Jira MCP×Claude Codeで実現する「忘れない」プロダクト開発
チケット起票の苦痛からの解放
はじめに
「あれ、このチケット何のために作ったんだっけ...?」
プロダクトマネージャーとして日々会議や開発現場を駆け回る中で、こんな経験はありませんか?会議中に重要な課題を発見しても、その場で詳細なチケットを作成する時間はない。かといって、タイトルだけ起票しておくと、後日のリファインメントで背景や意図が思い出せない。
この問題は、単なる「記憶力」の問題ではありません。これは、プロダクト開発における情報の欠落という、より本質的な課題です。
本記事では、Jira MCPとClaude Codeを組み合わせることで、この課題をどのように解決したかをご紹介します。
導入前の課題:チケット起票の3つの苦痛
1. コンテキストスイッチのコスト
会議や開発作業の最中に、Jiraを開いて詳細なチケットを作成することは、思考の流れを断ち切ります。特にプロダクトマネージャーは、1日に複数の会議をこなしながら、エンジニアとのディスカッション、顧客からのフィードバック対応など、マルチタスクが常態化はあるあるかと思います。
2. チケット起票内容を忘れる
次の会議が立て込んでいて、「タイトルだけ起票」することもありますが、こんな経験ありませんか?
- 会議直後: 「バグ:一覧画面でエラー」(覚えている)
-
1週間後のリファインメント: 「どんなエラーだっけ?」(忘れている)
人間は、忘れる生き物なので、やはり文章で残しておかないと、記憶の彼方に消え去ってしまいます。
3. 起票自体の忘却
最も深刻なのは、起票すること自体を忘れてしまうケースです。顧客からの重要なフィードバックや、エンジニアとの会話で発見した改善点が、チケット化されずに消えていく。これは単なる効率の問題ではなく、プロダクトの品質に直結する大きな問題です。
解決策:Jira MCP×Claude Codeの威力
Jira MCPとは?
MCP (Model Context Protocol) は、AIモデルがローカルリソースやサービスと安全に対話するためのプロトコルです。Jira MCPは、このプロトコルを使用してJiraとAIを直接連携させる拡張機能です。
Claude Codeとは?
Claude Codeは、Anthropic社が提供する開発者向けのAIアシスタントツールです。ターミナルから直接Claudeと対話し、コーディングタスクを委譲できます。
統合による価値
この2つを組み合わせることで実現できるのは:
- 自然言語での即座の起票: 「登録画面で顧客IDが空の時にNullPointerExceptionが発生する問題を起票して」
- AIによる文脈の補完: 簡潔な指示から、背景・再現手順・影響範囲を含む充実したチケットを生成
- 会議中でも起票完了: コンテキストスイッチなしで、思考の流れを維持したまま起票
環境構築ガイド
前提条件
- macOS または Linux環境(Windows は WSL2 推奨)
- Node.js 18以上
- Jiraアカウント
- Claude API キー
Step 1: Claude Codeのインストール
# npmのバージョンを確認(筆者は11.4.2だった)
npm -v
# バージョンが古い場合はインストールできないのでバージョンアップ
npm install -g npm@latest
# Claude Codeのインストール
npm install -g @anthropic-ai/claude-code
# インストール確認
claude --version
# claudeコードを利用してみる(初回は認証などの設定が自動で始まります)
claude
ここまでの手順は以下の公式サイトが参考になりました。
Step 2: Jira接続の設定
対象プロジェクト直下に、.mcp.json というファイル以下ファイルを配置するだけ。
{
"mcpServers": {
"atlassian": {
"command": "npx",
"args": ["-y", "mcp-remote", "https://mcp.atlassian.com/v1/sse"]
}
}
}
Step 3: CLAUDE.mdファイルへの追記
プロジェクト固有の注意事項
重要: このリポジトリでJira操作を行う際は、必ず以下を遵守してください:
対象プロジェクトの限定
操作対象は「XXX」プロジェクトのみ
URL: https://companyname.atlassian.net/jira/software/projects/XXX/boards/
安全な操作のガイドライン
全ての検索に project = XXX を含める
課題作成時は必ず project: XXX を指定
他のプロジェクトへの書き込み・更新は禁止
推奨される操作パターン
# 良い例
「project = XXX AND type = Bug の課題を検索」
「XXXプロジェクトに新しいストーリーを作成」
# 悪い例(プロジェクト指定なし)
「全てのバグを検索」 # 危険:他プロジェクトも含む
「新しい課題を作成」 # 危険:どのプロジェクトか不明
Step 4: 動作確認
# Jira接続テスト
claude-code "Jiraの課題を3件取得して"
以下のように課題が取得できると思いいます。
⏺ XXXプロジェクトの課題一覧(最新3件):
最近更新された課題
1. XXX-31 - 外部API: 結果取得API
- タイプ: ストーリー | 状態: To Do | 優先度: Medium
- 更新日: 2025-07-16 18:23
2. XXX-30 - 外部API: 項目登録API
- タイプ: ストーリー | 状態: To Do | 優先度: Medium
- 更新日: 2025-07-16 18:20
3. XXX-29 - 画面: キー登録画面
- タイプ: ストーリー | 状態: To Do | 優先度: Medium
- 更新日: 2025-07-16 18:19
実践例:会議中の起票
シナリオ:プロダクトレビュー会議中
状況: エンジニアチームとの定例プロダクトレビュー会議。デモ中に決済機能のバグを発見。
従来の方法(約5分)
- 会議を一時中断
- Jiraを開く
- プロジェクトを選択
- 「課題を作成」をクリック
- 各フィールドを入力(タイトル、説明、優先度、担当者...)
- 作成ボタンをクリック
- 会議に戻る(何の話をしていたっけ...?)
Claude Code + Jira MCPの方法(約30秒)
# claude-code上で記載
claude-code "登録画面で合計金額がマイナスの時に登録ボタンを押すとエラーが発生する問題を起票。優先度は高で。現在のスプリントに追加して。"
導入効果
1. 会議の質の向上
- 起票作業による中断がなくなり、議論に集中できる
- アイデアが新鮮なうちに記録できる
2. エンジニアの満足度向上
- 「何をやればいいかわからない」チケットが激減
- 技術的な文脈も含めて記載されるため、実装がスムーズ
3. プロダクトマネージャーの働き方改革
- 事務作業から解放され、より戦略的な業務に時間を使える
- 「未来へつながる時を生む」という哲学の実現
まとめと今後の展望
実現したこと
Jira MCPとClaude Codeの統合により、私たちは「チケット起票」という日常的な作業を劇的に改善しました。これは単なる効率化ではなく、情報の欠落を防ぎ、開発チーム全体の生産性と品質を向上させる本質的な改革です。
最後に
Jira MCPとClaude Codeの導入は、まさにこの哲学の実現例です。チケット起票という「無駄な時間」を削減し、その時間をより創造的で未来につながる活動に振り向ける。これこそが、真のDXであり、競争優位性の源泉となります。
もしあなたの組織でも同様の課題を抱えているなら、ぜひこの記事を参考に、一歩を踏み出してみてください。最初は小さな改善かもしれませんが、その積み重ねが、やがて大きな変革につながるはずです。
参考リンク
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