『インベンス・ルービン 統計的因果推論(上)』の10.7節をStanで再現する
概要
子供の読解能力を改善することを目的として、教育テレビ番組「The Electric Company」を見せます。各学校において2クラスのペアが選ばれて、片方のクラスには標準的な授業(対照群)を、もう片方のクラスには「The Electric Company」を見せる授業(処置群)をランダムに割り付けます。「The Electric Company」を見せることによる因果効果を推定したいです。表記は一部改変します。
データの説明
生データは見つかりませんでした。そこで、生データからの再現は諦めて、前処理後のデータである表10.1のデータを手動で入力して保存しました。
-
G
: ペアのID -
W
: 割り付け。0が対照群、1が処置群。 -
X
: 共変量。実験前の点数。 -
Y
: 結果変数。実験後の点数。
モデル
学校(ペア)が8校あるため、8個の層(ブロック)が存在すると考えます。そして潜在的結果変数に学校差がある階層モデルを使って欠測値補完します。このように階層モデルを簡単に組み込めるところがRubin流のベイズモデルベースの因果効果推定のメリットと思います。
ある学校
学校ごとの平均は独立に以下の正規分布に従うと仮定します:
コードは以下の通りです。Stanでは事前分布を特に記載しなければ、無情報事前分布(非常に幅の広い一様分布)が設定されることを利用しています。
- 階層モデルを使うときは、7行目の
i2j
のようなクラスの添字i
を学校の添字j
に変換する変数を用意することで、26,28,41,43行目のようにすっきり書くことができるのでした。 - 22行目で各学校の平均が正規分布に従っています。
- 残りの記述は以前の記事のモデル1とだいたい同じです。
実行するRコードはこちらです。
- 4行目:共変量の数が1個であるため、
の行列にしています。N \times 1 があるので切片項は不要な点に注意です。\mu(j)
結果は書籍とほぼ一致しました。
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