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MeKaBu販売の舞台裏 ―― 誰も知らない泥臭い話

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1. 導入

「完成しました!→さあ売ろう!」
…そんなに甘くなかった話。いや、むしろ 苦くて胃もたれした

技術的な課題も、デザイン上の壁も、仲間と議論しながらどうにか超えてきた。
でも最後に待っていたのは、現実という名の最終ボス――「販売」でした。

「在庫」と「欲しい人」の間には、想像以上に深い溝があった。
しかもその溝は、Excelでも埋まらないし、はんだでも埋まらない。

その溝を埋める作業こそが、販売フェーズ最大の試練だった。


2. 抽選という儀式

「早いもの勝ち」って、買えないんだよなぁ……。
人気のキーボードが入庫即完売を繰り返すのを見て、いつも思っていました。
「販売開始の瞬間にページを開く」――その緊張感は好きだけど、
みんなが平等に買える仕組みも、どこかにあってほしかった。

そして思いついたのが、抽選販売


抽選を導入する理由

「公平性を重視したい」
「混乱を避けたい」
「先着順だとBOTが勝つ」

…といった“建前”はもっともらしい。
でも本音を言えば、
「自分が早いもの勝ちで勝てない」
という、きわめて人間的な理由でした。


手探りの抽選実装

抽選の仕組みを考え始めたとき、すでにスケジュールはギリギリ。
部品の到着を待ちながら、組立や検証を進め、並行して抽選ロジックを試作。
もちろん、サポート対応の通知音も容赦なく鳴り続ける。

結局、DiscordのGiveawaybotを使うことに決定。
見よう見まねで設定をいじりながら、テスト抽選を回す。
「当選おめでとう!」の通知を見たときのあの高揚感――
……が、すぐに冷静になって気づく。自分が当選していた。

その瞬間に悟りました。
「これは運営の操作を間違えたら地獄を見るやつだ」と。


当選者へのアナウンス方法

最初はDMを1件ずつ送りつけていました。
夜中のテンションでDMを送り続けます。
「手が震えてきた」→「コピペでBANされない?」→「Discord怖い」。

……このままだと確実に爆死する。

結果、以下の自動化フローを整備しました:

  • Dyno(bot)で抽選
  • 当選者に「当選者」ロールを付与
  • 専用チャンネルで同意事項を確認
  • 同意した人は「サポーター」ロールに昇格
  • 商品ページリンク(合言葉方式)を案内

もはや小規模通販ではなく、秘密結社の入団試験


当選者が音沙汰ない問題

抽選発表後、静まり返るサーバー。
メッセージ通知ゼロ。BOOTHの注文もゼロ。

「……もしかして誰も買わないのでは?」

そんな恐怖を味わいました。
結論として、「人類はみな忙しい」。
DMを見てない、通知が切れてる、ちょっと考え中。
全部わかる。でも進めない。

仕方なく購入期限を設け、期限後に繰り上げ抽選を導入することに。
「抽選って、抽選後も抽選なんですよ。」
今のところそんな心配をせずに済んでいますが、
次のフェーズではまた胃薬が必要になりそうです。


3. 合言葉システムの舞台裏

BOOTHの「シークレット公開」機能を使い、合言葉システムを構築。
当選者はDiscordの案内チャンネルから、指定URLと合言葉を入力して購入できます。

仕組み上は単純なのに、
「秘密の通行証を受け取って入る感じがしてテンション上がる」――と評判な気がします。

裏では、販売者側は冷や汗。
「リンク間違えて公開したら終わり」
「文字列をSNSで晒されたら地獄」

……スパイ映画でUSBを奪われる気分でした。

でも、この方式でようやく「抽選→案内→購入」が安定しました。
手動より100倍マシ。精神的な健康を取り戻しました(たぶん)。


4. 発送と物流の罠

「在庫数個なら、発送も余裕でしょ?」
――いやいや、梱包地獄ですよ。

箱詰め・緩衝材・同梱物のチェック。
それを深夜1時に繰り返す。
途中で「これ夢の中では?」と思い始める。

キーキャップの袋詰めで悟りが開けます。
10袋目で数を見失い、20袋目で記憶が飛び、30袋目で悟りました。
段ボールとテープの山を前に「私はエンジニアだったはずでは?」と遠い目に。
悟りの次は虚無。

発送通知ボタンを押した瞬間、ようやく現実に帰還します。
そして次のキッティングへ。


5. 在庫管理の闇

さて、キットができたので発送します。キットを作ります。……あれだけあった在庫はどこに?
膨大な数の部品はあっという間になくなります。

「これ、発送と発注スケジュールちゃんと考えないと詰むのでは?」
そんな事が頭によぎる頃には、すでに在庫はショートしていました。

Excelで持っている在庫を一覧にして、残りの数を見えるようにしましたが、
パーツ点数が多いキットを作りながら在庫をカウントするのは至難の業。
即刻、在庫数は現実から乖離していきました。

また一から全パーツの在庫を数え直すか、諦めて全て潤沢に在庫するか……。
そのとき、思い出したのが「Zaikan!」の存在でした。
👉 https://zaikanri.com/

パーツとレシピを登録し、在庫数を入力してスタート。
あとは「この日にこの商品を何個製造したか」を登録すれば、
各パーツの在庫を自動計算してくれる神ツール。

このおかげで、全手動Excel BOTになる未来を回避できました。
早く投げ銭機能を実装してほしい。


6. 増える付属品

これであらゆる問題は解決しました。
あとはただ印刷を回してキッティングして発送して、サポートサーバを運営するだけ。
……そう、簡単なお仕事のはずでした。

最近のキットはどれも洒落てますよね。
箱が凝っていたり、ステッカーが入っていたり。――真似したくなる。

チーム内でも意見は割れました。

「梱包は箱にこだわりたい」
「秘密研究所風の説明書を入れたい」
「なんでもいい」
「ステッカーは必須」

……いろんな声が飛び交う中、私は静かに思いました。
「梱包するのは私なんだけどなぁ」。

最終的に:

  • 箱をステッカーで封印
  • 内容物一覧にちょっと遊びを入れ
  • MakerChipにシリアルナンバーを貼付

結果、「おしゃれでカルトな雰囲気」が出た気がします。
(出てなくても、そう信じたい。)

今後さらに付属品が増えるかもしれません。
私の睡眠時間と引き換えに。


7. まとめ

MeKaBuの販売は、技術でもデザインでもなく、
「人間社会と戦うフェーズ」だった。

在庫管理、抽選、DM、発送、合言葉。
全部コードじゃなくて人間で回してる。
それが逆に、妙に温かくて面白かった。

結局、販売とは“社会実験”なんだと思う。
公平さ、効率、スピード、熱意。どれを取ってもバランスが難しい。
でもこの泥臭さこそがリアルで、コミュニティの文化を作るんだなと実感しました。

「またやりたいか?」
→正直ちょっと嫌。でもやる。多分。

なぜなら――誰かが「次」を待ってるから。
楽しいよ、販売。


This project exists in the liminal space between reality and digital dreams.
― 現実とデジタルの夢の間で。

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