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「なんか相談しにくい」解消のためのエンジニア相談会

2022/12/25に公開

この記事はWHIの7つの「Value」に沿ったエピソードを語ってください! by Works Human Intelligence Advent Calendar 2022に投稿しています。

TL;DR

他部署からの「なんか相談しにくい」の解消を目指して『エンジニア相談会』を開催しました。
約半年運用してみて、他部署の方々が今まで挙げてなかった意見や疑問を聞き出すことができました。
エンジニアも他部署も、相談しやすく気持ちよく働ける関係を築けるように、相談会の運用も改善していきます。

はじめに

当然のことですが、会社にはプロダクト部だけでなく営業部やカスタマーサポート部などの様々な部と職種があります。よりよいサービスを提供し利益を上げるには彼らとの連携が欠かせません。

しかし、同じ会社の社員であっても部署が違うと「なんか相談しにくい」と感じてしまうことがあります。このネガティブな感情はコミュニケーションの障害となり、放置することで大きな問題に発展する可能性があります。

この記事では「なんか相談しにくい」解消のために社内で開催した『エンジニア相談会』の取り組みについて紹介します。

キーワードは次の2つです[1]

  • Ownership(当事者意識を持ってやり切る)
  • Respect(一緒に働く仲間とお客様を尊重する)

前提

自社サービスを開発している従業員300人程度の規模の会社での取り組みです。
新しい取り組みは比較的自由にやらせてもらえる雰囲気があります。

きっかけ

ある日、営業部の方から「担当しているクライアントから、〇〇の機能が使えない不具合があると連絡が来まして...」という相談を受けました。調べてみてバグがあることがわかり、修正版をリリースしました。すると、

「ありがとうございます!実は何ヶ月か前からずっと起こってて困ってたんですよね」

...え?

詳しく聞くと、次のようなことがわかりました。

  • そのクライアントからは同じ不具合が報告され続けていた
  • クライアントから連絡が来るたびに、営業担当者が手動で対応していた
  • エンジニアにはなんとなく相談しにくかった

「なんか相談しにくい」状態

弊社のプロダクト部はバグ修正などの緊急対応が必要な事項に対処する窓口を用意し、他部署からの依頼に応じて随時対応をしています。今回の件も窓口に相談してほしい内容でした。

この件を相談してくれた営業部の方に相談しなかった理由を聞くと、以下のように話してくれました。

  • クライアントからの初回の報告時は、エンジニアに依頼するよりも自分たちで対応したほうが早いと判断した
  • 2回目以降は対応方法がわかっているので自分たちで対応した
  • そもそも起こった事象が不具合なのか仕様なのかわからず、相談したら迷惑になるかもと思った

とくに3つ目のように、何がわかってないのかわからない状態に陥ってしまうとちょっとした相談もハードルが高く感じてしまいます。
リモートワークが多くなった昨今では、そのハードルがより高くなっています。Slack で連絡する際は伝わるような文章に起こす必要がありますが、何がわからないのかわからない状態では整理した文章にするのは難しいです。 Zoom などのオンラインミーティングもありますが、わざわざミーティングに呼ぶことも遠慮してしまいます。「気軽に相談してね」と口でいうのは簡単ですが、相談するハードルは簡単には下げられそうにはないです。

一緒に働く仲間に「相談したら迷惑になるかも」などと思わせてしまったことは本当に申し訳なく思うと同時に、なにか対応をしなければならないと感じました。

エンジニア相談会の開催

相談をする側がハードルを高いと感じるなら、相談を受ける側もハードルを下げる努力で解決できるかもしれません。社内の誰もがプロダクトに関しての疑問や意見を気軽に相談できる場として『エンジニア相談会』を開催することにしました。

目標と達成に向けてやること/やらないことを決める

この会の最終的な目標は相談会を開催しなくても相談をするハードルが低い状態をつくることです。その目標の達成に向けてやること/やらないことを決めました。

✅ やること

  • 何を聞けばいいかわからない人が抱えている問題を言語化できるようにサポートする
  • 緊急の対応が必要な事項に対しては、適切な窓口に誘導する
  • 雑談も歓迎する
  • 相談会がなくても相談するハードルが低くなるように、根本的な原因を究明・解決を目指す

❌ やらないこと

  • 適当な相談して解決してくれる便利屋さんになる
  • 惰性で続ける

やらないことを決めることは重要だったと感じます。
エンジニアと他部署の人が仲良くなってなんでも相談できるのはいいことです。しかし、わからないことをドキュメントなどで調べずにすべて相談されるようになってしまうと、エンジニアの負担が際限なく大きくなってしまいます。便利屋さんになるのではなく、必要なときにちゃんと頼れる関係の構築を目指します。

ともあれ、やってみないとどのような反応が得られるかわからなかったので、やること/やらないことは随時更新するつもりで明確には定めすぎずに開始しました。

開催する

Google カレンダーに『【推奨枠】エンジニア相談会』という予定を隔週で追加し、会社の全員を任意参加者として招待しました。さらに、専用の Slack チャンネルを作成し、相談会についての質問やテキストでの相談も受け付けられるようにしました。

開催するたびに全社のチャンネルでアナウンスするようにしました。

Slack で参加を呼びかけた

気を付けたこと

参加者からのフィードバックも参考に、次のようなことに気をつけながら開催しています。

参加しやすい時刻に開催する

営業部とカスタマーサポート部の方々に定め、彼らが参加しやすい時間帯に実施することにしました。
カスタマーサポート部は比較的時間に融通が利きやすかったため、営業部の営業活動やミーティングと被りにくい時間に開催することにしました。

集めた情報の公開する

受けつけた相談と議論は Notion で管理して社内の全員に公開しました。他の人の議論を見ることで、自分の考えを言語化するときの補助になったり新しい議論を生み出すきっかけになったりすることを期待しています。

参加者全員が理解できるよう伝える

自分の知らないトピックについての議論は疎外感があり興味が湧かないです。せっかく参加してくれた人をそのようなネガティブな気持ちにさせると、より相談のハードルが高くなるかもしれません。参加している全員がトピックについて理解できるように常に補足情報を出すように意識していました。

具体的には、「○○について相談したいんですけど」という質問が出たときに、「○○というのは、xxのための機能のことですよね」のようにリアクションします。[2] 自分でも少しくどいと感じるくらいに補足情報を追加していたので、ほとんどの参加者がトピックの概要を理解できた状況になっていたと思います(もちろん理解できてない人が黙っていた可能性は否定できませんが)。

成果

初回開催から約半年が経ち、たくさんの相談や疑問を受け付けました。

参加した営業部やカスタマーサポート部の方々から、次のような感想をいただきました。

  • ずっと聞きたかったけど機会がなかった問題に質問ができた
  • 今までエンジニアをちょっと怖い存在だと思っていたけど、話すきっかけになってよかった

プロダクト部としてもたくさんの学びを得る機会となりました。ユーザが勘違いしやすい仕様について指摘してもらうことがあり、 UI などの仕様の改善に役立てています。さらに、営業活動をして気づいたことやアイディアを共有してもらうこともあり、新機能の要件定義をする際に参考にしています。

参加した方々の話を聞いてみると、「困ったことがあるときは相談会で聞いてみよう」という意識を持った人が少しずつ増えていると感じています。

今後の改善点

残念ながら、相談会以外では相談をするハードルが高い状況は依然として変わらないと感じています。

相談のハードルが高い理由の一つは、相談内容の言語化ができていないからだと感じました。
とくに入社して間もない人の多くは、プロダクトの仕様をうまく把握してないことが言語化ができない原因のようです。新人メンバーの入社オンボーディング、新機能リリース時のアナウンス、既存の機能のドキュメントを強化することで仕様をより把握しやすくできると考えています。他部署とも連携して対応を進めていきたいです。

おわりに

なんか相談しにくいと感じて目をそらされている問題はどこにでもあります。相談する側、される側の双方の歩み寄りがなにより大切です。社内の仲間が働きやすくなり、結果として顧客にも高い価値を提供できればとても幸せなことだと思います。そのような状態をための作る第一歩として、誰でも気軽に相談できる場を作ってみてはいかがでしょうか。

脚注
  1. 株式会社 Work Human Intelligence の7つの Value のうちの2つです。 https://www.career.works-hi.co.jp/corporate/philosophy ↩︎

  2. あるポッドキャストの番組では、一般によく知られていない話題に触れるたびにこのような補足を頻繁に使っています。よく知らないテーマでも会話に参加できているように感じられて体験が良いので参考にしました。 ↩︎

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