PdMとAIが議事録を撲滅する──「会議の内容、覚えてない問題」を自動化で解決した話
「あの会議で何を決めたっけ......?」
PdMとして日々複数の会議に参加していると、こんな瞬間に何度も遭遇します。
Google Meetが文字起こししてくれるのはありがたいけれど、全文を読み返す時間はない。かといって、手動で議事録を作るのも面倒。
そんな「議事録管理」の悩みを、AIを使って完全自動化してみました。
つくったツール
今回作成した議事録処理ツールは、Google Apps Scriptで実装した自動化スクリプトです。
処理の流れはシンプルで、以下のようになっています:
- Gmailを監視: Google Meetの文字起こしメールが届いたら自動検知
- 議事録リンクを抽出: メール本文からGoogleドキュメントのリンクを取得
- ドキュメントをコピー: 議事録を管理用フォルダに自動保存
- Markdown変換: GoogleドキュメントをMarkdown形式に変換
- Gemini APIで要約: AIが議事録を「概要」「意思決定・ネクストアクション」「主要な議論の流れ」「簡易逐語録」の4セクションで要約
- Notionに保存: 要約された議事録をNotionデータベースに自動保存(タイトル、日付、カテゴリを自動設定)
- Slack通知: 処理完了とNotion URLをSlackで関係者に自動通知
- 処理済みマーク: 同じメールを二重処理しないようラベル付け

これら全ての処理が、人間の手を介さず、30分ごとに自動実行されます。
なぜこのツールを作ったのか
PdMとして働いていると、日々多くの会議に参加します。
プロダクト戦略の議論、顧客インタビュー、開発チームとのすり合わせ、部門横断のミーティング......。
会議そのものは価値があるのですが、問題は 「会議の記録とその共有」 です。
Google Meetの文字起こし機能は便利なのですが、全文をそのまま読むには時間がかかります。かといって、誰かが手動で議事録を作成するのも非効率。
さらに、複数のプロダクトを同時に見ていると、「あの会議で何を決めたっけ?」と後から思い出そうとしても、記憶が曖昧になっていることが多々ありました。
そこで考えたのが、議事録作成から共有までを完全自動化するというアイデアです。
- Google Meetが自動で文字起こししてくれる
- それをGemini APIで要約する
- 要約結果をNotionデータベースに自動保存する
- Slackで関係者に通知する
これが実現できれば、放置で議事録が完成し、必要なときに見返せる環境が整います。
開発で注意したこと
このツールを開発する上で、特に意識したポイントは2つです。
1. とにかく放置で完結すること
「1日1回認証する」とか、そういう手間は面倒です。
一度設定したら、あとは完全自動で回り続けることが理想でした。
そのため、Google Apps Scriptのトリガー機能を使って、30分ごとに自動実行される仕組みにしました。人間がやることは「最初の設定だけ」。あとは放置です。
2. 部内に展開しやすいこと
ツールを組み合わせすぎて準備が面倒だと、本末転倒です。
そこで、使う技術はできるだけシンプルに絞りました:
- Google Apps Script: Googleアカウントさえあれば誰でも使える
- Gemini API: Google AI Studioで無料で取得可能
- Notion API: Notion Integrationsで簡単に設定可能
- Slack Webhook: Slack Workflowで簡単に設定可能
複雑な環境構築は不要。設定ファイルに必要な情報を入れるだけで動くようにしました。
AIに任せた部分
正直に言うと、私自身はエンジニアバックボーンがありません。
なので、コーディングの大部分はGeminiとClaude Codeに任せました。
私がやったことは:
- 「やりたいこと」を言語化する:やりたいことと処理フローを箇条書きで整理
- Geminiと壁打ちして実装方針を決める:「こういう処理を自動化したい」とGeminiに相談し、どのようなツールの組み合わせや手法があるかを議論
- Claude Codeに実装を依頼する:実装方針が固まったら、Claude Codeに「Google Apps Scriptのコードを生成して」と依頼し、動作確認とデバッグを繰り返す
- プロンプトの調整:要約の品質を上げるため、プロンプトを何度も調整
PdMとしての価値は「何を作るか」を定義することだと思っています。
「どう作るか」はAIに任せる。これが、AI時代のPdMの働き方なのかもしれません。
驚いたのは、これらの作業が何かをしながら片手間でできたことです。会議の合間や移動中に、GeminiやClaude Codeと対話しながら実装を進めることができました。この体験は、業務の仕方そのものが変化していることを実感させてくれました。
実際に使ってみて
このツールを運用し始めてから、議事録に対するストレスがゼロになりました。
会議が終わったら、あとは放置。30分後には、要約された議事録がNotionデータベースに保存され、Slackに通知が届きます。
「あの会議で何を決めたっけ?」と思ったら、Notionを開けば一発で確認できます。日付やカテゴリで自動整理されているため、検索も簡単です。
特に便利だったのは、複数のプロダクトを同時に担当している場合です。
会議が連続すると前の会議の内容を忘れがちで、さらに、どうしても出られない会議のキャッチアップが大変でした。このツールがあれば「後で見返せばいい」という安心感があり、欠席した会議も要約を読むだけで全容を把握できます。
さらに、会議に参加できなかったメンバーにもNotionのリンクを送るだけなので、情報共有の質と速度が大幅に向上しました。
PdMとして気をつけていること
この取り組みを通じて、PdMとして強く感じたのは、「まず自分で触ってみること」の大切さです。
AIを実際に動かしてみたり、プロンプトをいじってみたりする中で、AIができること・できないことがだんだん見えてきます。
あと、AIを使うこと自体を目的にしないこと。
例えば、今回の議事録自動化は「AIがあるから作った」のではなく、「議事録作成が面倒だから、AIを使って解決した」という順序です。
手段はあくまで手段。最適な方法を選ぶという姿勢は常に持っていたいなと思います。
おわりに
この記事では、エンジニアバックボーンのないPdMが、AIを活用して業務自動化ツールを作った話をご紹介しました。
コードを書けなくても、AIを使えば、自分の課題を自分で解決できる時代になっています。
「地味に面倒だけど、まあしょうがない」と諦めていたこと、ありませんか?
「効率化したいけど、そもそも効率化する時間がない」と後回しにしていたこと、ありませんか?
私自身、議事録問題はまさにそういう悩みでした。そして、実際にこのツールを作って横展開してみると、同じ悩みを抱えている人が部署をまたいでたくさんいたことに驚きました。
自分のために作ったツールが、思わぬところで誰かの役に立つ。これもまた、AIを使った自動化の面白さだと感じています。
PdMとして、プロダクトを作るだけでなく、自分自身の働き方もプロダクトとして改善していく姿勢が大切だと感じています。
ここまで読んでくださってありがとうございました!
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