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Power Appsの「Plan Designer」を一足先に体験してみた

2024/12/22に公開

概要

Plan Designer(プランデザイナー)は、Power Apps[1]に追加予定の新機能です。Copilot[2]を活用してアプリの設計を支援し、複数のPower AppsアプリやPower Automate[3]フローを効率的に作成します。

現在、Power Appsには主に以下4つのアプリ作成方法があります

メニュー名 解説
Copilotで開始する アプリ概要をCopilotに伝えることで、シンプルなアプリを迅速にテーブル[4]から作成する方法
データで開始する アプリ上で使うデータ(テーブル構造)が決定している場合、データからアプリを作成
ページデザインで開始する アプリを画面から作成をして、データ(テーブル)と業務上のルールやデータ処理/連携ロジックを手動で画面と組み合わせながら作成
アプリ テンプレートで開始する Microsoftが提供しているテンプレートから作成(テンプレートにあるアプリをそのまま利用するか、カスタマイズして利用)

Plan Designerは、アプリ作成の5つ目の選択肢で、複雑なビジネス要件に対応したアプリを作成する際に利用できます。この機能を使うと、アプリの要件を入力したり、設計資料や参考資料をファイルとして添付して、Copilotにアプリ作成プランを提案させることができます。Copilotが提案するアプリの設計や計画を確認しながら進められるため、「Copilotで開始する」とは異なる方法でアプリ開発を進めることが可能です。

本記事ではPlan Designerを用いたアプリの作成方法や[Copilotで開始する]との違いを紹介したいと思います。

初期設定

本記事をお読みの方も試せるように手順を準備していたのですが、Microsoft FormsのEAPへの早期アクセス申請フォームは現在受け付け停止状態です。

Plan Designerの使い方

以下にPlan Designerの使い方を解説していきます。

新しいPower Apps体験を有効にする

  1. EAPのPlan Designerを利用する場合は、URLが異なり以下のURLにアクセスします
    https://make.preview.powerapps.com/
  2. 右上に切り替えトグルボタン[Try the new Power Apps experience]が表示されるので、オンに切り替える
  3. オンにするとCopilotで開始する画面の表示が下図のように切り替わり、左メニューのApps上部に新たにPlanが表示される

Plan Designerの利用

Plan Designerは以下の4つのステップでアプリの設計と作成していきます。

  1. 登場人物の定義:ビジネス課題(プロンプトで入力)と参考資料(添付ファイル)からCopilotが登場人物の提案と確認
  2. データ構造の定義:アプリで利用するデータ構造の提案と確認
  3. ユーザー体験の設計:アプリ・フローの設計と確認
  4. アプリ・フローの作成:1~3確定後、アプリやフローを作成し、個別の画面で修正

プロンプトの入力と参考ファイルの添付

  1. 画面上部のプロンプト入力欄に作りたいアプリの概要を英語もしくは日本語で入力する
  2. プロンプト以外にも添付したい画像や資料があれば、追加し、送信ボタンを押下する

登場人物の確認

  1. 入力したプロンプトと画像等の添付資料はビジネス課題と参考資料して定義され、アプリの構成を推論し、登場人物を提案する


機器ユーザー要件(翻訳)

機器マネージャ要件(翻訳)
3. 要件に認識の齟齬がなければ、Accept(受け入れる)をクリックする

データ構造の定義

  1. 登場人物構成が確定されるとデータ構造をCopilotが提案する


ER図

特定テーブル上で三点リーダークリックし、テーブル操作(サンプルデータ表示、テーブル削除等)が可能
3. 内容を確認して問題ない場合、Accept(受け入れる)をクリックする

ユーザー体験(アプリやフロー)の提案

  1. Copilotが最後にUXの提案で、アプリ(キャンバスアプリ[7]、モデル駆動型アプリ[8])、クラウドフローをCopilotが提案する

    アプリ詳細はこの時点で確認できず、アプリやフローにマウスオーバーすると利用者、利用テーブルと簡単なアプリやフローの説明が確認できる
  2. 提示されたアプリやクラウドフロー要件で作成が問題なければ、Accept(受け入れる)をクリックする


3. 以下のメッセージが表示されるので、テーブルを保存して、アプリ、フロー上の+ボタンを押下してそれぞれの画面でさらに修正を加えていきます


ユーザー申請用のキャンバスアプリのカード
テーブル保存後、アプリ、フローカード右下の+ボタンをクリックする

キャンバスアプリのカード

ユーザー申請用のキャンバスアプリ

モデル駆動型アプリのカード

管理用のモデル駆動型アプリ

クラウドフローのカード

「Copilotで開始する」との違い

「Copilotで開始する」はアプリ要件をプロンプトから入力するとデータ構造を提案する点はPlan Designerと同様ですが、作成できるアプリは1つだけで複雑なビジネス要件のアプリは作成が難しいです。
Plan Designerを試して、「Copilotで始める」との違いを以下にまとめました。

アプローチ Copilotで開始する Plan Designer
適用範囲 Copilotと対話しながらキャンバスアプリかモデル駆動型アプリのどちらか1つを迅速に作成 Copilotにアプリ作成要件を提示し、複雑な要件(登場人物の役割)を満たす複数のアプリとフローを作成、必要に応じて各アプリ内で細かくカスタマイズ可能
データ構造の設定 複数テーブルを作成可能だが利用は1つのアプリ限定 ユーザーの役割も考慮して複数テーブル設計提案と作成可能で複数アプリやフローで利用前提で連携可能
クラウドフロー作成と連携 別に作成し、手動連携[9] 同時作成[10] (※試した環境で作成は確認できなかったが将来的そうなると期待)
使いやすさ Copilotと対話しながらテーブルやアプリ開発ができる 大規模開発など複雑なビジネス課題解決をする際の設計と同時に複数アプリ、フロー作成が必要な上級者向け

結論

今回Plan Designerを試してPower AppsのCopilot駆動開発(AI駆動開発)が本格化してきたことを感じました。従来のCopilotと対話してアプリを作成する「Copilotで開始する」では、Copilotと対話しながら1つのアプリを作成はできるものの、より複雑な要件が必要になる複数アプリや複数フローをアプリと連携するのは難しい印象でした。
一方、今回のPlan Designerでは、プロの開発者が行うアプリ設計そのものをCopilotと対話を通じて進められる点が大きな特徴です。これにより、アプリ要件や既存の資料をもとにCopilotが提案したユーザーの役割、データ構造をもとに複数のアプリやフローを自動生成してくれるため、作成者は個々のアプリの画面設計や機能詳細に集中し、アプリ全体の品質を高め、効率よくアプリが作成できると感じました。

参考サイト

Power Apps Blog:What’s new in Power Apps: November 2024 Feature Update
Power Apps Blog:Intelligent apps: Now created with a plan, optimized with agents, and scaled on a fully managed platform
Power Apps でユーザー中心のインテリジェントソリューションを構築するには、まず計画から始めましょう。(プランデザイナー)

脚注
  1. Microsoft Power Platformの業務向けアプリ作成ツールでノーコード、ローコードでアプリを作成できます ↩︎

  2. Copilotは、Microsoftが提供するAI支援ツールのブランド名で、AI技術を活用してユーザーの生産性や創造性を向上させることを目的とした製品です。Power AppsのCopilotは『どんなアプリを作りたいか』を伝えると、自動で必要なデータを元にアプリを作る準備をしてくれます。 ↩︎

  3. Power Automateは、Power Apps同様、Power Platformに含まれるMicrosoftが提供するクラウドベースのサービスで、繰り返しの作業やプロセスを自動化するためのツールです。 ↩︎

  4. Power Appsでは、データの保存先としてデータベースのテーブルを使用します。テーブルには、テキスト型、数値型、選択肢型など、さまざまなデータ型を定義できます。これにより、用途に応じたデータ構造を作成し、データの読み書きに活用することが可能です。 ↩︎

  5. Microsoft Early Access Program (EAP) は、Microsoftが提供する製品やサービスの特定の機能やバージョンを、正式リリース前に一部の顧客やパートナーに限定して提供するプログラムです。 ↩︎

  6. Microsoft Dataverse は、データを安全かつ効率的に管理し、アプリケーションから利用可能にするためのクラウドベースのデータプラットフォームです。これは、Microsoft Power Platform の中心的なデータ基盤として利用され、多くのMicrosoft製品(Dynamics 365、Power Apps、Power Automateなど)と統合されています。 ↩︎

  7. Power Appsキャンバスアプリは、MicrosoftのPower Platformの一部で、カスタマイズ性が高く直感的なインターフェイスを用いて、アプリをノーコードまたはローコードで作成するための開発ツールです。具体的には、ドラッグ&ドロップでUIをデザインし、様々なデータソースと連携するアプリを構築できます。 ↩︎

  8. Power Apps モデル駆動型アプリは、Microsoft Power Platformの一部で、データ構造と業務プロセスを重視したアプリをローコードで作成するためのツールです。このアプリは、Microsoft Dataverse(データプラットフォーム)を基盤としており、データモデルに基づいた動的なアプリケーションを作成できます。 ↩︎

  9. Power Appsの「Copilotで開始する」からは作成できないため、別途Power Automateの画面上の「記述して作成する」からクラウドフローをCopilotで作成し、利用する必要がある ↩︎

  10. アプリだけでなく、クラウドフローも同時に生成してくれる ↩︎

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