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【EIP-4337】UserOperationをBundlerに投げてからTransactionが発行されるまで

2023/01/20に公開1

EIP-4337: Account Abstraction Using Alt Mempool において、User が userOp (UserOperation) を Bundler に投げてから Tx (Transaction) が発行されるまでの間に各コンポーネント間でどのようなやりとりがあるのかをまとめる。

TL;DR

各コンポーネント間のやりとりをざっくりまとめると以下のようになる。

Bundler は JSON-RPC Server, Mempool, Worker の3つのコンポーネントから成る。
(EIP や参考実装には Worker は出てこないが、このように分けると理解しやすい。)

ここからは上記の図をそれぞれ分割しながら紹介していく。

User から見た userOp と Tx

User は Bundler に対して Tx を発行するための userOp を投げる。

Bundler は JSON-RPC Server として API を公開しているため、eth_sendUserOperation RPC がこの操作に該当する。
userOp は Bundler 内部で非同期に処理され、User は userOp のハッシュ値を受け取るだけになる。
User は userOp の処理結果を知るために eth_getUserOperationReceipt RPC を Call する必要があり、このリクエスト時に userOpHash を利用する。

Bundler が userOp から Tx を発行するまで

userOp を Bundle して EntryPoint へ

eth_sendUserOperation で受けとった userOp は Mempool へ保存される。
Worker が Mempool から userOp を取り出し、まとめて EntryPoint の handleOps へ投げて Tx を発行する。

IEntryPoint.sol
function handleOps(UserOperation[] calldata ops, address payable beneficiary) external;

EntryPoint から先はコントラクトであるから、handleOps を呼び出すタイミングで Tx が開始される。そのため Bundler は EOA を持っており、内部の秘密鍵で署名を行っている。

EntryPoint は渡された userOp をそれぞれ検証・実行する2つのループを順番に実行する。

その後 beneficiary が示すアドレスに fee を送金する。Tx 発行のガス代を肩代わりしている Bundler の EOA に向けられるのが一般的であろうが、他のアドレスも指定可能。
fee は userOp の maxFeePerGasmaxPriorityFeePerGas を用いて EIP-1559 と同様に計算される。もし Bundler が userOp よりも低い設定値で Tx を通すことができれば、その差額が Bundler 側の利益となる。
そのため Bundler 側はこの fee による利益が高くなるように userOp を選択して Bundle する可能性があるだろう。

Verification loop

それぞれの userOp を検証するループ。

EntryPoint は Wallet Contract の validateUserOp を呼び出し、userOp の検証をする。

IAccount.sol
function validateUserOp(UserOperation calldata userOp, bytes32 userOpHash, address aggregator, uint256 missingAccountFunds) external returns (uint256 sigTimeRange);

この時 Wallet Contract はガス代を EntryPoint に対して支払う。

EntryPoint は内部で Wallet Contract 毎にいくら Deposit されているかを把握しており、それに応じて足りないガス代を missingAccountFunds に指定する。
Contract Wallet はこの金額を EntryPoint に Deposit する。

返り値の sigTimeRange には検証結果が入っている。

sigTimeRange の中身

uint256 型で先頭からそれぞれ以下のように割り振られている。

IAccount.sol
/*
* ...
* @return sigTimeRange signature and time-range of this operation
*      <byte> sigFailure - (1) to mark signature failure, 0 for valid signature.
*      <8-byte> validUntil - last timestamp this operation is valid. 0 for "indefinite"
*      <8-byte> validAfter - first timestamp this operation is valid
*      The an account doesn't use time-range, it is enough to return SIG_VALIDATION_FAILED value (1) for signature failure.
*      Note that the validation code cannot use block.timestamp (or block.number) directly.
*/

https://github.com/eth-infinitism/account-abstraction/blob/8f5d060a8ef9c649df3dcf8a84cc47c8964279ab/contracts/interfaces/IAccount.sol#L25-L30

Paymaster

ガス代は Contract Wallet ではなく、Paymaster というコントラクトに支払わせることもできる。

EntryPoint は Contract Wallet の validateUserOp (missingAccountFunds=0) 後に Paymaster がガス代を支払える額を Deposit していることを確認してから validatePaymasterUserOp を呼び出す。

IPaymaster.sol
function validatePaymasterUserOp(UserOperation calldata userOp, bytes32 userOpHash, uint256 maxCost) external returns (bytes memory context, uint256 sigTimeRange);

Paymaster はその userOp のガス代を支払っても良いかの判断を行う。
Contract Wallet がガス代を支払う場合とは違い、Paymaster は validatePaymasterUserOp 実行中に EntryPoint へガス代を Deposit しない。そのため事前に十分な金額を Deposit しておく必要がある。

返り値の context は後述する Execution loop で利用される。

Execution loop

実際に Wallet Contract を操作していくループ。

userOp の callData を Wallet Contract に投げ、実際に操作を実行する。

EntryPoint.sol
(bool success,bytes memory result) = address(mUserOp.sender).call{gas : callGasLimit}(callData);

https://github.com/eth-infinitism/account-abstraction/blob/8f5d060a8ef9c649df3dcf8a84cc47c8964279ab/contracts/core/EntryPoint.sol#L223

Paymaster を使っており Verification loop 時の validatePaymasterUserOpcontext が返ってきている場合は、Contract Wallet 操作後に Paymaster の postOp というメソッドが呼ばれる。

IPaymaster.sol
function postOp(PostOpMode mode, bytes calldata context, uint256 actualGasCost) external;

便利 Callback のような役割をしているので、例えば EntryPoint の Deposit 額が少なくなってきたときに、ここで資金を追加するなどができそう。

余ったガス代は EntryPoint 内で Deposit され次回に活用される。

最後に fee を handleOps で指定されている beneficiary が示すアドレスに送金して Tx は完了する。

終わりに

EIP-4337 にて userOp から Tx を発行するときに各コンポーネント間でどのようなやりとりがあるのかを紹介した。

これは Tx を発行するための大枠の流れであり、図に示した処理の合間にまだいくつも重要な処理が存在している。
(userOpHash の組み立て、Mempool 内の userOp スロットリング、Account Factory など...)

また、EntryPoint は handleOps とは別に handleAggregatedOps というメソッドでも userOps を処理することができる。
ここでは Aggregator という Contract Wallet の代わりに署名の検証を行ってくれるコントラクトが登場し、さらに認可処理が抽象化されている面白い概念である。
また別の記事で紹介したい。

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