LLM時代はテキスト形式でドキュメントを書く 1. ツール選定
こんなタイトルで社内勉強会を開催するので、話す内容をここにも書きます。
LLM時代のドキュメント管理
2025年はAIコーディングエージェントが登場し広まった年ですが、これからは従来のOfficeファイルではなくテキスト形式でドキュメントを管理したほうがAIとの親和性が高まるよという話です。
どのLLMツールを利用するか?(ChatGPTを利用しない理由)
ここから話すのはChatGPTのようなブラウザメインのLLMツールの事ではなく、CLINEやGitHub Copilot Coding Agent、Claude codeやCodexなどIDEやアドオン、またはCLI型で動作するAIツールのことです。本記事ではこれらのツールをAIコーディングエージェントと呼称します。
LLM単体の性能としては(裏側で利用しているLLMモデルが同じであるため)従来のブラウザツールと変わりませんが、以下が大きなメリットとなります。
- ディレクトリを横断的に読み込むことができる
- コマンドラインツールのように、軽量で素早い動作が可能
- こちらからの依頼に従って、ファイル作成やファイル編集をフルオートで実施してくれる
- プログラムの場合、テスト実行やデプロイまで実施してくれる
メリット、と上げましたが、(面倒ながら)従来のChatGPTでも同様の作業は可能でした。
- 普段使いのドキュメント、プログラムのライブラリをブラウザ経由でChatGPTにアップロードする
- ChatGPTに対してドキュメントやプログラムの修正箇所を指定し、依頼する
- 得られた出力を、ローカルPCにコピー&ペーストして反映する
- プログラムの場合、手動でテスト実行やデプロイまで実施する
ただ、このやり方は面倒だし破綻します。
いや、1回限りの修正ならいいんですよ。けど、ローカルPCにコピー&ペーストし、修正してまたChatGPTに質問したい場合、修正した版を再度ChatGPTにアップしなければいけない。普通のドキュメントって修正は1回2回じゃなく、数えられないほど修正しますよね。そのたびにChatGPTに修正版をアップして質問しますか?
プログラムの場合は、4. テスト実行やデプロイが大きすぎる。ブラウザ型の場合、手元で実行した結果のログや生成結果を全てChatGPTにアップしなければいけない。AIコーディングエージェントの場合、既にAIコーディングエージェント自身が実行結果を知っているので、自律的にエラーを修正し自動的に再実行、成功するまで何時間でも繰り返してくれます。
※ この驚異的な自己修正能力が、AIコーディングエージェントが爆発的に広まった理由でもあります。
ブラウザ型ツール・コーディングアシスタント・AIコーディングエージェントの違い
| 観点 | ブラウザ型ツール(ChatGPT) | コーディングアシスタント | AIコーディングエージェント |
|---|---|---|---|
| 作業単位 | 会話(Q&A) | 行・ファイル単位の編集提案 | タスク/ストーリー単位(複数ファイル・ツール跨ぎ) |
| UI | ブラウザ/チャット | IDEのサジェスト/パネル、CLI | IDE/CLI |
| コンテキスト | チャット履歴+貼付テキスト | 開いているファイル/プロジェクト | ディレクトリ全体 |
| 強み | 誰でも使える・汎用性がある | 精度の高い補完・局所編集が速い | ノーコードでアプリケーション開発が可能 ディレクトリ全体を読み込ませて、文脈理解させる 既存の外部ツール連携(コマンド履歴・PR・CIログで追跡) |
| 弱み/リスク | 同じ作業の繰り返しは面倒 ファイルを利活用は煩雑 |
コーディングができないと使えない "素早くコーディングができる"以上の価値はない |
学習コストが高い 誤操作時のリスクが高い |
| 向いている場面 | 初期検討・文章作成・要件定義 | 既存コードの改善・テスト追加 | 小~中規模の機能追加や反復的保守作業の自動実行 |
なぜ「従来のOfficeファイルではなくテキスト形式でドキュメントを管理したほうがAIとの親和性が高まる」のか?
AIコーディングエージェントが、Office形式のファイルに対応していないからです。仮にAIコーディングエージェントでOffice形式のファイルを読み込むようになれば話は違ってきますが、以下の2点が懸念点となります。
懸念1. AIコーディングエージェントのメイン利用者であるプログラマーが必要としていない
AIコーディングエージェントは、レッドオーシャン。各社が性能UPのために改善を重ねてます。最先端のものでもプログラマーからの要求に十分に応えられず、まだまだ改善が必要な分野です。そんな中、需要が低いと思われるOfficeファイルへの対応を行っている暇はないと考えます。
※ ネイティブ機能で実装される可能性は低そうですが、MCPなどの仕組みで読み込めるようになるかもしれません。
懸念2. テキストファイルに比べてOfficeファイルは容量が大きく、コンテキスト汚染が発生する
懸念1よりもこちらの方が根本的な問題です。LLMの仕組み上、プロンプトや読み込むファイルの多さ・長さが増えるほど、1つ1つに対する注目度が下がり、不正確な結果が出力されます。よって、LLMに依頼する時は、出来るだけ短く内容の詰まったプロンプトを用意したり、読み込ませる外部ファイルを限定させ、必要な部分だけを読み込ませるようにします。
このような苦労をして1文字でもよけいな文字列をLLMに投げないようにしようとしている中で、メモ帳とWordで、同じ「あいうえお」と書いたファイルがあります。


テキストファイルだと15バイト

Wordファイルだと13,616バイト

Officeファイルというだけで、LLM視点だと超大容量ファイルの割に中身がスッカスカのものとなり、コンテキストが汚染されてアウトプットが著しく低下します。
以上に理由より、AIコーディングエージェントを利用する場合、当面はテキスト形式でドキュメントを管理した方がよい、と言えます。
どのAIコーディングエージェントを利用するか?
2025年、世はAIコーディングエージェント時代、ということで、数10種類のAIコーディングエージェントがリリースされています。
| CLI型 | アドオン型 | エディタ型 |
|---|---|---|
| Claude Code | Cline | AWS Kiro |
| Gemini CLI | GitHub Copilot Agent Mode | Cursor |
| Codex CLI | GitHub Copilot Coding Agent | Devin |
| GitHub CLI | JetBrains Junie | Replit Agent |
| Cursor CLI | Jitera | Windsurf |
| Goose | Roo Code | |
| Jules | Tabnine | |
| OpenHands | ||
| Rovo Dev | ||
| OpenCode(opencode) |
AI駆動開発ツール:コーディングエージェントとTextToAppまとめ(2025年9月版) - Publickey
有名どころは以下だと思います。
- Claude Code
- Gemini CLI
- Codex CLI
- Cline
- Github Copilot系
- Cursor
この記事ではGithub Copilot系(Github Copilot Coding Agent)を前提に進めていきます。
理由は以下。
理由1. 無料で使い始めることができる
回数限定ですが、無料で使えるので試しに使うのにぴったりです。Claude CodeやCodex CLIはサブスク契約か従量課金が必要となります。
理由2. エンタープライズ環境で採用されやすい = 会社で使い始めやすい
普通のIT企業はGithubやそれに準ずるサービスを使っているでしょうし、GithubのAIコーディングエージェントです、で説明がつくと思います。例えばClineの稟議を通すとすると、上司は名前を知らないし、開発している会社ってどこ…?って感じで説明に苦労します。
GithubはMicrosoft傘下ということで、プライバシーや情報管理面でも安心して使えますし、実際、Githubの服部さんも「SNSではClaudeやGeminiが盛り上がってるけど、一番利用者が多いのはGithub Copilot Coding Agent」って言ってました。
理由3. CLI型は取っつきづらいので、始めるならアドオン型・エディタ型がよい
私も今となってはClaude CodeやCodex CLIを使っていますが、最初はCILNEをずっと使っていました。AIコーディングエージェントという新概念を使い始めるだけでも大変なのに、Claude CodeやCodex CLIはWSL2の概念やLinuxの操作、設定ファイルの書き方など覚えることが多いので、心理的負担を少しでも減らすべく、アドオン型・エディタ型から始めるのがいいと思います。
そういった意味ではCursorはいいとこついてますね。
理由4. トップクラスのAIコーディングエージェントの性能は似たりよったり
正直言うと、Claude CodeとCodex CLIが頭1つ抜けている気がしますが、AIコーディングエージェントというだけで性能はある程度保証されているので「性能」の優先度は低くして良いと思います。
以上の理由より、Github Copilot Coding Agentを利用して進めます。
ちなみにメジャーなAIコーディングエージェントのトレンドは以下となっています。

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