暗黒面に墜ちたSIerエンジニアが個人開発始めたら人生楽しくなった話
新卒入社から6年、SIerでインフラエンジニアとして働いてきた私がプライベートで個人開発を始めて1年ちょっと経ちました。
個人開発といっても自分用のWebサービスを作っているだけです。(それを個人開発と呼んでいいのか不安ですが、、)
ただ、そこで得た気づきは大きく、気づきが連鎖する形でいつの間にかSIerの暗黒面に堕ちていた私がエンジニアを楽しいと思うまでになりました。
これはプライベートが楽しいから仕事も我慢できるよね、という話でもなく仕事も含めハッピーになっているということです。
インフラエンジニアやSIerエンジニアでない人にも共感できる部分があると思うので読んでもらえると嬉しいです。
(ただしSIerの暗黒面といってもここで書かれているのは気持ちの問題が大きく、「月に100時間残業!」など本当に大変な状況の方には不快に思われるかもしれません。その場合は申し訳ありません。)
私の暗黒面時代
以前の私は「自分のエンジニアとしての命運はすべて職場が握っている」ような感覚を持っていました。
私の仕事ぶりを知っているのは職場の人間だけです。それ以外の人は私の仕事ぶりを知りません。転職活動では職務経歴書や面接でアピールできますが、普段見ていない人に細かい頑張りを伝えるのは難しく思え、私を正しく評価できるのは上司だけと思っていました。
そのため一生懸命成果を出そうとするのですが残念ながら成果は外的要因にも左右されます。当時の所属プロジェクトは品質重視であったため何をやるにも重厚なプロセスが設定されており、思うように挑戦ができず焦りを感じていました。
クラウドといったトレンド技術に触れる機会もないことで将来への不安も増し、逃げ場のない気持ちになっていました。
こうして「やってられるか!」と無事にSIerの暗黒面に堕ちました。
やったこと
ただこんな私ですが、そこに幸運にも生成AIとの邂逅を迎えます。
もともとモノづくりが好きでSEになった私は
「生成AIがあればインフラしかできない私でも何か作れるのでは?」
と、自信が困っていたNISAの売買、損益、配当管理用のサービスを作り始めました。
非公開リポジトリで恐縮ですが、2023年は564contributuionだったようです。(初心者コミットですが、やった感だけでも出せれば、、)
GitHub Contribution
またここから発展する形で2023年後半には
- connpassでのセミナー、ネットワーキング参加
- テックブログ、GitHub、Xでのアウトプット
にも挑戦するようになりました。
やってて気が付いたこと
気づきがさらなる気づきを呼び、連鎖していきました。
アプリまでできるとやりがいが増す
まずは簡単なところですが、インフラだけではなくアプリまでできるとやりがいが増えます。
これは完成品ができることで小さくても自分の課題を解決し、生活を豊かにできるからです。本来ならアプリ開発初心者の私にそんな成果出せるわけがないのですが、そこは生成AIさまさまです。多少の妥協はあるもののある程度満足できるものがつくれました。
さながら忘れていた「モノづくりのDNA」を再度自覚できたというところでしょうか。
ただ、これには今回の開発だけでなくこれまで業務で積み上げてきたインフラの技術も役立っていることも忘れてはいけません。そういう意味では仕事への感謝もあり、エンジニア人生全体として報われたような気分です。
「プライベートで頑張る」は思ったよりつらくない
プライベートで何かやることは昔から考えていましたが、「仕事も大変なのに家に帰ってからもやるのかぁ」と敬遠気味でした。
ただ、やってみると思ったよりつらくなかったことが発見です。むしろ楽しいです。
最近では自分の生活を効率化できることの喜びで次から次にやりたいことが出てきます。平日の夜の時間はそれなりにとられるようになりましたが、1個趣味が増えたなぁくらいの感覚です。
(ただし残業多すぎてそもそも時間がない!ような状態だとさすがに話が変わりそうなのでそこは感謝しなくてはと思います。)
「モノづくり」に原点があってこの業界を選んだよ、という人は同じようになる可能性が高くやってみることをおススメします。
成長できる機会は仕事だけじゃない
最大の成長機会は確かに仕事かもしれませんが、プライベートでも成長はできます。むしろ場合によってはプライベートのほうが適していることもあります。
たとえば、最新技術に触れるのは明らかにプライベートのほうが適しています。
仕事では会社のルールだったり、プロジェクトの技術スタックだったりいろいろな要因で触れられる技術が絞られてしまいます。ですがプライベートでは好きな技術に触れることができ「自分の考える最強の構成」をとれます。
Azureでホスティングして、ReactとPythonでアプリ作って、生成AIもバンバン使って、その他有用そうなツール/サービスも片っ端から使えます。
SIerには伝統的な日本起業が多い印象なので同じような悩みを持っている人は多いと思います。なんでも好き勝手使っていい状況って夢みたいじゃないですか。
自分で使うという事実がキャッチアップを加速する
自分で使っているからこそ、キャッチアップした成果がすぐにでます。そのおかげでキャッチアップにも積極的になれます。
わかる内容が増える喜びがさらにキャッチアップを加速させます。
以前、qitaやzennのトレンド欄でキャッチアップしようとしたことがありますが、そのときは自分が知らない内容ばかりですぐに嫌になってしまいました。
ただ、今ではタイトルの意味くらいはわかるものが増えてきたことで見る意欲を保っていられます。最近は情報キャッチアップ用のXアカウントもつくっています。
今になって考えてみると、仕事でオンプレサーバしか触らない人がプライベートでクラウドの情報収集を続けるってすごいことですよね。私には無理でしたが、できている人がいたらそれは無茶苦茶すごいと思います。
企業内以外にもエンジニアはたくさんいる
Xをやり始めて気が付きました。SNS上ではフリーランスの人や、会社員だけどプライベートで発信してる人、業務として発信してる人などさまざまな人がいます。
「ここにもこんなにエンジニアがいるんだ」と思いました。
日本エンジニア分布はユーザ企業じゃなくてSIerに偏っている、みたいな話がよくありますが、その印象でみんな自分と同じように社内メインの人ばっかりだろうと思っていました。
落ちついて考えるとそんなわけないのですが、市場をざっくりとらえすぎてしまっていた弊害かと思います。
自分を評価できるのは上司だけじゃない
Xで企業外で活躍するエンジニアを見るうちに自分もSNS発信やテックブログ、GitHub投稿をやるようになりました。
その結果、上司以外にも自分をアピールできることに気が付きました。
それも転職時の面接といった限られたアピールではなく、長らく続けたアウトプットに基づく自分のコンテキスト全体を表現できます。
実際に外部の人がどこまで見てくれるかはさておき、少なくともアピールできる状態になっていることをとても心強く感じました。
私はLaprasというアウトプットから自分のエンジニアレベルを算出してくれるサービスを使っています。このスコアの上昇がとても励みになっています。
意外に仕事に生かせる内容が多い
プライベートでアプリの勉強したところで、本業のインフラ業務には何も影響しないと思っていました。しかし、そんなことはありませんでした。
インフラで言えば、実際にクラウドを使っているのでクラウドの知識取得が以前とは比べ物にならないくらい進みました。
アプリの知識もちょっと自分の業務の効率化をしたいときに大きいな助けになってくれます。pythonでAPIを叩けるようになったことでサービス連携ができるようになり、seleniumを使ってRPAもできるようになりました。
考えると、それまでの自分はAPIを使えず業務効率化も大変だったなと思っています。
また、プライベートでアウトプットする習慣がついているので本業でもアウトプットが進みます。
とくに、SIerは請負という形式上外に出せる内容が少ないためアウトプット文化が弱いように感じます。そのため、社内SNSでの発信や、企業ブログの執筆などだけでもすごく評価されてビックリしました。
まして、業務外で登壇でもしようものなら「あいつは別格」みたいな扱いを受けます。(嘘です。分かりません。これはまだできていないので、やっている人を見て私個人がそう思っただけです)
ライトサイドに戻った心境
こうしてライトサイドに戻ってきました。現在の心境は大まかに以下の3つです。
- 仕事だけがすべてじゃない。
- 自分に自信を持てている。
- エンジニアでよかったと思っている。
上司の評価がすべてではないと思えたので、仕事でうまくいかないことがあっても「それはそれ」と分けて考えられるようになりました。もちろん仕事も全力でやっていますが、どうしようもないことは仕方がなく、過度にプレッシャーを感じることはなくなりました。
自信の成長に関しても仕事だけで足りなければプライベートで補えばいいと思っています。着実に成長しているという実感が自信となり、アウトプットの原動力にもなることでさらに好循環を生んでいます。
この結果、プライベートだけでなく仕事に対しても適度なリラックス感がでています。プライベートで学んだノウハウも手伝い、仕事も以前より充実しているように感じます。プライベートがいいから仕事を無理やり我慢できる、ということ状況ではありません。
そしてなによりエンジニアでよかったと心の底から思っています。
以前の私は忘れていましたがエンジニアは本来「手に職つけた」人です。会社で働け、転職に強く、フリーランスや副業からの起業もしやすく、リモートワークもOK。なんと選択肢の多い自由な仕事だろうと思います。これは今回個人開発を始めた中で思い出したことです。
また、エンジニアの技術があれば自分だけでなく人の生活も豊かにできます。今の時代ITで開発できないことはほとんどありません。
そして、生成AIのような世界を変えかねない技術に対しても最前線で関わっていけます。
とても夢の多い仕事と思っています。
さいごに
いいことばかりを書いたせいで、「このサプリを飲み始めたからテストでいい点をとれて、試合でホームランを打って、彼女もできました!」みたいな胡散臭い記事になってしまっていないか心配です。
ただ、今回のきっかけは生成AIがでたからという小さなものです。小さな取り組みが気づきの連鎖を生み、気が付けば気持ちの上で大きな変化が生まれました。特別すごいことをしたわけではなく、同じくSIerの暗黒面でうごめいている同志たちの助けになれば幸いです。
将来は自分のプロダクトを持ちそれで食べていけるようになりたいです。そのためにこの気持ちを大事に継続して取り組みを続けたいと思います。
まずは社内で「こいつは別格だ」と思われるためプライベートでLT登壇を目指します(笑)
ありがとうございました。
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