GitHub Stars入門ガイド
大変光栄なことに、『GitHub Stars』へ選出されました。ありがとうございます!
せっかくの機会なので、「GitHub Starsとは?」「どんな人が選ばれるの?」といった点を整理しました。GitHub Starsがなんなのか、実はよく知らないという人へ届けばうれしいです。
GitHub Starsとは?
GitHub Starsは「GitHub上で影響力のある開発者やコミュニティリーダー」を選出する、GitHub公式のプログラムです。GitHubは次のように説明しています。
The GitHub Stars program thanks GitHub’s most influential developers and gives them a platform to showcase their work, reach more people, and shape the future of GitHub.
引用: Learn more about the GitHub Stars program | GitHub Stars
てっきり「著名なOSSコントリビューターが選ばれる」ものと思い込んでいましたが、調べてみると少し違いました。FAQの「What do I need to be a Star?」では、次のように説明しています。
GitHub Stars are a diverse set of individuals that inspire, educate, and influence those around them. They are experts and technical leaders who passionately share their expertise with others. From open source innovators and content creators to speakers and offline community leaders, they can be from anywhere, pursuing any project.
引用: GitHub Stars FAQs | GitHub Stars
つまりGitHub StarsにはOSSコントリビューターだけでなく、「技術的な知識や経験を発信し、周囲に影響を与えた人」も選ばれるわけです[1]。そのため次のような活動も評価されます。
- 技術書の執筆や記事の寄稿
- コミュニティイベントやユーザーグループの運営
- カンファレンスや勉強会への登壇
- 動画やポッドキャストによる配信
世の中にはいろいろな人がいます。OSSに情熱を燃やす人・執筆や登壇が得意な人・コミュニティ活動に精力的な人などです。これらに必要な能力はそれぞれ異なります。影響の与え方も異なります。GitHub Starsプログラムは、こういった多様なバックグラインドの人たちへ光を当てます。
重視されるのは、周囲へ前向きな変化をもたらすことです。方法は問われないため、自分の強みを活かせます。そういった意味では、多くの人に選出チャンスがあるプログラムといえます。
GitHub Starsの選考プロセス
GitHub Starsへ選出されるには、他者からの推薦が必要です。自薦はできません。また推薦されたとしても、すぐに選ばれるわけではありません。GitHubによる審査が2回あります。具体的な選考プロセスは次のとおりです。
- 「Nominate a Star」から誰かが推薦
- GitHubが事前審査を実施
- 事前審査を通過すると、GitHubから候補者(推薦された人)へメールで連絡[2]
- 候補者自身が、直近一年の活動を英語で作文して提出
- GitHubが活動内容について最終審査
そうして無事に選ばれると、専用のプロフィールページが公開されます。あわせて新機能への先行アクセスや、GitHub公式イベントへの招待などの特典が提供されます[3]。金銭的な報酬はありませんが、限定グッズがもらえるのは地味にうれしいポイントです。
GitHub Starsのメンバーと期間
GitHub Starsのメンバーは、「Meet the Stars」から確認できます。2025年2月現在、日本人メンバーは筆者と@dzeyelidさんの2人だけです。
またGitHub Starsの在籍期間は一年です。毎年審査があり、わりとシビアに入れ替わります。つい先日行われた2025年の更新審査では、1月末時点で84人いたメンバーが2月現在は69人に減りました。継続して選ばれるのは、一度選ばれるのとは違った難しさがあるようです。
ただしGitHub Starsを卒業しても、完全に縁が切れるわけではありません。卒業生は「Meet the Alumni」というページから参照できます。
GitHub Starsな日本人
せっかくなのでGitHub Starsな日本人を紹介しましょう。それほど人数は多くないので、卒業生も含めました[4]。GitHubアカウント名のアルファベット順、敬称略でお届けします。
@dzeyelid
技術コミュニティ「GitHub dockyard」「Code Polaris」のメインオーガナイザーで、他にも複数のコミュニティをサポートしています。Microsoft MVP for Microsoft AzureやGitHub公認トレーナーでもあります。イベントやブログ記事で、GitHubに関する情報発信を多数しています。
@hirocaster
2014年に出版された「GitHub実践入門」の著者です。2015年のITエンジニア本大賞も受賞しています。わりと最初期に出たGitHubの本で、お世話になった人もいるのではないでしょうか。筆者も出版直後に買って、GitHubの使い方を学びました。
@llminatoll
「わかばちゃんと学ぶ Git使い方入門」の著者です。テクノロジー×マンガという、世界でも珍しいスキルを掛け合わせています。入門者に優しい技術書を多数出版しています。
@mattn
Goをはじめとして、さまざまなソフトウェアのコントリビューターとして著名です。2023年に出版された「Go言語プログラミングエッセンス」の著者でもあります。GitHub Stars自体に関する発信も積極で、日本国内におけるGitHub Starsの認知度向上への貢献も大きいです。
@matz
Rubyの生みの親にして、生けるレジェンドです。説明不要でしょう。松江市の名誉市民だそうで、行政からも認知されています。詳しい経歴はWikipediaをどうぞ。
@miyajan
2020年に出版された「GitHub Actions 実践入門」の著者です。最初は同人誌として技術書典などで頒布され、筆者も当時この同人誌を買いました。数少ないGitHub Actions本仲間です。技術コミュニティ「GitHub Actions User Group Tokyo」のオーガナイザーでもあります。
@mumoshu
さまざまなHelmfileやactions-runner-controllerなど、OSSへのコントリビュートを多数しています。AWS Container Heroにも選出され、Kubernetesへの造詣も深いです。実は元同僚です。
筆者のケース
筆者が選出された理由はおそらく、『GitHub CI/CD実践ガイド』の執筆です。GitHub Actionsを題材にしたことで「GitHubコミュニティへの貢献が大きい」と、判断されたのではと推測しています。ちなみに推測なのは、選出されても理由が明示されないためです。
また当たり前のようにコミュニケーションはすべて英語です。筆者は英語がかなり苦手なので、選考プロセスで求められた英作文が地味に大変でした。仕方ないので素案を日本語で書き、それをChatGPTで翻訳して切り抜けました。なおそのとき作成した文章は、そのまま筆者のプロフィールページに掲載されています。英語がおかしかったらChatGPTのせいです。
GitHub Starsへ推薦しよう!
GitHub Starsは推薦制と述べましたが、推薦自体は誰でもできます。そこで「この人はもっと評価されるべき!」という人に心当たりがあるなら、ぜひ推薦しましょう。推薦方法は『Nominate a Star』へアクセスして、アカウント名と推薦文を入力するだけです。
推薦文は英語ですが、180文字以内と短めです。影響を受けたOSS・書籍・コミュニティなどがあるなら、それをぜひGitHubへ教えてあげましょう。英語が苦手なら、生成AIを活用するのも手です。次のようなプロンプトを投げると、英語の推薦文をいい感じに作成してくれます。
あなたは英語の文章作成を手伝うアシスタントです。
GitHub Stars Program へノミネートするため、英語の「推薦文」を作成してください。
次の要件を厳守してください。
基本ルール:
1. 「they」ではじめること。
2. 180文字(スペース含む)以内にすること。
3. 「候補者の活動」をもとに、OSS・コミュニティ・GitHubへの貢献を簡潔にまとめること。
4. 候補者の活動に応じて、inspire・educate・influenceの要素を反映させること。
5. 推薦文の日本語訳もあわせて出力すること。
6. 推薦文を改善するため、どのような追加情報があるとよいかをアドバイスすること。
候補者の活動:
例:
- OSS「◯◯」の開発
- 書籍「◯◯」を執筆
- コミュニティ「◯◯」を運営
- その他:カンファレンス登壇・技術教育・OSSの普及活動・ブログ執筆など
(候補者の活動は1つでもOKです。短くても大丈夫なので、日本語で自由に書いてください!)
たとえば筆者を推薦するなら、候補者の活動に『書籍「GitHub CI/CD実践ガイド」の執筆
』などと書きます。そのうえでChatGPTなどへプロンプトを投げれば、次のような英文が出力されます。
They authored GitHub CI/CD Practical Guide,
helping developers adopt CI/CD with ease.
Their work educates and inspires the community,
making automation and DevOps more accessible.
これをさらに改善してもよいですし[5]、そのまま貼りつけて提出してもよいでしょう。もしかするとあなたの推薦がきっかけで、新たなGitHub Starsが誕生するかもしれません!
まとめ
本記事ではGitHub Starsを紹介しました。正直まったく予期していませんでしたが、選ばれてみると結構うれしいです。貢献しようというモチベーションも上がります。本記事がGitHub Starsの認知度を向上させ、ソフトウェアコミュニティの発展につながれば幸いです。
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GitHub Starsの位置づけは、公式ブログ「Introducing the GitHub Stars Program ⭐️」でも説明されています。記事を読むと、「さまざまな種類の活動を掘り起こしたい」という意図が見受けられます。 ↩︎
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このGitHubからの連絡で、筆者は自分が推薦されたことを知りました。本当に突然送られてきます。 ↩︎
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他にもGitHubの人と、直接ミーティングをする機会なども提供されます。ただ英語なうえに時間設定が午前二時とかなので、個人的に使う機会はなさそうです。 ↩︎
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頑張って探したつもりですが、もし卒業生に抜けがあったらコッソリ教えてください。 ↩︎
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先ほどのプロンプトを使用すると、改善するためのアドバイスも一緒に出力されます。そちらを参考に追加情報を入力すれば、より洗練された推薦文が作成できます。 ↩︎
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