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[論文紹介] RDP 7.0とPCoIPの通信帯域影響比較

2020/09/16に公開

Zennのサービスリリースおめでとうございます。軽めの技術ネタを投稿できるプラットフォームということで、テストエントリーしてみます。

このエントリーでは、2010年のJiri KourilとPetra Lambertovaによる論文「Performance analysis and comparison of virtualization protocols, RDP and PCoIP」から、RDP (Remote Desktop Protocol) 7.0とPCoIP (PC over IP)の通信帯域影響の比較部分を取り上げてみます。

この論文では、テストシナリオを定めて検証したところ、

PCoIP protocol used 4.32 times more bandwidth than RDP. (PCoIPはRDPを4.32倍の通信帯域を使用した)

という話が書いてあります。ただし、これについては

PCoIP protocol is designed as an adaptive protocol ... Adaptive protocol is adapting to state of lines and trying to use the most of its potential for maximizing user requirements. (PCoIPは適応型のプロトコルで、ネットワーク状況に応じながらユーザ要求を最大化するために、能力を可能な限り引き出そうとする特性がある)

というところに原因があると考えられると筆者は述べています。

また、この論文の検証では、デスクトップ表示、ブラウザでのWWW閲覧、PDF表示での応答時間の違いを比較していますが、

In this test the response time was much better for protocol PCoIP only selected scenarios "Desktop" gave worse results than the protocol RDP.(今回のテストシナリオにおける応答時間について、PCoIPがRDPを上回っていたが、唯一の例外は「デスクトップ」のシナリオだった)

と評価しています。

これについては、

the most data could be stored in the cache, where could be loaded more quickly and without limitation caused by the setting of transmission lines. (大部分のデータがキャッシュに保存され、通信回線の設定から生じる制限なく、素早くロードできたから)

と分析しています。ちなみにデスクトップ表示はブラウザやPDF表示と比べて応答時間が短いので、それほど大きな体感の差ではないかもしれません。

以上が論文の内容です。私なりにまとめると、

  1. PCoIPは回線状況に応じて帯域使用率を調整する特性があり、帯域に余裕がある場合はRDP 7.0よりも帯域を消費する場合がある(帯域に余裕がない場合は帯域使用量を抑えると考えられるが、この論文ではその検証はしていない)
  2. 通常のオフィスワークで使用するアプリケーションを利用する場合、PCoIPの方がRDP 7.0よりもほとんどのケースで応答速度は早いと考えられる。ただし、デスクトップのように表示内容が固定的でキャッシュが効くアプリケーションではRDP 7.0が早いこともある

というところです。6ページほどの論文で、実質3ページくらいしか分析シナリオと分析結果の話をしていないこと、他にデスクトップ環境設定ごとのメモリ使用量の比較なども含めれているので是非お時間がある時に論文もご確認ください。

なお、この論文を読んで、RDPのキャッシュがどんな風に保存されているかと思ったのですが、YouTubeにRDPキャッシュのbitmapファイルを展開している動画があったので、YouTube動画の埋め込みテストも兼ねて張っておきます。

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