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SD-WAN時代におけるWSUSの存在意義を再考する
はじめに
企業のITインフラで長らく「常識」とされてきたものの一つに 拠点ごとのWSUSサーバー があります。
Windows Updateを集中管理し、WAN帯域を節約するために各拠点に置く──そんな設計は、オンプレ全盛期では理にかなっていました。
しかし Prisma Accessに代表されるクラウドベースのSD-WAN を導入すると、その前提が大きく揺らぎます。
「WSUSはもう不要なのか?」という現場の疑問に対し、改めて整理してみます。
従来の課題とWSUSの役割
オンプレ前提のネットワークでは、以下のような課題がありました。
- インターネット出口は本社やデータセンターに集約
- 各拠点はWAN越しに通信 → 帯域が逼迫しがち
- Windows Updateのトラフィックは特に重い
- そこでWSUSを各拠点に置き、更新をキャッシュ配布
つまりWSUSは 帯域節約のための「ローカルキャッシュ兼コントローラ」 という役割を担っていました。
SD-WAN導入後に変わる前提
Prisma AccessなどクラウドベースSD-WANの導入により、拠点設計は大きく変わります。
- 各拠点はクラウドPoPに接続し、そこから直接インターネットへ
- Microsoft CDNから更新を直接取得可能
- 帯域がクラウド基盤で吸収されるため、拠点ローカルWSUSの存在意義が薄れる
- リモートユーザーも在宅から直接更新可能(VPN経由不要)
結果として、「帯域節約」のためのWSUSはほぼ不要 となります。
それでもWSUSが持つ意味
とはいえ、WSUSを即座に廃止できるわけではありません。以下のような観点では依然として役割があります。
-
更新承認と段階配布
本番展開前にテスト環境で承認 → 品質を担保するワークフローが可能 -
適用状況のレポート・監査
各端末が更新済みかどうか一元的に把握できる -
帯域が極端に細い拠点
新興国などで依然として有効なケースがある
クラウド時代の代替手段
Microsoft自身もクラウド前提の運用にシフトしています。
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Windows Update for Business (WUfB)
グループポリシーやIntune経由で段階展開を設定可能 -
Delivery Optimization (DO)
端末間でのP2Pキャッシュにより拠点内帯域を節約 -
Intune連携
更新ポリシーとレポートをクラウドで一元管理
これらを組み合わせれば、オンプレWSUSなしでも同等以上の管理性 を実現できます。
再現可能な判断プロセス
SD-WAN環境でWSUSを残すかどうかは、以下の観点で整理できます。
- 帯域節約が主目的 → WSUS不要
- 更新制御・監査が主目的 → WSUSかIntuneで代替
- 将来はクラウド一元管理に移行したい → WUfB + Intuneへ
まとめ
- SD-WAN導入により「拠点ごとのWSUSキャッシュサーバー」の意義は大幅に低下
- ただし「更新制御・監査」の観点では依然として有効
- 今後は WUfB + Delivery Optimization + Intune が最小セットとして主流
つまり、WSUSは “必須インフラ”から“選択肢のひとつ”へと役割が変化している のです。
クラウド時代に合わせて、自社の要件に即した判断をしていきましょう。
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