英会話が苦手なのは当たり前?怖さの正体と、AI時代の乗りこなし方
現場で突然、海外チームと英語で話すよう求められる——そんな場面にどう向き合えばよいのか?
あまり経験がない方は無理無理無理、と拒絶反応を示すのではないでしょうか。
今回はそんな苦手意識の理屈と、ちょっとだけ和らげるアイディアを紹介します。
はじめに
❓なぜ英会話が「怖い」のか
一概には言えないですが、今の社会人たちが学校教育で学んできたのは「読み書き」中心のカリキュラムだったケースがほとんどと思います。
「聞いたりしゃべったりする訓練」を受けてきていなければ、スムーズに会話ができないのはむしろ自然なことです。
教えられてきた「読み書き」では辞書を引きながらじっくり考えられる時間を取れます。
対して会話では常に応答の即時性が求められ、これが多くの人が「怖い」「苦手」と感じる原因の一つです。僕自身もこの即時性に最初はよく恐怖していました。
あるあるな”フリーズ”パターンとして、こんな経験があります。
- 聞き取っている途中でわからなくなる。パニックになっているうちに話が進むから完全に見失う
- 単語は聞き取れたけど、英語から日本語に変換している間に時間が経ってしまう
- 考えたことが英語のフレーズとしてすぐに言葉にできなくて時間が経ってしまう
- 理由はどうあれ、タイムリーに返答ができなくて変な空気になってしまう
❓じゃあどうすればいいんだろう
自分自身の経験を振り返ると、「怖い」を和らげていくためには究極的には会話経験を積んで慣れるしかないというのが率直なところです。
では短期的にできることはないのかというと、そんなこともありません。今回は特効薬ではないけど、緩和剤としては十分な手法を紹介します。
🔰補助ツールを最大限活用しよう
おそらくみなさんが一番最初に思いつくものですが、結局これが有効です。
近年TeamsやZoomといった会議アプリに文字起こし機能が搭載されていたり、場合によってはAIが要約までしてくれるようになってきました。持っているツールは最大限に使い倒していきましょう。
🕐なぜ今ツール活用を再評価するのか
僕は文字起こし機能の精度がかなり低かった時代に英会話する必要性に迫られ、ツールの精度が上がったり翻訳AIが出てきたころにはツールなしでも会話ができるようになった人です。正直に言うと僕自身はあまりAIや文字起こしツールに頼った経験はありません。
当時は体当たりで我流スキル習得をしましたが、今から勉強する人にはもっとハードルが低くて再現性の高い方法があると思ってます。
後述しますが、とにかく多くの人が会話に参加できることの必要性を日々切実に感じているため、「今の時代ならもっとこう効率化できたのに」を思うことがよくあり、その行き着く先が最近発展が目覚ましいツール活用というわけです。
💊ツール活用が有効な理由
記事の冒頭に書いた通り、おそらく多くの人がやってきた勉強はほぼ「読み書き」です。
一見英会話ができる人でも、得意な「読み」で理解を深めるために補助的に文字起こしを使う場面を見かけたことがあります。
英語と聞いた瞬間に「できない」と拒絶反応を起こす人が多い(自分もかつてそうだった)のですが、
実は会話できないし書きも自信ないけど、読むだけならなんとかできる人も相当数います。
「聞き取り:耳からのインプット」を「読み:目からのインプット」に持ち込んでしまえば少しは抵抗感が薄れますし、ハードルが上がる「書き」も今は機械翻訳やAIという優秀な助手に助けてもらえばよいです。
ツールをうまく活用すれば、「独力では絶対に無理」から「なんとかやってみるか」ぐらいには怖さを緩和できそうな気がしてきませんか?
💡使い始めのちょっとしたTips
僕が海外で会話したことのある人は、ほぼ全員と言っていいぐらい「日本人が英語を苦手に感じていること」を知っていました。また、「苦手に思っていること」を公表して嫌な顔をする人もいません。(何度も何度も繰り返し言ったら鬱陶しがられることはありましたが。)
会議体に出る場合、初顔合わせ・初めて電話会議をする際に「僕は聞き取るのが苦手だから、文字起こしツールで出力された中身を見て読みながら理解をする。ゆっくり話すことを心がけてほしいし、返答に時間がかかることは知っておいてほしい」とツールを使うことを相手にハッキリ伝えておくといいと思います。
グローバル会議の場では自分の能力を客観的に示しておくことは「フェアに話すために必要な開示」としてむしろ歓迎的に受け止めらることが多く、決して恥ずかしいことではありません。
💬英語話者の本音:とにかく一歩踏み出してみてほしい
ツールを推す背景として、現場の英語話者の負担を少しでも減らして欲しいという思いが切実にあります。
会議の場での英語話者の処理は意外と多く、初めて日英ファシリテーションをした後輩からも「思ったより大変」という声をよく聞きます。
- 矢面に立って日・英両方で会話をする
- 翻訳する前に、翻訳できる形に頭の中で要約・整形する ⚠️ここが意外と負荷になる
- 英日・日英翻訳を、言語野を切り替えながら双方向でこなす
エンジニアだと、これに加えてさらに業務に関する意見も考えていくことになります。
なので、英語話者の中には「完璧じゃなくていいから、誰か手伝って… 脳内CPUとメモリが焼き切れそう…」と叫びたい人たちが少なからずいるはずです。
勇気を出して英会話にトライしてもらうことそのものに価値があるので、使えるものを活用して一歩踏み出してほしいのです。
⚠️ツールにも限界があることは知っておいて
さて使うことをお勧めする一方で、依存し過ぎないことも大事だということを加えておきます。
翻訳ツール自体がいくら優秀でも、インプットが誤っていると意図通りに変換されません。
特に日本語は主語や目的語を省略しても意味が通じる独特な言語のため、そのままだと意味のわからない英語になることもよくあります。
「機械翻訳専用の日本語を書く(Pre-edit)」「アウトプットされた英語を校正する(Post-edit)」を組み合わせることで精度を上げられます。
ただ、賢い生成AIも業務用語や組織の歴史的背景まではうまく理解できない(情報漏洩を防ぐために入力しない方がいいこともある)ので、やはりどこかに限界があるということは頭の片隅に置いて付き合ってください。
⚠️本当にあった”翻訳の限界”
特に技術用語で、特に文脈を踏まえた翻訳にならない経験をよくします。
ネットワークの「構成管理」を直訳すると”Configuration Management”になりますが、別に装置のコンフィグを見たいわけではありません。
「構成管理」という言葉には論理的つながり(Logical Topology)、物理的なつながり(Physical Topology)、資産一覧(Asset list)など複数の意味が含まれますが、このうち「何を見たいのか」を特定する必要があります。
実際に”Configuration Management Process(構成管理プロセス)”をグローバル標準化したいと海外メンバーに話した時に議論が紛糾し、途中から”Logical Topology Diagram Update Process(論理構成図の更新プロセス)”と言い直して混乱をおさめた経験があります。
似た事例だと、「監視(死活?リソース?帯域?セッション数?グラフ描画?)」や「管理(設定変更できること?設定を見れること?両方含めた一連の運用機能?それともOwnershipを持っていること?)」といった単語が英語にした時に伝わりにくいです。
英語版のマニュアルや技術資料から直接言い回しを引用して記載すると曖昧さを回避しやすいです。
なおこれはツールを使う場合に限った話ではなく、(英語力はあるけど)実務を知らない人に英訳・代弁を任せる時にも同じ現象が起きます。
人でもツールでも、「英語ができる≠正しく意思伝達できる」ということは広く知ってもらいたいところです。
💡自分でしゃべれるようになるためにまずは「補助輪」を使おう
細かいニュアンスや背景を知り、自分が聞きたいことを忌憚なく尋ね、誤解のない意思疎通をしていくためには結局自分自身が直接会話できることが一番の近道です。ただ、このレベルの言語(特に会話)習得に至るには経験と時間がかかるのもまた事実です。
語学力より「伝えたい意志」が何よりも大事。だからこそ「補助輪」を活用して、まずは“怖くない一歩”を多くの人に踏み出してほしいです。
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