそらく、開発者にとってこのあたりが一番なじみがない分野かなと思います。
オンプレ時代はインフラチームにお任せしていたとかキーなんかはべた書きしていたとかいうところであるのでこのあたりの考慮事項についてきちんと基本的な理解が得られるという意味でよいと思います。
アプリケーションの開発環境を知る
アプリケーションの開発環境としては開発者としてはほぼ既知の知識なのかなという感はあります。しかしながら、以外とクラウド開発初めてだという層にとってはCVSやSubversionなどのでのバージョン管理の概念はあってもCI/CDとかあたりの概念が抜け落ちていることがあるのでこのように網羅的に記述されていることはありがたいです。
Azureでシステムを構築・運用しよう
セキュリティ、ガバナンスを強化したい
おそらく、Azureをセキュアに運用しようとしたらそれぞれのリソースで提供されているキーではなくMicrosoft Entra IDによるマネージド認証を使うのがセオリーになっています。
開発者にとってはそうしたコードを書くのはきっと問題ないのでしょうがAzure側の設定をどうしたらいいの?って問題があります。まあまあわかりにくいってこともありますので仕組みベースで解説があるのがうれしいです。
Azureを実務で使うためのよくあるアーキテクチャを押さえる
いわゆる、CAFとW-AFについての解説です。
しかしながら、開発者というかプロジェクトを引っ張っていく開発の立場から言わせてもらうとCAFで一番大事なのは導入戦略のところです。
なんで、Azureなのか
費用対効果はどうなのか
などといったプロジェクト計画にかかるところをしつこく問われる立場故にもう少し導入戦略のところに触れてほしかったという思いはあります。
W-AFやアーキテクチャーセンターが便利なことは言うまでもありません。
やろうとしていることと近しいことを探し出し参考にすることでAzureインフラの設計の手間や考慮漏れを防ぎます。
まとめ
全体として、Azureというとても膨大な領域をよくこの量でコンパクトにまとめたというのが全体的な感想です。
たとえば、Azureの1つの代表的なサービスApp Serviceだけ切り出しても2025/5/29現在日本語のドキュメントがPDF出力すると2363ページにもなります。
まずは、入門書籍として、また開発者にも十分お勧めできる内容かなと感じました。
繰り返しますけども、Web開発者はすでにクラウド技術について何も知らないでは済まされません。
その詳細はまだしも、それぞれのサービスがどんな機能があるのか?類似のサービスがいくつかあるけどもどんな違いがあるのか?その選定根拠はなんであるのか?
そのようなレベルの話はたとえWeb開発者であっても答えられるようになっていないといけません。
というわけで、これからAzureを使おうとする開発者であろうがリーダーであろうが、少しでもそのプロジェクトにかすっているのであればとりあえず読んでおいて損はないのかなと思いました。
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