HCI研究者の心理統計ノート:Read Me First
Introduction
「HCI研究者の心理統計ノート」 シリーズ は、私が Human Computer Interaction (HCI) 研究に取り組む中で調べた・使った心理統計手法をまとめたものです。
元々は所属研究室の Scrapbox に書き溜めていましたが、他の学生に勝手に書き換えられてしまう可能性があるという点が肌に合いませんでした。そこで、しばらくは Notion に個人的に書き溜めていたのですが、絶妙にデザインが物足りなかったことと、後輩や他の方の役に立ちたい・公開してみたいと思い立ったことから、今回 Zenn で記事にしてみることにしました。
インターネット上にはいろいろな方がたくさんの記事を書いてくださっていますが、本シリーズは特に "かゆいところに手が届く" を目指してまとめたいと思っています。例えば、最もシンプルな t 検定についてはたくさんの記事がありますが、t 検定を使用するための正規性や等分散性の仮定を確認する方法まで載せている記事はあまり見覚えがありません。これでは実際に研究者が t 検定を実施する際にやらなければならないことの一部しかサポートできていません。したがって、本シリーズでは、適切な検定の選び方、前提条件の確認、検定の実施、効果量の計算、下位検定の実施、論文への書き方など、一つの解析に関して実際に必要になってくる項目をすべてサポートした、より実用的な内容にしたいと思っています。
本シリーズでは、主に R のサンプルコード を提供しています。再利用可能性が高くなるようにコーディングしたつもりです。ちなみに、その他の統計ソフトウェアを使うことも信頼性の観点などから十分に良い選択肢だとは思いますが、例えば統計ソフトに未実装の新しい手法も実行できるなど R の方が良い場面はたくさんあるように思います。プログラミング未経験者にはやや敷居が高いかもしれませんが、多少学習コストがかかっても、R がおすすめです。
Disclaimer and License
まず注意していただきたいのが、私は統計学の専門家ではないということです。そもそも自分の研究のためのメモでもありますので、もちろん可能な限り信頼度の高い情報を記載したいとは思っていますが、それでも間違っている可能性はあります。したがって、本シリーズの内容の使用については、ご自身の責任でお願いいたします。本シリーズのご利用に際して、いかなる不利益・損害が発生したとしても、当方は責任を負わないものといたします。
また、本シリーズの内容は、必ずしも網羅的に心理統計手法をまとめたものではありません。私が調べた・使った手法から順に記事にしていく予定なので、歯抜けになってしまう可能性があります。また、私が理解できていない手法についても記事にすることは難しいです。
最後に、本シリーズの記事はすべて MIT License の下で配布します。
Copyright (c) 2023 Takato Mizuho
Released under the MIT License
https://opensource.org/licenses/mit-license.php
Contents
1要因 / One Factorial Design
2水準、参加者間比較 / Between-subject
正規性 | 等分散性 | 検定 |
---|---|---|
○ | ○ | スチューデントの t 検定 / Student t-test |
○ | - | ウェルチの t 検定 / Welch t-test |
- | ○ | ウィルコクソンの順位和検定 / Wilcoxon rank sum test |
2水準、参加者内比較 / Within-subject
正規性 | 検定 |
---|---|
○ | 対応のある t 検定 / Paired t-test |
- | ウィルコクソンの符号順位検定 / Wilcoxon signed-rank test |
3水準以上、参加者間比較 / Between-subject
正規性 | 等分散性 | 検定 |
---|---|---|
○ | ○ | 一元配置分散分析 / One-way ANOVA |
○ | - | ウェルチの一元配置分散分析 / Welch one-way ANOVA |
- | ○ | クラスカル・ウォリス検定 / Kruskal-Walis test |
3水準以上、参加者内比較 / Within-subject
正規性 | 検定 |
---|---|
○ | 繰り返しのある一元配置分散分析 / One-way repeated measures ANOVA |
- | フリードマン検定 / Friedman test |
2要因 / Two Factorial Design
対応なし要因 × 対応なし要因 / Between-subject Design
正規性 | 検定 |
---|---|
○ | 参加者間計画における二元配置分散分析 / Two-way ANOVA for between-subject design |
- | 参加者間計画における整列ランク変換を施した二元配置分散分析 / Two-way ANOVA with ART for between-subject design |
対応あり要因 × 対応あり要因 / Within-subject Design
正規性 | 検定 |
---|---|
○ | 参加者内計画における二元配置分散分析 / Two-way ANOVA for within-subject design |
- | 参加者内計画における整列ランク変換を施した二元配置分散分析 / Two-way ANOVA with ART for within-subject design |
対応あり要因 × 対応なし要因 / Mixed Design
正規性 | 検定 |
---|---|
○ | 混合計画における二元配置分散分析 / Two-way ANOVA for mixed design |
- | 混合計画における整列ランク変換を施した二元配置分散分析 / Two-way ANOVA with ART for mixed design |
未定 / To Be Determined
- ベイズ統計
- 線形混合効果モデル
- 相関分析
Discussion