自作キーボード初年度活動振り返り (入門~PCB設計)
この記事はキーボード #3 Advent Calendar 2021 の24日目です。
(2023/11/03 加筆)はじめに
こんにちは。techmechです。
昨日はyoheさんの「ケースのはなし」でした。
人気のM0ii0シリーズの設計の勘所、非常に示唆に富んだ内容でしたね。
キーボードの興味を持って一年ちょっと、本日は初心者の私が、今年組立てたキーボードの中で、特にオルソリニアを中心にご紹介していこうと思います。
(これを機にオルソリニア配列のキーボードに手を出してくれる人がいたらいいなぁという淡い期待を抱きつつ書き綴ります!)
自キに出会う前
Mionix Wei (自宅用)
Keychron K2 (会社用)これらのキーボードを使っていました。これらに限らず使っていて気になっていたのは、
色々なキーボードを使っていると、Fnキーによる別のキーの割り当てが、キーボードにより違う場合がある点でした。慣れるために訓練する気になれませんでした。
そこで一部キーレイアウトの変更をしたくて、AHKというソフトウェアを使用していたのですが、会社でも同じ環境にしたいが権限制限があり実現できず、それならハードウェアでキーレイアウトが変更できるものがないかと探しているうちに、自作キーボードというジャンルがあることを知りました。
(その他細かい点として、上記二つのキーボードは、キーキャップが汚れやすい(両方ともABSで肉薄なキーキャップにマットな質感の塗装が施されている為)皮脂等が付着し取れにくかった印象)。
自作キーボードとの出会い
40~50%キーボード
Planck EZ (ZSA)
- 47keys
- ortholinear
- ABS Case
いわゆる自作キーボード/カスタムキーボードのジャンルで初めて手を出したのがこのキーボードです。
右も左もわからない状態だったので、組み立て不要のキーボードを購入しました。
まずはキーアサインを自由に設定するために、QMK対応のものを選定、さらにスペース以外すべて1Uのオルソリニアは、キーアサインに合わせたキーキャップの配置換えも制約が無い為(DSAやXDA等、高さが一様なプロファイルの場合)、非常に魅力を感じました。
結果的にこのキーボードはオルソリニア入門に非常に良かったです。慣れるのに少し時間がかかりましたが、慣れると指の移動量が非常に少なくなり結構感動しました。
ただし、しばらく使っているうちに、数字行が無い点がツラく感じたので、次は数字行があるキーボードを検討することにしました。また筐体がABSのため打鍵音が気になるようになってきたので、次に買うキーボードはもうちょっと重厚なつくりのものが良いなと考えていました。
これは今でも使っていますが、カーソルキーのみ横一列だとしっくりこなくて、キーキャップの高さを変えたり未だに試行錯誤してます。
(残念ながらPlanck EZは2023年に終売となりました。)
Keyboardio Atreus (Keyboardio)
- 44keys
- Column-Staggered
- ABS Case + Steel Plate (Integrated Plate)
以前KickStarterで見かけ、知っていたがその時は全く使える気がしなかったので見送っていました。その後Planckで40%へ思ったよりも適合できたので、他の配列も試してみようと考え購入しました。
比較的安価なのにつくりはシッカリしていてコストパフォーマンスの高いキーボードです。
初心者にはキースイッチとキーキャップまでセットになっている点も嬉しかったです。
しかし、不器用な私はPlanckEzより3キー少ない壁が大きかったです。
また両端の列にモディファイヤーキーが無いのも慣れることができませんでした。
Planckの時は通常のロウスタッガード配列に戻っても、そこまで違和感なく使い分けることができたのですが、これは無理でした...
これを機に、暫くオルソリニア中心で行く方針となりました。
(最近久々に引っ張り出して写真撮りました。普段は箱の中...)
Nyquist (Keebio) & SP50 Case (KPrepublic)
- 58~60keys
- ortholinear
- Alminum case (SP50:Top Mount)
数字列を追加したオルソリニアということで、次は50%キーボードと決めていたが、一体型と左右分離型で悩み、ちょっと冒険してみました。
50%&オルソ&左右分離型+金属ケースが条件。
左右分離型の50%をいろいろ調べましたが、当時在庫販売ですぐ入手できるものは、NyquistとSP50の組み合わせ以外にはなかったためこの組み合わせに決めました。
KeebioにSP50へNyquistが搭載できることを直接確認後、購入。余談ですがこのとき初めてAliexpress(KPrepublic Store)を利用しました。
また、NyquistはソケットVer.が無い為、MilMaxデビューも果たしました。
Planck EZ 用にSusuwatariというMT3 Profileのキーキャップを購入したので、余りの数字列とXDA Profile のキーキャップで組立てました。
しばらく使ってましたが、左右分離型は配置の調整やケーブルが煩わしく、次第に使用頻度が減ってしまいました(両手とも無線だったら違っていたかも...)。
Preonic (olkb)
- 58~60keys
- ortholinear
- Aluminum Case (Tray Mount)
左右分離型がしっくりこなかったので、オルソリニアの本家に戻り、同じキー数のPreonicを試してみることにしました。せっかくなので、なにか一工夫しようと思い、筐体をセラコートで塗装してみました(業者へ委託)。
現在は信頼できる依頼先を見つけたので塗装に際して不安はないのですが、初めて依頼先を探すときはいろいろと大変でした...
Preonic (olkb) & JJ50 Case (KPrepublic)
- 58~60keys
- ortholinear
- Aluminum Case (Top Mount)
ケースを塗装したPreonicを使って満足していたのですが、しばらく使っているうちに打鍵感と、アンダーグローLEDがついているのにほとんど見えない点が気になってきました。
そこでPreonicと同じ配列で、トレイマウント以外、かつアンダーグローLEDがあり、をちゃんと見えるキーボードを探しました。
当時はたしかAtlasとGK6くらいしか条件に合致するものがなかったと思います(今も?)。ただしAtlasはGBが終わっていて入手できず、GK6は確か当時はKickStarterで出資を募っていたのですが資金が集まらずキャンセルとなったよう記憶しています。
そこでまたしてもKPrepublicの製品に注目しました。JJ50というPreonicクローンがあるのですが、JJ50のケースにPreonicを乗せればよいのではないかと考え、ケースを購入してみました。
届いたケースは品質に難あり(傷や加工不良が数か所あり)で泣かされましたが、それであれば前回同様塗装してみようと思い即行動。結果再塗装により上記不具合はあまり気にならなくなりました。
塗装については、がっつり艶消しにするとカッコいいけど汚れが目立ちやすいということを学びました。
(とはいえ、このキーボードが現在も一番稼働率が高いです。)
あと。JJ50はキーの間隔が19.05mmですが、Preonicは19.00㎜なので、トッププレートは自作が必要です。これもまたちょっとした学びの機会になってよかったです。
USBコネクタの穴は結構大きめなので、左右の位置合わせは適当でも大丈夫でした。
塗装とトッププレート製作の勉強になりました。
同時期にご縁がありMDAのキーキャップを譲っていただいたのですが、以降XDA等平坦なよりもスカルプチャードなプロファイル(というか主にMDAに)に傾倒していきます。
Quark (Checker Boards) & Preonic Case (olkb)
- 54~56keys
- ortholinear
- Aluminum Case (Tray Mount)
JJ50にPreonicのPCBを載せたため、せっかく塗装したPreonicケースが余ってしまいました。これを有効活用すべく、Preonicケースと互換性のあるPCBを探している中で発見した Quark というPCBを載せました。
私はPreonicやPlanckはレイヤーキーを親指で押すのですが、Quarkの配列ではそれができないので、あまり使い込まないうちに出番がなくなってしまいました...
今思えば、例えば最下段の両端にレイヤーキーを置いてみてもよいかもしれません。
もしくは、こんな配列だったら、もうちょっと頑張ったかもしれません(中央のキーをレイヤーキーに設定)。
またQuarkは悲しいエピソードもあり、いろんな要因から放置になってます...
Atlas (Cannonkeys)
- 58~60keys
- ortholinear
- Aluminum Case (Top Mount)
上記の改造Preonicに満足する日々を過ごしていたある日、Twitterでとある方からAtlasのExtra販売があることを教えていただき飛びつきました、送料も含め今までで一番高いキーボードとなりましたが、迷わず即購入。
質感、打鍵感、アンダーグローの光り方(LEDの密度とデフューザー)どれも非常に満足度が高いものでした。現在も家ではこれを主に使用しています。
実はJJ50のケースを購入したころから、ケースだけ自作しようといろいろと検討や準備を進めていたのですが、Atlasの満足度が高くPreonicサイズではEndgameとなり、ケース自作に対する制作意欲が一気に低下してしまいました。
GK6 (GizmoEngneering)
- 58~60keys
- ortholinear
- Aluminum Case (Top Mount)
到着したGK6は品質も良く外観の満足度は高かったのですが、消音フォーム等が含まれておらず、素組みだと筐体内で響く打鍵音がちょっと気になります...
現在はオプションとしてSILICONE SOUND DAMPENER が用意されているため、同時購入がお勧めです。
後述の自設計が忙しくなり、改造はペンディング...
ちなみに何度か技術的な問い合わせをしたことがあるのですが、中の人は問い合わせにとても丁寧な対応をしてくれて、非常によいベンダーさんだなぁとの印象です。
60%キーボード
D60 HHKB-layout (KBDFans)
- 58~60keys
- Raw staggered
- Aluminum Case (Gasket Mount)
はじめて60%キーボードでエントリークラスのいわゆるカスタムキーボードに手を出してみました。そもそも作りがちゃんとしているとどんな打鍵感なのか確認しておきたく、ベンチマーク用に購入しました(オルソリニアではこういった位置づけのキーボードがないので...)。
期待を裏切らず、今まで組み立てたキーボードと違い、コトコトといった打鍵音に感動しました。
各層のフォーム、ガスケットマウント構造、プレート材質、キーキャップ材質のどの要素がどれだけ影響しているかは、自分の感触としては切り分けがまだ出来ていませんが、ガスケットマウント構造のケースにオルソリニアキーボードを搭載したいと思うきっかけでした。
お手軽GH60互換PCB
cool844 (mki0002ozlet) & ABS Case (nobland)
GPK60-46A (Daraku-neko) & Kylin (KPrepublic)
GPK60-51O (Daraku-neko) & Blade (KBDFans)
これを機にいろいろな60%ケースを購入するようになりました。一方でキーキャップはオルソリニアにこだわると選択肢が少なく、みんなが購入しているようなGMKやePBTのキーキャップでもオルソリニアのオプションが無く購入を断念することが多々あったため、何か解決策がないかと考えるようになりました。
GH60互換サイズのオルソリニア
Boardwalk Professional 2 (MKUltra)
みんな大好きBoardwalkです。GH60互換のケースに搭載できるPCBが在庫販売されているのは素晴らしいと思います。またこのPCBのおかげで、様々な60%キーボードにPCBを乗せ換えて(要トッププレート製作)、オルソリニアに改造してしまえばよいんだと気づきを得られました。
ちなみにこのPCBはドーターボードも接続できるようにスルーホールが用意されているので、GH60互換も、ドーターボードを使用するケースにも搭載出来て非常によくできているなぁと思います。
(2023年に残念ながらMKUltraはクローズとなりました。現在Boardwalk Professional 2は入手できない状態です。)
ID75 (Idobao)
何気に良くできていて、比較的安価なのでおすすめです。PCBはGH60互換なので様々なケースに乗せ換えも可能です。
65%キーボード
Disarray
外見に一目ぼれして購入したキーボードですが、正直なところ出番は非常に少ないです。100%タッチタイピングではない私にとって、やはりエンターより右側にキーがあるのは正直あまり使い勝手がよくない。数字キーもあると便利そうに思いますが、十分活用できていないです。
たまにKEEB_PDのために出動、いつもは箱の中に入ってます...
GRIN Type-R (GRIN keebs)
オルソリニア以外で久しぶりに食指が動いたキーボードでした。
正直非常に使いやすいので、オルソリニアへの信仰が揺らぎそうでちょっと困ってます。
ここまでで見えてきた私の欲しいキーボード(要求仕様)
いろいろなキーボードを組立てた結果、それらに不足していると感じた要素 = 私の欲しいキーボードは下記の仕様となりました。
- オルソリニア配列
- Preonicのデフォルトの配置に近い構成
両端と最下段はモディファイヤーを置きたい
レイヤーキーは両端か、もしくは親指で無理なく打鍵可能な範囲に置きたい - GH60 互換のケースに搭載可能
入手性良いサイズのケースに搭載可能にして、衣替え楽しみたい - GMKやePBTのBase Kit のみでカバーできる
Base Kit のみでカバーできれば、アフターマーケットでも入手性が良い - キーキャップのレジェンドとデフォルトレイヤーが一致
手元を見ることもあり、また久しぶりに使う場合もすんなり使える様に - カーソルは逆T字
横一列はなじめなかった...
現時点ですべてを満たす仕様のものがなかったため、とうとう自分で作ることにしました。
記事もだいぶ長くなってしまったので、4.の項目にだけ触れておくと、設計にあたってGMKとePBTのキーキャップについてBase Kitのキー構成を確認し、どのようなサイズの選択肢があるか確認しました。確認した範囲(GMK,ePBT計20セット)では下図の赤色のキーは通常のTKLの構成キーに加えてどのセットにも含まれていました。これらのキーを選択肢に加え、上記仕様を満たす配列をKLEにて試行錯誤しました。
初めて試作したキーボード
OLSK60 (Ortho Linear for Standard Keyset 60% Size)
上記検討を基に試作したのがこちらです。
Base Kit (標準的なキーセット Standard Keysets)で構築できるよう、オルソリニアな配列はアルファキーのみとなっていますが、両端のモディファイヤーは、それぞれ内側で面合わせができているので、違和感なく使えます。最下段のみ若干慣れが必要でした。
試作段階でまだまだ改善点が多いのですが、結構使いやすく、また自身で製作したものはやはり愛着がわきます。なによりも、上記で記載した要求仕様はすべて満たしており、ケースやキーキャップの選択肢が格段に増えたのが非常に大きいです。
こちらのほうが、レイヤー切り替えがしやすく、さらに気に入ってます。
最近忙しくて改良に手を付けられていないのですが、当面はこれを改良していく予定です(現在いろいろな検証中でバラバラになってます...)。
私は先人の資料を参考に、試作しただけなので特に共有できるようなユニークな情報はないのですが、試作に当たり、ai03さんの設計ガイドPCB Designが非常に参考になったのでここに記しておこうと思います。
習うより慣れろという趣旨で、ゼロベースからキーボードのPCB設計とKiCadの操作を習得することができる非常によくできた資料だと思います。普段私はソフトウェアのチュートリアル的なものを順を追って確認していくのが苦手なのですが(あまり好きではない)、本書はキーボード設計に必要な操作を行っているうちに使用方法を覚えることができて非常に良かったです。
おわりに
興味を持ってから一年ちょっと。振り返ってみると、当初の想定範囲から外れて、キーボードの深みにはまりつつあります。
途中、オルソリニア配列以外の素敵なキーボードとの出会いもあり、多少ぶれることもありますが、基本はやはりオルソリニア。
来年は、OLSK60の完成度を上げて、少量でも販売できたらいいなーと思っています(需要があればですが...)。
この記事は、Atlasにて書かれています。
- Keyboard Atlas
- Keyswitch Everglide Aquaking 55g
- Keycap Matto3o MT3 Susuwatari
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