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建設的な議論を進める英会話術

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エンジニアの仕事はロジックの積み重ねです。
ただ、海外との会議になると「伝わるロジック」にする難易度が一気に上がります。
英語の言語体系も相まって、「因果関係を相手にもわかるように会話する」ことが特に重要になります。今回は、海外メンバーとの会議で議論を進めやすくなるフレーズと考え方を紹介します。

とりあえず速習フレーズ

  • Sorry I didn't get the point. Could you repeat? (ごめんわからなかった、もう一回)
  • Could you elaborate about 〜?(もうちょっと詳しく)
  • What's the reason behind that?(どうしてそういう意見に至ったの?)
  • We understood about A, but regarding B we need more discussion.(Aはわかったが、Bについては議論いるね)
  • We have a different view that〜(僕らは〜っていう違う意見だ)
  • Now we know we have different view, we need alignment from here as a starting point.(とりあえず意見の相違があることはわかったね、ここから歩み寄ろうぜ)
  • We will discuss internaly and get back to you (on the next regular call). (次までに内部で会話してまた共有するよ)
  • Could you write down the question to the chat/mail later? I'd like to understand well and answer your question (あとでメールかチャットで書いてもらえない?ちゃんと理解して回答したいんだ)

相手の意見を受けて、どう思ったか、どんな理解をしたかを表現するためのフレーズ集です。
相手が投げたボールを捕れたのか、捕れなかったのか、捕れたけど腑に落ちてないのか、反応を示すことは非常に大事なことです。わからなかったら「わからなかった」でも十分誠実な回答ですので、率直に思うところを表現しましょう。

会話において大事なこと

キャッチボールをすること

コミュニケーションはよくキャッチボールであると言われます。当たり前ですが、キャッチボールをするときには必ず相手がいます
相手の反応を見ながら、テンポよく会話を続けていくことが大事です。

[捕球] 自分の言い分があるように、相手にも事情や言い分があります。どう思うか、どう反応するか、自分の主観や主張は一旦横に置いておいて、まずは受け止めると感情的な衝突を避けられます。
[投球] 山なりのボールでもワンバウンドでも構わないので、率直に思っていることを返答しましょう。ストライクゾーンに綺麗なストレートを投げる必要はありません。
[原則] 思いやりを持って接しましょう。豪速球を投げ込むと相手も強い返球をしてきますし、捕球拒否すると相手も捕球してくれなくなります。良好な関係を気づいていくためには、不恰好でも下手でもいいので誠実に向き合うことが大切です。

キャッチボールは何度もするもの

エンジニアがあるシステムのトラブルシュートをする時、相当熟知していない限り1回の対処で完全復旧させることは難しいはずです。
対処してみて、ログやステータスを確認し、変わった状況に対してまた別の対処を試し…ということを繰り返しすると思います。

会話も同じで、相手が反応したことに対して自分が反応して、そのやり取りでちょっとずつ進んでいくものです。
一問一答で終わらないことの方が基本的には多いので、回答もバシッと綺麗なものを用意できなくても十分です

真面目な人ほどその場で完璧な回答をしようとがんばるのですが、疲れますしテンポも悪くなります。
「すまん、わからん。誰それに聞いてみるといいと思うよ」「正直考えてなかった、確かにいい論点だね」「同じ話題は議論中、何かわかったらアップデートするわ」といった、完璧でなくても率直でテンポのいい反応の方が会話には適してます。

議論で資料が占めるのはよくて7割

会話の場面で大事なのは相手の反応を見ながら話題を組み立てる柔軟性を持っておくことです。

資料やプレゼンを入念に準備して説明をすること自体は大事なことです。
しかし、あくまでもプレゼンは対話の入り口で、そのプレゼンを聞いた相手からの反応を聞いてさらに議論を続けていくことが本題です。大体の場合、資料を見て完璧に理解される・同意されることはありません。プレゼンだけに集中し過ぎて、質疑応答が疎かにならないように注意しましょう。経験上、8割以上の場合は自分で用意した筋書き通りには話が進まないものです。

速習フレーズを参考にまずは相手の聞きたいことを理解しようと努力してみて、どうしてもわからない時は最終手段「メールかチャットで書いてくれ」を使いましょう。読み書きに持ち込めば、時間をかけてじっくり読み解いたり考えることができるようになります。
ただし、まずはできるだけ会話で済ませられるように頑張ってみるのがベターです。毎回書くことを要求するとお互いに質疑にかなり時間がかかりますし、会話でしか掴めないニュアンスを取りこぼしてしまうこともあります。また、相手からすると会話してるのに余計な手間が増えてフラストレーションをためやすくなるため、連発はオススメしません。

正しい英語じゃなくてもいい

英語自体は辿々しくても正しくなくても、伝える中身とハートが大事です。多少間違えてても相手は文脈から読み取ってくれます。
昨今SNSで流れてくるような「ネイティブイングリッシュの表現」は要りません。僕ら自身もネイティブじゃないし、相手も英語が母国語のネイティブと限りません。もちろん言えればスマートですしかっこいいのは確かですが、ドヤ顔で言ってみたところで相手が受け取ってくれる確証はないものです。

もちろん正しい英語を使えた方がよいのは間違いありません。短時間でコミュニケーションが済ませられる、的確なニュアンスを伝えやすくなるなど、基本的にはメリットしかありません。
とはいえ、(技術用語や会社の用語などの固有名詞系のボキャブラリーはさておき)文法自体は中学レベルの英語でも意外となんとかなることも多いので、気取らずに今の自分ができる表現で会話してみましょう。

合意するのは最終的に書面で

口頭で合意しようとすると、細かいニュアンスや思惑が実はズレているということがよくあります。
合意に至った背景と結論、いつ時点の合意内容かを書面に起こして、双方が文言に異論がないことを確認しながら進めておくとケンカになりにくいのでオススメです。また後になって「あの時はこういう合意をした」と見返せるため、状況が変わってきた際に相手と一緒に認識を擦り合わせたり新規参入したメンバーへの引き継ぎが楽になったりするという他の側面でのメリットもあります。
逆に言うと、書面に落とすまではフリーディスカッションなので、肩の力を抜いて話すぐらいでちょうどよいです。

おわりに

僕自身、英語でコミュニケーションを取って信頼関係を築けるようになるまで試行錯誤をしてきました。
最初の頃は英語という障壁を乗り越えることに必死で相手の人間味がぼやけてしまっていました。しかし、相手も人間であり感情がある、という当たり前のことに気づいてからグッとよい会話ができるようになったと思います。

エンジニアの仕事はロジック重視…とはいえお互いに事情はあり、自分の意見や感情を無碍にされれば怒るのも当然です。
お互いのことを冷静に伝え合い、お互いの違いを認めながら、「一緒により良い解を探すプロセス」そのものが建設的な対話になります。

焦って一度の会話で完全な合意に至る必要はありません。
キャッチボールを重ねることで少しずつ信頼と理解が積み上がっていくので、焦らずに時間をかけてお互いのことを知っていきましょう。

この記事が相手との関係性をよくしていく一助になれば幸いです。次の記事では、相手との信頼関係を築くための会話術を紹介します

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