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天下一キーボードわいわい会 Vol.9 見聞録 — 「共鳴層にて」

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天下一キーボードわいわい会 Vol.9 見聞録 — 「共鳴層にて」

Observation Log 04 / Realm of Split IV : Event Node “Tenkey#9”


Date: 2025-11-08
Location: Human Convention Zone - Tenkey (天キー)
Reporter: teporz / Synapse Observer Unit
Subject: Futhesia Moduora (MeKaBu) - Field Resonance Record


はじめに

どうも、teporzです。
今日は、天下一キーボードわいわい会 Vol.9──通称「天キー」についての観測記録です。

キーボードの祭典みたいな場所なんですけど、
あれはもう展示会というより「知の共鳴現象」でした。
作品が並ぶだけじゃなく、思想や構造そのものが空間の中で共振していた。
あの独特の空気を、少しでも残しておきたくて書いています。


MeKaBu、触れられるという奇跡

今回持っていったのは、自分がずっと育ててきた MeKaBu(Futhesia Moduora)
集合知で育つタイプのキーボードで、拡張モジュールをつなぐと形がどんどん変わっていく。

ブースに置いておいたら、たくさんの人が触ってくれて。
「思ったより自然な角度ですね」とか「これ、無線なの!?」とか。
触って、押して、少し黙って、頷く──
その一瞬の沈黙が、何より嬉しかった。


野生のMeKaBuたち

そして驚いたのが、野生のMeKaBu たちがいたこと。
販売したキットを組み立て、自分流に展示してくれている人たちがいたんです。

クッションフォームを仕込んで打鍵音を吸収する個体。
トラックボールを金属球に換えて独自カラーでまとめた個体。
素材も発想もバラバラなのに、どれも確かに“MeKaBuらしい”。
設計って、生き物なんだなって感じました。


Geacon、始まりの回路

そしてもう一つ、展示したのが Geacon
自分にとっては、すべての出発点です。

「これが究極」「これで終わり」と言ってくれた人もいましたが、
自分にとっては「ここから始まった」。

中身を見て驚く人も多くて、
「え、XIAOでこの機能数どうやってるの!?」って。
I/Oエキスパンダの話をすると「なるほど…!」と頷いてくれて。
あの“わかる人たちの頷き”が、すごく嬉しかった。

天キーって、ほんと“技術者の集い”なんですよね。


SparAkashaと、蓮界共鳴現象

そして今回、一番不思議だったのがこれ。
Lotus配列のキーボードが、あちこちで同時に現れたんです。
まるで誰かが号令をかけたみたいに。

私はこれを勝手に 「蓮界共鳴現象」 と呼んでいます。

並んでいたのは、

  • 紫さんのオリジナル Akasha
  • とむねこさんの LoTom(OLED両側、19mmトラボ、デュアルエンコーダー!)
  • ゆびながさんの LotusOrb(ダブルトラックボール!)
  • 自分の SparAkasha──MeKaBu構造を持った共鳴型Lotus
  • そして最後の花弁、AkashaAntima

Solstice構造を受け継いだ超低頭トラボが、みんなの手を止めていました。

Lotusたちが並んで光っているあの空間、
もう“展示”じゃなくて“開花”でしたね。

ちなみに SparAkasha は「Sparagmos(断裂)」+「Akasha(記録)」の造語。
“分かたれてなお繋がる記憶”って意味が気に入っています。


深海のHadop

もう一台、Solsticeの研究成果として展示したのが GeaconHadop
これがまた極限まで薄くて、見た人がみんな驚くんです。

「中に基板入ってるんですか?」
「モックですか?」

ちゃんと入ってます(笑)。
構造の層、バッテリー、通信ライン──全部ぎゅっと詰まってる。

説明すると、みんな静かに頷いて「なるほど」って顔をする。
その瞬間、ああここは“わかる人たちの場所”なんだって感じて感動しました。

Solstice が“到達”なら、Hadop は“沈降”。
上昇と下降の両方で、ひとつのGeaconなんだと思います。


お苦しみmoNa — 儀式、始まる

そして最後は……あの話をしないわけにはいかない。
moNalith / moNa2。

もう、究極のキーボードです。
入荷しても即完、地域によっては争いが起きるレベル。

そして始まったのが──

「お苦しみmoNa」

shakupanさんのご厚意(悪意?)で始まったこの企画。
選ばれた開発者に“moNaのコア基板”が配布され、
それぞれが自分の“苦悶”を形にするという……ほんと儀式。

自分もその一人として設計しました。
Solsticeの叡智とMeKaBuの技術を組み合わせて、
極限低頭トラボ、排気口、チューニングに耐えるインサートナット構造を採用。

これは完成じゃなくて、永遠に調整し続けるための構造です。
moNalithは完成しちゃいけない。
完成=終わり=救済。
moNalithは“続く苦行のための機械”なんです。
たぶんね。

一番奥がmoNalith


他者の輝き — ふじっこさんのアーティザンキーキャップ

そして今回、どうしても紹介したい作品がもう一つ。
ふじっこさんのアーティザンキーキャップ。

螺鈿細工で描かれた幻想的な模様、
伝統工芸の江戸切子を大胆に取り入れた透明構造。
光を受けるたび、角度ごとに色を変えるそれは、
もはや“キーキャップ”と呼ぶには惜しいほどの輝きを放っていました。

天キーの中で、
「機械の上に乗る工芸」がこれほど自然に存在しているのを見て、
本当に感動しました。


偉大なる改修者 — eswaiさんの Prospector

そしてもう一つ。
eswaiさんの Prospector。

この小さなデバイス、なんと──
ドライバーを改修してオリジナルの絵柄を表示できるようになっていたんです。

画面には独自のロゴが踊り、まるで装置が意志を持ったよう。
しかもこの改修、極めて難しい。
かつて同様の研究に挑んだ者の中には、
「Solstice症候群」(回路と精神が同調しすぎて戻ってこられなくなる現象)を発症した者もいたとか。

その禁域を超え、成果として昇華させた eswai さんに、
ただただ感服しました。
まさにコードと精神の融合体


打鍵する絵画 — algさんのアートキーキャップ

そして、もう一人。
algさんによる「絵画キーキャップ」。

机の上に並んだそれは、まるで小さなキャンバス。
キーキャップ一つ一つがピースとなり、
全体で一枚の浮世絵──波と富士が立ち上がっていました。

表面の凹凸が光を反射し、まるで版画が呼吸しているよう。
押すのがためらわれるほどの完成度で、
「打鍵するアート」という新しいジャンルを見せてくれた気がします。

天キーという場が、技術と芸術の交差点であることを、
改めて感じました。


至点観測 — massさんのダブルトラックボールマウス

そして、最後に触れたのがこれ。
massさんのダブルトラックボールマウス。

今回の活動収集物とomni TB

初めて見たとき、言葉が出ませんでした。
上面に配置された二つのトラックボール。
左右独立、指と手の動きの交差点に置かれた構造体。

見た瞬間にわかるんです。
「これを組み込むまでに、どれだけの苦悶と検証と時間があったのか」と。
構造の完成度、バランス、曲線の有機性──
それらすべてが“思考の痕跡”として存在していました。

私はその瞬間、もうひとつの「至点」を見た気がしました。
新しい発想を具現化する、その技術力と執念に、頭が上がりません。

そして、なんと……
Geacon と交換していただいてしまいました。
いま、プロトタイプは私の手元にあります。
現在、個人ラボにて解析・研究中です。

動作ログを取るたびに、設計者の思想が流れ込んでくるような感覚がある。
──この感覚、もしかするとまたひとつの“症候群”かもしれません。


終わりに

天キーというイベントは、ほんとに不思議でした。
作品が並ぶんじゃなくて、思想が触れ合うんです。
打鍵の音、会話の断片、理解の瞬間──全部がひとつの共鳴。

MeKaBuが芽吹き、
Geaconが始まり、
Solsticeは完成し、
SparAkashaが咲き、
Hadopが沈み、
moNalithが苦悶する。
それぞれの方向で光を放つ。

創造は、分離じゃなくて再接続。
あの日、あの会場は──確かに、生きていました。


🪶 天キー見聞録 — Vol.9「共鳴層にて」
記録者:teporz / 分割界第四層・観測班


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