Claude Code がウェブ・iOS版を正式リリース!CLI版との違いなど
はじめに
2025年10月20日、Anthropic社がAIコーディングアシスタント「Claude Code」のウェブ版とiOS版をリリースしました。これまでCLI(コマンドラインインターフェース)でのみ利用可能だったClaude Codeが、ブラウザとモバイルデバイスからアクセスできるようになり、開発者の作業環境が大きく広がりました。
本記事では、すでにClaude Codeの存在を知っている方向けに、web版の新機能、CLI版との違い、そして実用的な活用シーンを解説します。
Claude Codeについて
Claude Codeは、Anthropic社が提供するAIコーディングエージェントです。従来のコード補完ツール(GitHub Copilotなど)を超えて、自律的なコード生成を実現するのが最大の特徴です。
Claude Codeのビジネス実績(2025年5月本格リリースから5ヶ月):
- ユーザー数が10倍に成長
- 年間換算で5億ドル以上の収益
- Claude Code自体の90%がAIモデルで記述されている
CLI版 vs Web版:何が変わったのか
CLI版の課題と制約
従来のCLI版の問題点:
- Node.js実行環境とAPIキー設定が必要 → 非技術者にはハードル高い
- ターミナル操作に不慣れなデザイナーやPMは導入に苦労
- ローカル環境のセットアップとメンテナンスが必須
- 環境構築の失敗でチーム導入が進まないケースが頻発
Web版の主な改善点
1. ゼロセットアップでの即座利用
-
claude.com/code
にアクセスするだけで利用開始 - ローカルソフトウェアのインストール不要
- ブラウザ認証のみで全機能にアクセス可能
- iPhone/iPadアプリからもタブとして利用可能
2. クラウドベース実行の利点
- Anthropic管理のホストコンテナで実行
- セッション履歴の自動保存
- どのデバイスからでもアクセス可能
- チーム全体で作業履歴を共有可能
3. 「Teleport」機能による柔軟な移行
- Web版での作業内容をCLI版にコピー可能
- チャットトランスクリプトと編集ファイルを一括転送
- ブラウザで開始→ローカルCLIで継続というハイブリッド作業が可能
4. 非技術者との協業が容易に
- 直感的なブラウザUIでクロスファンクショナルチームが参加可能
- デザイナーやプロダクトマネージャーもコーディングタスクに関与できる
- 技術的な障壁を取り除き、チーム全体の生産性向上
処理性能の比較
CLI版の優位性:
- ローカル環境での実行により3-5倍高速な処理
- 複数ファイルの同時編集能力
- マシン上のどこからでも即座にアクセス可能
Web版の特徴:
- 処理速度よりも「利便性」と「アクセシビリティ」を重視
- クラウド実行により環境差異を排除
- 出力品質はCLI版と同等(PRの品質は区別不可能)
結論: 速度を求めるならCLI版、チーム協業と利便性を求めるならWeb版という住み分け。
並列エージェント実行(CLI版・Web版共通)
Subagents(サブエージェント)機能
Claude Code(CLI版・Web版両方)では、複数のAIエージェントを並列実行できます。Web版では、このサブエージェント機能がブラウザUIから直感的に利用できるようになっています。
並列実行の仕組み:
- 各サブエージェントが独立したコンテキストウィンドウを持つ
- 異なるリポジトリで同時にコーディングタスクを実行可能
- Claude 4は複数ツールを同時使用(Web検索、ファイル読み取り、コード実行を並行処理)
実際の活用例:
エージェント1: リポジトリAでバグ修正
エージェント2: リポジトリBで新機能実装
エージェント3: リポジトリCでテストコード作成
エージェント4: ドキュメント更新
エージェント5: 複数の検索クエリを並列実行して関連情報を抽出
すべてのエージェントが同時に作業し、結果を統合して包括的なレポートを返します。
並列エージェントの実用シーン(2025年9月の開発者ワークフロー)
アーキテクト+実装の分離:
- アーキテクトエージェントが実装計画を反復的に作成
- 計画を複数の実装エージェント(Claude Codeの新規インスタンス)にレビュー&実装させる
- 同一リポジトリの複数チェックアウトやgit worktreeで並行作業
- 各エージェントの結果をマージして完成
大規模コードベースでの効率化:
- サブエージェントごとに異なる検索クエリを実行
- 関連する抜粋のみを返して統合
- コンテキストウィンドウの制限を実質的に拡張
注意点とトレードオフ
並列エージェント実行のコスト:
- トークン使用量が増加(複数エージェント分)
- エージェント間の競合を避けるための調整が必要
- 慎重なオーケストレーションが求められる
推奨されるプラン:
- 大量の並列タスクを実行する場合はMaxプラン(月額$100-$200)が推奨
- Proプラン(月額$20)ではレート制限に注意
料金プラン
プラン | 月額料金 | Claude Code利用 | 推奨用途 |
---|---|---|---|
Pro | $20 | ✅ 利用可能 | 個人開発者、小規模プロジェクト |
Max | $100-$200 | ✅ 利用可能 | 並列エージェント実行、チーム開発 |
Free | $0 | ❌ 利用不可 | - |
重要: Web版とCLI版は同じレート制限を共有します。
競合との比較
ツール | 特徴 | タイプ | 並列実行 |
---|---|---|---|
Claude Code | 自律的なコード生成、並列エージェント実行 | エージェント型 | ✅ 可能 |
GitHub Copilot | リアルタイムのコード補完 | 補完型 | ❌ 不可 |
Cursor | エディタ統合型AIアシスタント | 統合型 | ❌ 不可 |
Claude Codeの優位性
- 自律性と並列性: 開発者の介入を最小限に抑えつつ、複数タスクを同時処理
- Web/CLI両対応: 用途に応じて使い分け可能
- 実績のある品質: Claude Code自体の90%がAnthropicのAIモデルで記述されており、実用性が証明済み
iOS版の早期プレビュー
Claude Code iOS版も早期プレビューとして提供開始されました。
モバイル開発の可能性:
- 通勤中のコードレビュー - 移動中にPull Requestを確認
- 緊急バグ対応 - 外出先からバグ修正を指示
- 簡易的な実装 - 小規模な機能追加をモバイルから実行
モバイル開発環境の実用性については、今後のフィードバックに基づいて改善される予定。
セキュリティとプライバシー
隔離されたサンドボックス環境
各Claude Codeタスクは、完全に隔離された環境で実行されます:
- 他のタスクとの干渉なし
- セキュアなプロキシサービス経由でリポジトリアクセス
- 設定可能なネットワーク制限
リポジトリアクセスの制限
開発者は、Claude Codeに許可するリポジトリを細かく制御できます:
- 特定のリポジトリのみアクセス許可
- 読み取り専用 vs 書き込み権限の設定
- パッケージダウンロードの制限
これにより、機密情報の漏洩リスクを最小限に抑えます。
まとめ
Claude Code Web版のリリースは、AIコーディングツールの進化におけるマイルストーンになりそうです。
主なポイント
✅ CLI版の技術的障壁を完全に排除 - ブラウザから即座にアクセス可能
✅ 並列エージェント実行が最大の武器 - 複数タスクを同時処理して生産性向上
✅ Teleport機能でWeb/CLI間を柔軟に移行 - ハイブリッド作業が可能
✅ チーム協業が容易に - 非技術者も参加できるUI
✅ iOS版も早期プレビュー開始 - モバイルからのコーディングが容易に
推奨される使い方
CLI版が向いている場合:
- 処理速度を最優先する開発者
- ターミナル操作に慣れている
- ローカル環境での完全な制御が必要
Web版が向いている場合:
- チーム協業を重視する
- 非技術者を含むクロスファンクショナルチーム
- どこからでもアクセスできる柔軟性が必要
- 並列エージェント実行でタスクを効率化したい
注意点
- ベータプレビュー段階のため、不具合の可能性
- 大規模な実装は人間のレビューが必須
- Pro/Maxプランが必要
- AIツールの効果は使用状況により大きく異なる(METR研究参照)
AIコーディングツールの効果に関する現状の知見
2025年7月、METR研究が衝撃的な結果を発表:
- 経験豊富な開発者16名を対象とした実証実験で、AIコーディングツールが生産性を19%低下させていることが判明
- 開発者は「24%高速化する」と予測していたが、実際には19%多くの時間を要した
- さらに実験後も開発者は「20%高速化した」と誤認していた(過度の楽観主義)
生産性低下の主な要因:
- 大規模で複雑なコードベース(平均10年の歴史)ではAIの性能が制限される
- AI生成コードの44%未満しか実際には採用されず、レビュー・修正に作業時間の9%を消費
- 文書化されていないプロジェクト固有の暗黙知をAIは活用できない
一方、Anthropic社内では異なる結果:
- 2025年10月、Anthropic CEOは「社内チームの90%のコードがAIによって書かれている」と報告
- Claude Code自体の90%もAIモデルで記述されている
- 年間換算で5億ドル以上の収益を生成
業界の見解は分かれている:
- IBM CEO: 「AIが書けるのは20-30%程度」
- OpenAI CEO: 「2025年末までにAIは最高のコーダーになる」
- 実証研究: 「経験豊富な開発者には逆効果の可能性」
現時点での結論: AIコーディングツールの効果は、使用状況、開発者の経験レベル、プロジェクトの複雑さによって大きく異なる。Claude Codeのような自律型エージェントは、特定の条件下では高い生産性を発揮するが、万能ではない。
参考リンク
更新日: 2025年10月21日
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