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ふるさと納税の控除上限金額を計算する

2022/07/04に公開

この記事について

この記事では世帯年収600万円くらいのご家庭を対象にふるさと納税の控除上限金額を計算する方法について紹介します。想定するご家庭ではふるさと納税の控除上限金額は61,380円、ブツに換算すると北海道古平町の業務用辛子明太子6kg+αになりました。

想定するご家庭

説明のため下記のようなご家庭を想定します。

  • 家族構成は本人、配偶者、子供2人
  • 本人は月収50万円(ボーナスなし)
  • 配偶者は専業主婦または専業主夫
  • 子供は2人とも16歳未満
  • 収入は給与収入のみ
  • iDeCoに加入、掛金は月額23,000円
  • 生命保険、介護医療保険、個人年金保険に加入
  • 保険の掛け金はいずれも年額56,000円
  • 地震保険に加入、掛け金は年額50,000円
  • 所在地は新潟県

総所得金額等

月収に12(1年の月数)を乗じて年収を計算します。年収を計算したら所得税法別表第五|年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表から給与所得控除後の給与等の金額を探します。

const 月給 = 500_000
const 年収 = 月給 * 12
const 給与所得控除後の給与等の金額 = 4_360_000
const 総所得金額等 = 給与所得控除後の給与等の金額

想定しているご家庭(令和3年分の給与等の金額が600万円)の場合、給与所得控除後の給与等の金額は4,360,000円です。

社会保険料控除

令和4年度保険料額表|全国健康保険協会のWebサイトからお住まいの都道府県の健康保険・厚生年金保険の保険料額表のPDFを入手します。健康保険・厚生年金保険の保険料額表から健康保険料と厚生年金保険料の折半額を探します。両方の折半額の和に12(1年の月数)を乗じて社会保険料控除を計算します。

const 健康保険料折半額 = 23_775
const 厚生年金保険料折半額 = 45_750
const 社会保険料控除 = (健康保険料折半額 + 厚生年金保険料折半額) * 12

想定しているご家庭(令和4年3月以降/新潟県/月収50万円)の場合、健康保険料折半額は23,775円、厚生年金保険料折半額は45,750円、社会保険料控除は834,300円です。

小規模企業共済等掛金控除

iDeCoや小規模企業共済の毎月の掛金に12(1年の月数)を乗じて小規模企業共済等掛金控除を計算します。

const iDeCoの掛金 = 23_000
const 小規模企業共済等掛金控除 = iDeCoの掛金 * 12

想定しているご家庭(iDeCoの毎月の掛金が23,000円)の場合、小規模企業共済等掛金控除は276,000円です。

生命保険料控除

一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の3つの保険料についてそれぞれ下表から控除額を計算します。

以上 以下 控除額
1円 12,000円 全額
12,001円 32,000円 保険料 / 2 + 6,000円
32,001円 56,000円 保険料 / 4 + 14,000円
56,001円 - 一律28,000円

3つの控除額の合計して生命保険料控除を計算します。ただし、70,000円を超える場合は生命保険料控除は70,000円となります。

const 一般生命保険料控除 = 28_000
const 介護医療保険料控除 = 28_000
const 個人年金保険料控除 = 28_000
const 生命保険料控除 = Math.min(70_000, 一般生命保険料控除 + 介護医療保険料控除 + 個人年金保険料控除)

生命保険、介護医療保険、個人年金保険の3つに加入しており、保険料がいずれも年間56,000円の場合、生命保険料控除は70,000円です。

地震保険料控除

地震保険料を2で除して地震保険料控除を計算します。

const 地震保険料 = 50_000
const 地震保険料控除 = Math.min(25_000, Math.floor(地震保険料 / 2))

想定しているご家庭(地震保険料が年額50,000円)の場合、地震保険料控除は25,000円です。

所得控除合計

下記6点の控除を合計して所得控除合計を計算します。

  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 配偶者控除(330,000円)
  • 基礎控除 (430,000円)
const 配偶者控除 = 330_000
const 基礎控除 = 430_000
const 所得控除合計 = 社会保険料控除
  + 小規模企業共済等掛金控除
  + 生命保険料控除
  + 地震保険料控除
  + 配偶者控除
  + 基礎控除

想定しているご家庭の場合、所得控除合計は1,965,300円です。

課税所得金額

総所得金額等から所得控除合計を減じて課税所得金額を計算します。1,000円未満の金額は切り捨てます。

const 課税所得金額 = Math.floor((総所得金額等 - 所得控除合計) / 1000) * 1000

想定しているご家庭の場合、課税所得金額は2,394,000円です。

人的調整控除

人的調整控除の計算はやや複雑です。まず、人的控除(基礎控除、配偶者控除など)の所得税と住民税の差額を計算します。例えば所得税の基礎控除が48万円で住民税の基礎控除が43万円なので、差額は5万円です。これらの差額の合計をAとします。次に、課税所得金額から200万円を減じます。この減算値をBとします。A - Bに5%を乗じて人的調整控除を計算します。ただし、A - Bが5万円を下回る場合は人的調整控除は一律2,500円となります。

const 配偶者控除の差額 = 380_000 - 330_000
const 基礎控除の差額 = 480_000 - 430_000
const 差額の合計 = 配偶者控除の差額 + 基礎控除の差額
const 人的調整控除 = Math.max(50_000, 差額の合計 - (課税所得金額 - 2_000_000)) * 0.05

想定しているご家庭の場合、人的調整控除は2,500円です。ちなみに課税所得金額が200万円以下の場合は計算方法が変わりますが複雑すぎるので割愛しています笑

住民税の所得割額

課税所得金額に10%(住民税の税率)を乗じた金額から人的調整控除を減じて住民税の所得割額を計算します。

const 住民税の税率 = 0.1
const 住民税の所得割額 = 課税所得金額 * 住民税の税率 - 人的調整控除

想定しているご家庭の場合、住民税の所得割額は236,900円です。

ふるさと納税の控除上限金額

ふるさと納税の控除上限金額の計算はやや複雑です。まず、住民税の所得割額に20%を乗じます。この乗算値をAとします。次に、100%から10%(住民税率)と所得税率(復興特別所得税分を含む)を減じます。この減算値をBとします。所得税率は課税所得金額によって決まりますが、課税所得金額は所得税と住民税では基礎控除などが異なるので注意が必要です。A / Bに2,000円(ふるさと納税の自己負担額)を加え、小数点以下を切り捨ててふるさと納税の控除上限金額を計算します。

const 所得税率 = 0.1
const 復興特別所得税分 = 1.021
const 自己負担 = 2_000
const 控除上限金額 = Math.floor(住民税の所得割額 * 0.2 / (1 - 住民税の税率 - 所得税率 * 復興特別所得税分) + 自己負担)

想定しているご家庭の場合、所得税率は10%、ふるさと納税の控除上限金額は61,380円です。

最終的なソースコード

最終的なソースコードを下記に示します。

const 月給 = 500_000
const 年収 = 月給 * 12
const 給与所得控除後の給与等の金額 = 4_360_000
const 総所得金額等 = 給与所得控除後の給与等の金額
console.info({年収})

const 健康保険料折半額 = 23_775
const 厚生年金保険料折半額 = 45_750
const 社会保険料控除 = (健康保険料折半額 + 厚生年金保険料折半額) * 12
console.info({社会保険料控除})

const iDeCoの掛金 = 23_000
const 小規模企業共済等掛金控除 = iDeCoの掛金 * 12
console.info({小規模企業共済等掛金控除})

const 一般生命保険料控除 = 28_000
const 介護医療保険料控除 = 28_000
const 個人年金保険料控除 = 28_000
const 生命保険料控除 = Math.min(70_000, 一般生命保険料控除 + 介護医療保険料控除 + 個人年金保険料控除)
console.info({生命保険料控除})

const 地震保険料 = 50_000
const 地震保険料控除 = Math.min(25_000, Math.floor(地震保険料 / 2))
console.info({地震保険料控除})

const 配偶者控除 = 330_000
const 基礎控除 = 430_000
const 所得控除合計 = 社会保険料控除
  + 小規模企業共済等掛金控除
  + 生命保険料控除
  + 地震保険料控除
  + 配偶者控除
  + 基礎控除
console.info({所得控除合計})

const 課税所得金額 = Math.floor((総所得金額等 - 所得控除合計) / 1000) * 1000
console.info({課税所得金額})

const 配偶者控除の差額 = 380_000 - 330_000
const 基礎控除の差額 = 480_000 - 430_000
const 差額の合計 = 配偶者控除の差額 + 基礎控除の差額
const 人的調整控除 = Math.max(50_000, 差額の合計 - (課税所得金額 - 2_000_000)) * 0.05
console.info({人的調整控除})

const 住民税の税率 = 0.1
const 住民税の所得割額 = 課税所得金額 * 住民税の税率 - 人的調整控除
console.info({住民税の所得割額})

const 所得税率 = 0.1
const 復興特別所得税分 = 1.021
const 自己負担 = 2_000
const ふるさと納税の控除上限金額 = Math.floor(住民税の所得割額 * 0.2 / (1 - 住民税の税率 - 所得税率 * 復興特別所得税分) + 自己負担)
console.info({ふるさと納税の控除上限金額})

計算結果の確認

計算結果を確認するにはふるさとチョイスの控除上限額シミュレーションのページを使うのが便利です。

参考にしたWebページ

記事を書くために参考にしたWebページを下記に示します。

おわりに

去年からふるさと納税を始めました。去年も今年も住民税の納税通知書が届く6月ごろにふるさと納税の控除上限金額を計算しましたが、1年に1回しか行わない計算なので忘れてしまわないように記事にまとめました。

去年のふるさと納税では北海道古平町の業務用辛子明太子1.5kgが個人的にはベストでした。去年の寄付金額は10,000円でしたが今年は13,000円に値上がりしたんですね... 今年は何を選べば良いか悩みますが楽しみです。

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